【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】月経不順と鍼灸
千葉市内、千葉駅すぐ、女性と子ども専門鍼灸院『鍼灸 あやかざり』です。いつも【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】の記事をお読みいただき、ありがとうございます。
以前の記事、『【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】月経時の気分障害と鍼灸について(https://note.com/ayajazari/n/nfa27e849e12b) 』の中では、
1.月経に伴う不調
2.月経のメカニズム
3.東洋医学における月経
という月経に関しての基礎知識とあわせて、月経時の気分障害に対する鍼灸によるアプローチを取り上げました。
まだ、読んでいないという方は、ぜひ一度お読みください!
今回は、月経に伴う不調の中から『月経不順』をとりあげます。
月経不順、つまり月経周期の早まりや遅れはどうしておこるのか、原因とそれを改善させるための方法について、鍼灸治療でのアプローチを含め、東洋医学的な観点からみていくことにしましょう。
1.東洋医学的における「月経不順」とは
月経不順は、月経の早まり、月経の遅れ、月経不定期の3つに大別できます。
西洋医学的には、ホルモンバランスが崩れることにより月経周期は乱れると考えられていますが、東洋医学上にはホルモンというものは存在していません。
では、東洋医学では月経不順をどう考えるのでしょうか??
東洋医学の場合には、過度な精神的ストレス、外気(風暑湿燥寒)の影響のほか、腎・肝・脾をはじめとする臓腑(東洋医学的な内臓)の働きが失調して、衝脈・任脈(経脈、気血の流れる通り道のことで、子宮、妊娠、出産、月経と深く関与する)の通りが悪くなったり、月経のもととなる血が異常をきたして、月経不順がおこると考えられています。
東洋医学では、月経の早まりのことを『月経先期』、月経の遅れのことを『月経後期』、月経不定期のことを『月経先後不定期』と呼びます。
2.月経の早まり(月経先期)
月経先期は、『経期超前』・『経早』・『経行先期』ともいいます。
月経が7日以上早く、ひどい場合には半月に1回の周期でくるものであり、その状態が2周期異常つづいている状態をいいます。
月経先期は、月経過多と同時に現れることが多く、場合によっては不正出血を伴うことがあります。
月経先期の東洋医学的な主な原因は気虚と血熱である、とされています。
2-1.身体のエネルギー不足を原因とするもの(気虚型)
食生活の乱れ・虚弱体質・大病や慢性病の後・過労の後など、体力が低下した状態が続くと、脾・腎の働きが弱り身体のエネルギーが不足した状態=気虚を引き起こしやすくなります。
身体のエネルギー不足は、血を溜めておく力の低下につながることから、普段よりも月経が早く来るようになります。
2-2.体内の過剰な熱を原因とするもの(血熱型)
陰虚体質(体内の正常な水分が不足した状態)、あるいは節度のない性生活・多産・慢性病などにより体内の陰血(水分や血)が不足した状態となると、身体の熱を冷ます力が弱まり、熱傾向(=虚熱)となります。
また、もともと身体に熱をためやすい体質、あるいは食生活の乱れにより身体に余分な熱が溜まりやすい場合、あるいは精神的なストレスにより心身の過緊張により身体に熱をこもらせやすい場合にも、身体は熱傾向(=実熱)となります。
こうした身体の熱は、血の流れを乱れさせ、血が身体の外に押し出されることから、普段よりも月経が早く来るようになります。
3.月経の遅れ(月経後期)
月経後期は、『月経延後』・『月経落後』・『経行後期』・『経遅』ともいいます。
月経が7日以上遅れ、ひどい場合には3~5カ月に1回の周期でくるものであり、その状態が2周期以上つづいている状態をいいます。
月経先期の東洋医学的な主な原因は腎虚、血虚、血寒、気滞である、とされています。
3-1.身体の弱りを原因とするもの(腎虚型)
虚弱体質、節度のない性生活・多産により身体が弱った場合などは、腎の働きの弱りをひきおこします。
腎は、人体の成長・発育・生殖と関連する臓腑であり、身体エネルギー=『腎精・腎気』に深く関与します。
その腎の働きが低下することで、身体エネルギーが不足した状態となり、身体に栄養を与えるための血の不足をまねくことから、月経に向けてより良い子宮環境が整わなくなり、普段よりも月経が遅れるようになります。
3-2.血の不足を原因とするもの(血虚型)
