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人間がしたことは、人間が解決する。海の環境保全に全身全霊で取り組む木村美希

こんにちは! コーポレートシチズンシップ部門の日野紀子です。IoTバス点字変換ツールなど、コーポレートシチズンシップ活動に盛んに取り組まれている関西オフィスにもちょくちょくお邪魔して、皆さんをサポートしています。今回は、私がぜひとも紹介したい、海の環境活動に自主的に取り組んでいるとても素敵なアバナード社員・木村美希さんのお話をお届けします。

湘南生まれ、湘南育ち。原風景は、祖母の家の近くの真鶴の海。神奈川で海とともに育った木村美希さんは、金や青、ピンクなど、いつも派手な髪色をしていることでアバナード社内でも有名です。普段はエンジニアの業務を担当し、週末になると砂浜での清掃活動、ビーチクリーン活動に熱心に取り組んでいます。ダイビングのさまざまな資格を取得し、社内でも積極的に発信をしている木村さんは、今年のアバナード社内の「Corporate Citizenship賞」も受賞しました。
木村さんが海の環境保全活動に取り組むきっかけをくれたのは、フィリピンの海だったのだとか。どこの砂浜でも一番目立つ奇抜な髪色をしているのにも、彼女の切実な思いがあるのです。

天国のような海の世界に魅了されて

幼い頃から海のそばで過ごしながらも、海に潜るという経験はしたことがなかった木村さん。語学留学で訪れたフィリピンのセブ島でダイビングのライセンスを取得したことが、海の中の世界を知るきっかけになりました。
 
「セブ島の海の中は、どこまでも続くような透明度の高さで、美しい魚たちがいて、まるで天国のような景色が広がっていました。タンクを背負って潜るのはその時が初めてでしたが、いまこの瞬間にしか見られない目の前の景色だけに集中する時間というのがとても新鮮で、頭がクリアになるような不思議な感覚を味わいました」
 
初めて体験した海の中の世界に、一気に惹き込まれた木村さん。留学から帰った後もフィリピンの海に足を運び、いまでも半年に1回のペースでフィリピンの海に潜っています。何度か潜っているうちに、海の環境の変化にも気付くようになりました。

慶良間諸島で撮影した美しい景色

この海、この地球を守るという使命感

「台風の被害を受けやすい土地柄もあり、前に潜ったときにはいきいきとしていたサンゴがひっくり返ってしまっていたり、生き物の棲み家がなくなっていたり……。水温の上昇など温暖化による影響も、海の中で初めて実感しましたね。
あと、人間の手が生態系に及ぼす影響の大きさもわかってきました。ウミガメやジンベエザメの例が有名ですが、漁で使う釣り具や網に引っかかってしまったり」
 
さらにもう一つ、衝撃的な事実に直面します。違法漁業の一つとして禁止されているはずのダイナマイト漁が、いまだに公然と行われていたのです。
 
「ある時潜っていたら、自分の背中のタンクが爆発したのではないかと錯覚するくらい、大きな音がしたんです。その音の正体が、フィリピンでも禁止されているはずのダイナマイト漁だと後から知り、衝撃を受けました。サンゴ礁はもちろん、生き物たちの棲み家を壊し、命を脅かす違法漁業が実際に行われていて、生態系にも悪影響を及ぼしていたんです」
 
人間がもたらしている海の被害に戸惑い、衝撃を受ける一方で、「この現状を多くの人に伝えなければいけない」という思いが芽生えます。
 
「最初は海の生き物たちの被害を前に、ショックで大好きな水中写真を撮ることもできなくなったのですが、海の中という限られた人しか見られない世界だからこそ、写真や映像を撮ることで、多くの人に届けなければいけないという思いが強くなりました」

釣具に引っかかっていたウミガメ

海に起こっている変化や人間による被害を知り、何かできないかと思い勉強を始め、資格も次々に身に付けていきました。
 
「海に潜る人間として、まずは元の正常な状態を知らなければいけないなと思ったんです。例えば、友達の家にお邪魔するときって、入ったときの状態を壊してはいけないですよね。じゃあ海の場合の元の状態とはどういうものだっけ、ということから学び始めました。ダイビングのライセンスにもいろいろな種類があって、このライセンスがあればもっと深く潜れるとか、細い穴に中にも入れるとか、身に付けておけばもっと海の状態を詳しく知ることができるので、いまでは10個以上のライセンスを持っています」

アバナードのメンバーだからできること

とはいえ、地球の面積の約7割を占めると言われる海。一人の人間に見えるのはそのほんの一部でしかない。だからこそ、多くの人に現状を知ってもらうために、情報発信をする大切さにも気付きます。

