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『善き人のためのソナタ』を久々に観て、自画自賛してしまうほど出来の良いあらすじが書けた

WOWOWオンデマンドで『善き人のためのソナタ』(フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督、2006年、日本公開2007年)を久々に観たので、感想でも書こうかと思います。

観ていない方のため完全ネタバレの長文あらすじを。観た方はすっ飛ばしてください。

1984年の東ベルリンで国家保安省シュタージに属する凄腕尋問官ヴィースラーがある晩、観劇する。そこで劇作家ドライマンを、どうも反国家、反共産主義、西側に寄った危険思想の持ち主ではないかと勘ぐり、彼の家の盗聴を開始する。盗聴してすぐにヴィースラーは知る。ドライマンには女優クリスタという同棲中の恋人がいること、クリスタは違法薬物に手を出すほど自信がないこと、挙句、彼女はハムプフ大臣という共産党重鎮に無理やり体の関係を持たされていることを。そして、ドライマンが信頼を置くイェルスカという演出家が危険思想の持ち主として干されていることを。
ドライマンの誕生日パーティーでイェルスカが『善き人のためのソナタ』と書かれた楽譜をプレゼントする。しかしイェルスカは国家に絶望して自殺してしまう。イェルスカの死を知らされたドライマンはプレゼントされた楽譜を開いてピアノソナタを弾く。「レーニンはベートーヴェンの『熱情』を聴いてしまうと革命が達成できないと言った」と漏らすドライマン。つまり共産主義者、共産党員ではいられなくなるということ。その演奏を盗聴していたヴィースラーは共産主義者でいられなくなってしまった。こうなったらヴィースラーはドライマンとクリスタの味方。嘘の報告書を作成して彼らを助け始める。ドライマンもドライマンで、西側メディアに東ベルリンの現状を匿名で伝えることに成功する。
しかしシュタージはドライマンに目をつけていた。絶対にドライマンが西側メディアに伝えたはずだ、と。だがヴィースラーは、ドライマンは何もしていなかったとスッとボケる。そこでシュタージは、クリスタが違法薬物を入手している容疑で逮捕し、ドライマンの仕業だと吐かせる。しかし彼女はドライマンを守るために、すべてを吐いたわけではなかった。そこで呼び出されたのが凄腕尋問感ヴィースラー。彼はクリスタを尋問してドライマンの仕業だという決定的証拠の在処を吐かせる。クリスタはこれで解放された。尋問が終わったヴィースラーは誰よりも早くドライマン宅に行って証拠を消す。しかしクリスタはドライマンを売ったことに絶望して自殺してしまう。ヴィースラーも左遷されて閑職に追いやられる。
七年後。ベルリンの壁が崩壊して東ドイツは消滅した。ドライマンは自分が盗聴されていたことを知り、いつ、誰が、どうのように盗聴していたかを調べる。そしてコードネーム「HGW XX7」ヴィースラーが盗聴し、嘘の報告書を作成していたことを知る。ドライマンはヴィースラーを探し当てた。郵便配達員として細々とした人生を送っているヴィースラーを見て、ドライマンは声をかけなかった。さらに三年後、ヴィースラーが本屋の前に通ると、壁が崩壊して以来初めてドライマンが本を出版したことを知る。その本のタイトルは『善き人のためのソナタ』。彼が手に取ってめくる。すると『感謝を込めて HGW XX7に捧げる』と書かれていた。

『善き人のためのソナタ』あらすじ

おお! 我ながらよく書けたあらすじだと思います。まあ、少し長いですが。

この作品は自由に対する描き方が圧倒的に優れていると思います。不自由さの中に自由を見出す、だから自由を感じられる仕組みになっています。
自由とは言論の自由、つまり権力に文句を言えるということ。普段から権力に対して文句を言える日本にいるとまったく気づくことのない自由を、不自由さの中で感じさせてくれるところです。と言うか、テレビを点けたら文句しか言っていません。文句製造機です。
さらに輪をかけて素晴らしいところは壁が崩壊したニュースが届くところ。そして誰が自分を盗聴していたのか記録がしっかり残っており、そこにアクセスできるというところです。この二つのシーンは物語を通して、不自由さの中で見出す自由ではなく、本物の自由を見せています。

さてさて、自由の話はこれぐらいにして。
ヴィースラーが盗聴中に『善き人のためのソナタ』を聴いて涙を流すシーンがあるのですが、この涙には複数の意味があると私は思っています。
これは考察ではなく事実です。と言うか、最近「考察」とか言っているアレ、アレってただの穴埋めというか答え合わせというか解説でして、たいして考えてませんよね。って言うか何も考えずにスッと入ってくる映画にたいして考察もへったくれもないでしょうに。

1、曲に感動したから
2、共産主義者でいられなくなってしまった自分を嘆く
3、今まで忠誠を誓っていた国家を裏切ることになるから
4、自由(西側)に想いを馳せたから

4は怪しいですが、1、2、3は確実でしょう。そしてあの涙こそ自由を求める瞬間なのです。

いやあ、自由っていいですね。と水野晴郎っぽく終わらせましょう。

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