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読書の秋に思う、紙の本との再会の時

 日経電子版の記事【比叡山に書店、関西TSUTAYAが期間限定】は、比叡山延暦寺の照隅祭で期間限定の書店を開いたり、高級マンション・ホテルに本を読めるスペースを作る事業を手掛けるTSUTAYAに関するごく短い記事です。読書離れが叫ばれる昨今、これからの紙の本の世界はどのようになっていくのでしょうか?



 そもそも、私達は、どのような経緯で読書に親しみ、読書好きとなってゆくのでしょうか?――親が読書好きで、家庭に本がごく自然に当たり前のようにたくさんあって、本棚から漂う書籍のインクのにおいに包まれながら、子供の頃から自然と読書の習慣が身に付いてゆく……豊かで繊細な感受性に溢れる子供時代、卓越した語り部の物語にぐいぐいと引き込まれ、その世界への没入感のもたらす陶酔が忘れ難い経験となって読書好きとなる……。

 人それぞれ、様々な体験を通して読書好きが誕生する中で、子供の頃に読書に親しむ機会を得られる事ほどの幸運はないのかも知れません。その意味では、読書の出発点の一つには『絵本』が、抒情的な心に染み入るような絵物語があるのかも知れません

 一度読書好きとなった人間は生涯読書好きであり続けるのだとしたら、小中学生の読書量の増加、そして大学生の読書量の減少傾向を示すデータは、どのように解釈したらよいのでしょうか。――就職活動・本を買う経済的な余裕・ゲームに消費される時間……様々な要因が頭に浮かびますが、小中学生は本を読んでいる、というデータほど勇気付けられるものはありません……。



 読書の事を考える時、どうしても避けて通れないのは電子書籍です。基本的には、デジタルであろうが紙の本であろうが、同じ内容、同じ感動なのかも知れません。場所を取らず携帯性に優れた電子書籍には優位性があります。……ただ、紙の本の持つ魅力は、決して色褪せることがないのではないでしょうか。……雨の休日、今日は一日読書だと決めて、ベッドに寝転がり無心になってページをめくるひと時は、何物にも代えがたい至福の時間です。人は、紙の本によって読書好きとなるのか、それとも電子書籍なのか……読書という名のUX(ユーザーエクスペリエンス)を豊かなものにするのは紙の本の存在だと思います。

 昨今叫ばれる読書離れは、決して読書嫌いとイコールではないはずです。積極的に読書が嫌いで読書離れが起きているのではなく、消極的に一時的に読書から遠ざかっているのに過ぎない、と思いたい。だとすれば、寺院の書店・ホテルの読書スペース・マンションの読書室、あらゆる機会を捉えて、紙の本との接点、出会いの場を設けることに意義があるのだと感じました。



#COMEMO #NIKKEI

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