虚弱体質、貧血傾向、慢性病や出血過多、出産過多などにより血が消耗した状態、あるいは胃腸が弱いために血のもととなる栄養を作り出すことが上手くいかない場合、これらの場合には血が不足した状態=血虚となることから、月経に向けてより良い子宮環境が整わなくなり、普段よりも月経が遅れるようになります。
3-3.血の冷えを原因とするもの(血寒型)
身体を温める作用の低下による冷え性、外気の寒さの影響による身体の冷え、冷たいものの過食による身体の冷え、これらはすべて血の冷えにつながります。
血の冷えは、血の滞りを生み出すだけでなく、臓腑を温める作用の低下につながることから気血が不足した状態をもひきおこし、月経に向けてより良い子宮環境が整わなくなり、普段よりも月経が遅れるようになります。
3-4.体内循環の停滞を原因とするもの(気滞型)
精神的なストレスにより心身が過度に緊張した状態がつづくと、体内循環が停滞しがちになります。
体内循環の停滞は、血のめぐりの悪さ、血の滞りにつながることから、月経に向けてより良い子宮環境が整わなくなり、普段よりも月経が遅れるようになります。
4.月経不定期(月経先後不定期)
月経不定期は、『経行前後無定期』・『経行或前或後』・『経乱』・『乱経路』・『月経不順』ともいいます。
月経周期が非常に乱れる状態で、予定日どおりにあったかと思うと突然早まり、連続して2回遅れたかと思うととつぜん予定日通りに月経が起こったりするため、非常に複雑で不安定な月経周期を示します。
月経先後不定期の東洋医学的な主な原因は肝鬱、腎虚である、とされています。
4-1.体内循環の悪さを原因とするもの(肝鬱型)
精神的なストレスにより心身が過度に緊張した状態がつづくと、肝の働きがが上手く作用せず、体内循環が時に暴走、時に低下をするようになります。
体内循環のこうした乱れにより、血の巡りの悪さにつながり、月経に必要な血が満たされるまでの時期が一定にならないことから、月経が不定期になります。
4-1.身体の弱りを原因とするもの(腎虚型)
先にご説明をした、気虚型の月経先期と腎虚型の月経後期の混合タイプです。
腎の機能が上手く働かなくなると、身体のエネルギーが不足しがちになりますが、血を溜めておく力が低下し普段よりも月経が早く来るようになる場合と、月経に必要な血が不足しがちになり満たされるまでの時期が一定にならないために月経が送れる場合、の両者がおこりやすくなり、月経が不定期になります。
5.鍼灸によるアプローチ
「月経不順は婦人科への通院だけでなく、鍼灸による治療も可能なのか?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、月経不順も鍼灸によるアプローチが対応可能な症状の一つです。
その効果は、世界保健機関(WHO)も認めています。
参考リンク:公益社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会
西洋医学では、月経不順に関して、ホルモン剤、低用量ピルなどの投薬で治療をすることが多いようです。
鍼灸では、西洋医学のように検査値に基づいてホルモン値をコントロールすることを目的に治療は行いません。
鍼灸では、先にご紹介したような「月経不順をおこす根本となる原因」を見つけ出し、それを正すことによって、月経の周期を整えてより良い身体づくりをします。
つまり、月経不順も、鍼灸により治療することが可能なのです!
一度の施術で使うツボは1~2つです。施術時間は休憩含めておおよそ1時間程度です。
なお、鍼をする前には、あらかじめ詳しく問診をする必要があり、月経不順の症状だけでなく、他にもある様々な身体の症状(随伴症状といいます)、その人の体質、その時の体調、施術をする時の季節、天気なども考慮する必要があります。
その上で、その人の身体全体の状態(脈、舌、顔色、身体の熱冷のかたより、身体の緊張、手足ツボの反応など)から、トータル的にみて、最も原因にふさわしいツボを選び鍼をします。そのため、月経不順という症状、その原因が同じでも、その時々で使用するツボも変えることが必要となります。
6.まとめ
今回は月経に伴う不調の中から月経不順についてとりあげ、東洋医学的な原因別の分類、治療方法をご紹介してきました。
東洋医学においても、月経不順に対して鍼灸でのアプローチが可能なことはご理解いただけたでしょうか。今回はここまでとなります。
それでは、鍼灸でからだも心も元気になりましょう!
鍼灸 あやかざり
千葉駅5分 完全予約制 女性と子ども専門の鍼灸治療院
千葉県 千葉市中央区新町1−6 ラポール千葉新町202
TEL:070-8525-6132
画像の出典:
参考図書:中医婦人科学(源草社)、全訳中医婦人科学: 中医薬大学全国共通教材(たにぐち書店)
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