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雪柳 あうこ
2020年5月31日 03:27
「夏のひまわりは、ほんまにきれいなんやで。植えとる畑からは、遠くに海も見えてな……」おばあちゃんはゆっくりと、今日も同じ話をします。 ぼくが数えているのが間違ってなければ、この話は今日で九五六回目です。もうすぐ千回になります。ぼくは、ものを覚えるのは得意だけれど、大きい数は苦手です。だから、千回を過ぎたらもう、数えられないと思います。おばあちゃんが話すのは、老人ホームに入る前に住んでいた、
2019年12月9日 16:29
墓じまいに来たついでに、祖父母の家があった土地の近くまで車を進めた。祖父母の家はわたしが学生だったうちに解体が済んでしまったけれど、すでに限界集落に近い山の半ばの村は、住む人のいなくなった木造の古い家をいくつも残している。歳をとり右足が悪くなった母を助手席から下ろし、二人で少しだけ辺りを歩いた。アスファルトの舗装のない白いコンクリートの細道を、支えながらゆっくり上る。小道はひび割れて、やが