「手前味噌ですが、アバナードだからこそ発信ができるようになったというのは、個人的に大きいですね。こんな派手な髪色をしながらも、実は人見知りで(笑)、コーポレートシチズンシップ担当の日野さんに勇気を出して、『こういう活動をしていて、発信をしたいんですけど……』と相談したら、『いいですね、やってみましょう!』と背中を押してくださったんです。有休を使って海に行くなんて、遊びに行っていると思われていそうだなと勝手に感じていたのですが(苦笑)、日野さんのおかげもあり、海から持って帰ってきた情報を社内で共有してもいいんだ、と思えるようになりました」
 
恥ずかしがり屋の木村さんの背中を押してくれた存在はもう一人。アバナードの前社長の安間裕さんでした。
 
「安間さんが退任される際に残してくれた言葉の 1 つとして『みなさん、地球を守ってください』というメッセージがありました。変化する日本の風景や、世界中で起こっている地球温暖化による問題に対して、アクションをしたり、エンジニアとしての技術を生かしたりしてほしいとおっしゃっていて、すごく素敵な言葉だなと感銘を受けました。

もう一つ、私が大事にしている言葉があります。それは、ネイティブアメリカンのナバホ族の人たちの、『この星、この地球、この大地、この自然というものは、先祖から譲り受けたものではなく、我々がほんのしばらくの間、子孫から借りているものなのだ』という言葉です。 私自身、この言葉が大好きなのですが、実は、この言葉を安間さんがご退任前のメッセージの中でお話しされていたんです。 この言葉を大事にして『地球を守ってほしい』というメッセージを伝えてくれた安間さん、そして日野さんには、私自身すごく支えてもらっていますね」

アバナードの技術力で、画期的な解決策を打ち出せたら

社内での発信を始めてから1年3ヶ月ほど経ち、うれしい変化がありました。ビーチクリーン活動への参加を呼びかけたところ、一人二人と参加者が増え、最初は6人だった参加者が、最近では3倍ほどに。
 
「砂浜で拾うゴミと聞くと、ペットボトルのような大きなゴミをイメージするかもしれませんが、実際には砂に紛れてしまうような細かい小さなゴミがたくさん落ちているんです。それらが海に流れてしまうと、生き物たちが飲み込んでしまう。そういうことも砂浜に行ってみないとわからないので、潜れなくても、泳げなくてもいいので、ぜひ参加してほしいですね。最近は『今回は行けないけど、次は行くね!』とか『応援しているよ!』と声をかけてくれる社員もいて、勇気を出して発信して本当によかったなと感じています」
 
「海の中で起きていることを知ってほしい」という切実な思いから、派手な髪色も続けています。

これまでに表現してきた髪型

「いつも海に関する色や髪型にしていて、美しい海をイメージした色にすることもあれば、網で傷つけられたウミガメの血の色をテーマにすることもあります。こういう髪型・髪色をしていると『素敵な色だね!』『いつも奇抜だね』と話しかけてもらえるので、『この色はね、海で起きていることなんだよ』と、海の話をするきっかけになるんです。シャイな性格なので、話しかけてもらえた方がうれしいですし(笑)、『実はこういう活動をしているんだけど、あなたの周りの海はどう?』と聞くと『気にしたことがなかったから、今度行ってみる!』『そういえば、プラスチックゴミが多いよね』と、海の問題に関心を持ってもらえるので、良いことだらけですね」
 
課題はまだまだ山積み。今後、アバナードの技術力を活動にもっと生かしていきたいと語ります。
 
「海の環境問題は、SDGsのいろいろなゴールに関わっていると思います。違法なダイナマイト漁をする人には、貧困によって手を出さざるを得ないという背景があるし、海のゴミは私たち人間が適切な消費をすれば、陸から海に流されることはないはず。陸上で起こっている問題と海の問題は、密接につながっているんです。人間が起こした問題は、人間にしか解決できないですから、アバナードの技術力を使って、そうした問題を陸と海の両方から解決へアプローチする方法はないか、考えを膨らませています」

 木村 美希(きむら・みき)/Infrastructure TC
湘南生まれ、湘南育ち。海を愛するカナヅチダイバー。フィリピンでのダイビングライセンスの取得をきっかけに、サンゴの減少や違法漁業による生態系への被害、海洋ごみなど海の環境問題に興味を抱く。以来、ダイビングに関するさまざまなライセンスを取得し、清掃活動やサンゴの保全活動、海の現状に関する情報発信などに取り組んでいる。


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