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忘却の彼方に消えてしまう前に

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エッセイ、日記をまとめています。
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記事一覧

夜連れ出してくれた母と

街灯の明かりが私の目の奥を鈍く突き刺す。
その痛みで そうだ、外へ出るのは久しぶりだった と思い出す。

およそ10日ぶりに靴を履いた私は引きこもりではない。
高校3年の冬、塾の自習室へ行くのも嫌で自宅で勉強をして(いるつもりをして)いた。

夜は眠れず、食欲も湧かず、体重は7kg落ち、色白の肌は青白くなった。
きっとあれは受験うつだったんだろう。

そんな私を見かねてか、ある夜、ゴミを捨てるのを

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神と奴隷

ジジイに怒鳴られた。心をすり減らした。

接客のバイトをしていると、しばしば発生する客からのクレーム。

ある日、展示されていた商品が欲しいと言われたが、注文専用商品だったのでその旨を伝えた上で「注文してお取り寄せになります」と言うと、「無いなら展示しておくな!」と騒いで怒鳴り散らす。
こんなの、欲しいものを親に買ってもらえないと泣き叫ぶ子どもと一緒ではないだろうか?

散々喚き散らされたのちに

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緊張と電車

緊張と電車

初めて1人で電車に乗ったのは小6だった
最寄りから2駅先のデパートへ中学の制服を作りに行くのに、仕事帰りの母と待ち合わせするためだった

1人で飛行機も新幹線も乗ったことがあったのに、電車だけかなり遅咲きデビューを果たすことになったのだ

今ならわかる
最寄りに停車する電車は、どれに乗ってもデパートのある駅に着くことを……

しかし、そんなことすら分からず各停なら停まるかな?と2、3本見送って、や

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トーキョー賛歌

私が小学2年生までを過ごした代々木上原という街がある。
その街は渋谷区にあり、近くには渋谷、原宿、代々木公園、明治神宮、東京大学などがあった。
いわゆる高級住宅街と呼ばれる街で、芸能人も近くにたくさん住んでいたし、億ションもたくさんあった。一軒家も都内にしては大きいものが多かった。

私は残念ながらそんな高級住宅に住んでいたわけではなくて、父親の会社の社宅に住んでいた。
築40年のボロボロの団地の

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おセンチブルース

こんなに幸せで、これほど不自由なく毎日を過ごせているのに…なぜそれ以上を欲しがるのだろう。まだまだ寂しくなってしまうのはなぜだろう。

家族もいて、近い親戚もみんな元気で。
近しい人の死を経験したことがない私。
それはとても幸せなこと。

なのに不安になるのだ。
両親、姉妹をはじめ、遠くに住む祖父母、おじ、おば、いとこ。
各々が元気に毎日を過ごしているのに、わたしだけが勝手に不安になっている。

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余韻と活力はノットイコール

始まるから終わりが来る。
楽しみなことほど始まるまでが長く、始まってしまうとあっという間に時間が過ぎていくよね。

私は好きなバンドのライブに行くことが大好きだ。(特にBUMP OF CHICKENや[ALEXANDROS]のライブによく行きます)
ツアーやライブ情報が解禁され、チケット先行を経て無事チケットが取れたらそこからは楽しみでワクワクしっぱなしの時間。
もし遠征することになれば、飛行機

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雨露と前髪

夜中に雨が降ったんだろう
朝、家を出ると地面や草木が濡れていた

「朝露か…いいな」

そんなことを思いながらバス停を目指す
早歩きで坂を登り、列の一番後ろ
バスが到着して乗り込もうとすると、頭上の電線から何かが落ちてきた

恐る恐る頭を触りながら上を見ると鳥はいないようだ
「糞じゃなかった、よかった」

落ちてきたのは雨水だった

しかし、時間がないなかでセットした前髪が終わった
まだ家を出て1

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