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撮影中の死亡事故こわい

過日、俳優アレック・ボールドウィン氏の訴追が取り下げられたと報じられた。2021年、氏は撮影中に起きた銃の暴発で撮影監督を死亡させてしまったのだ。これは現場にいる誰か1人でも注意していれば防げた事故だ。
というわけで、撮影中に起きた死亡事故をいくつか列挙する。ぜひ、教訓にしていただきたいと思う。

1984年『トワイライトゾーン/超次元の体験』。オムニバス作品の第1話『偏見の恐怖』の撮影中、主演のビック・モローと共演の子供2人がヘリコプターに巻き込まれて死亡。あまりにも有名な事故のため、この映像は現在でもYouTubeほか動画投稿サイトでも確認できる。
この事故によって監督のジョン・ランディスは莫大な損害賠償金を抱えることになった。しかし、その後も監督や脚本家として活動している。
息子のマックス・ランディスも脚本家で、かつ相当のシネフィル。マックスが自宅テレビで園子温監督『愛のむきだし』を見ていたところ、たまたまジョン監督が来て、何となく作品を一瞥し、その場に立ったままエンディングロールまで見たというエピソードがある。
しかし園子温が事故物件だった言うオチはまったく笑えない。

1989年『座頭市』。撮影中に真剣を使い、大部屋俳優が死亡した。
監督・主演は勝新太郎。真剣を使って死なせてしまったのは勝新太郎の息子、鴈龍(当時は奥村雄大)。
鴈龍は姉の奥村真粧美とともに、大麻の密売で逮捕されたことがある。またその2年後にも大麻関連で逮捕されている。父親の勝新太郎もコカインで逮捕されているという、薬物エリートだ。
ゆうばりファンタスティック映画祭'94で、勝新太郎がデニス・ホッパーと共に降りそそぐパウダースノーを見ながら「吸いてえなあ」と言い合ったのは有名。
さて、その鴈龍も今となっては故人。
知っていると思うが、母親はバラエティ番組でもおなじみの中村玉緒。個人的感想になってしまって恐縮だが、三島由紀夫『金閣寺』を原作とした、市川崑監督『炎上』に出ていたときの中村玉緒は美しい。主演は市川雷蔵。
さらについでに言うと、小説は『金閣寺』を読めばもうアガりではないだろうかと思っている。あれ以上、何を求めるのか。

1993年『東方見聞録』。リハーサル中に重さ数キロの甲冑をまとったエキストラが水中に入って、浮上できずに溺死。
監督は井筒和幸。この死亡事故によって井筒監督は補償金を払うことになる。以降、テレビ出演が増加したのは、おそらく自身の映画を撮るためでもあるが、補償金を稼ぐためでもあると推察される。
井筒作品は良作、駄作、良作、駄作……と繰り返すことで有名。ロシアの「ツルフサの法則」に似ている。しかしコロナで延期された最新作『無頼』、その前作『黄金を抱いて翔べ』は、駄作、駄作と続いた。次に期待したいところ。
呪われた映画として、井筒監督『パッチギ!』についてこちらに書いてあるので、よろしかったらぜひ。

テレビの撮影中での死亡事故もあるが、今は映画ということに限定しているので割愛しておく。
ちなみに舞台装置での死亡事故も少なくない。ひとつだけ例に挙げたいのだが、あまりにも悲惨すぎてこれも控えることにする。もし知りたい方がいるなら『香月弘美』で検索されたし。

人間ではないが、1957年『幕末太陽傳』は本物のネコの死体が使われている。小道具部屋に住み着いていたネコを殺したのだとか。猫には申し訳ないが、素晴らしい作品なので必見である。
そのネコちゃんの死体を掴んでいるのが小沢昭一。早稲田大学落語研究会の創設者。つまり日本で初めて落語研究会を作った人。早稲田の落研は「らっけん」と呼ぶほど誇りに思っているとかいないとか。
監督は今村昌平。
話はそれるが、今村昌平は、早船ちよ原作、浦山桐郎監督『キューポラのある街』の脚本を担当をしているほどの、左翼の代表格のような映画人。しかし『幕末太陽傳』の頃にはまだ左翼に動物愛護精神はなかったようだ。主演を務めた吉永小百合が隠れ共産党員と言われているのは、今村昌平の映画に出ていたからだと思われる。真偽は不明だが。
『キューポラのある街』の舞台は埼玉県川口市。西川口は少し前まで中国系風俗街としてその名を馳せていた。今はクルド人が多く住む街に変貌している。
『キューポラのある街』に関しては以前書いているので、よかったらそちらを読んでいただきたい。

さて、最後。
1979年『マッドマックス』は撮影中に死亡事故が起きて、その映像が使われていると噂されている。だが、その噂はまったくのデタラメ。
当時の雑誌を調べてみると、死んだ瞬間の切り取り画像が掲載されているが、ある種の宣伝だと思われる。
『マッドマックス』シリーズについては『サンダードーム』の評判がすこぶる悪いが、私は嫌いではない。

くれぐれも、安全第一でいきたいものである。


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