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雪柳 あうこ
2019年9月29日 18:31
暑さの名残の中、久しぶりに訪れた川は、きらきらと日を弾いていた。清い流れは緩く甘く、さらさらとした優しさに満ちているように見えた。足を差し入れれば、拒絶のような凛とした冷たさ。慌てて踏み込んだ先の小石の尖り。思わぬ深みと速さに弄され、脱ぎ捨てたサンダルは遥か下方へ。川は夏の終わりの全てをそそぎ、押し流されてわたしは秋になる。 #創作 #物語 #小説 #掌編 #掌編小説 #短編小説 #詩
2019年9月7日 13:08
陽射しが辛くて、空を睨むように見上げたら。百日紅の花と葉の隙間から、青空が太陽を支えているのが見えた。もう少し、おたがいがんばりましょうか。声を掛け合う花と、樹と、空と、雲と、私。嵐のような夏の太陽の癇癪が終わるまで、きっとあと少し。 #小説 #詩 #写真 #掌編 #掌編小説 #短編小説 #百日紅 #夏
2019年9月2日 12:06
そろそろお別れだ、と貴方は言った。なるべく気づかないようにいなくなるからさ。朝と夕とが冷えていく。風が通り抜けるたび、貴方が薄まる。夏、夏、熱に抱かれた私に生きている実感を与え、くっきりと強い光を焼き付け、気がつけばどこかへ。ざわめきのような恋しさだけを残して。 #小説 #詩 #写真 #掌編 #掌編小説 #短編小説 #夏 #夏の終わり