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LBOモデル作成ステップ|Step1

今回はLBOモデリングテストや実務で使うレベルも視野に入れて下記の作成ステップを中心に記載していく。今回は下記のうちStep1のケースの前提について解説していく。


Step0:モデルの前提条件

今回のケースの前提条件は、「製造業を営む非上場会社かつ、過去5年間の財務数値が入手可能な企業」に対するLBOによる買収であり、現金対価の株式譲渡とする。

モデル全体を通じた一般的な前提条件は下記の通りとする。その他の仮定として、必要最低現預金の計算過程とCash interestも前提条件を参考に載せている。

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General Assumptions

日本企業の買収想定ではあるが、財務数値の単位は米ドルとする12月決算、エントリーはシンプルに期央の6月末とし、税率も日本の法定実効税率を参考に決定する(30.62%)

モデル上は、セルに名前を付すかどうかはその人次第であるが、個人的にはあまりにも多くのセルに名前を付すとName manager整理時に事故が起こりやすくなる。

そのため税率/日数等の使用頻度が多いような変数にTax, Daysといった名前を付してモデルを組むことをお勧めする。

Step1:取引概要の確認

Debtの前提条件や、Sources / Usesの主要な前提条件はモデル上は「LBO]シートにおいてまとめる
いろいろなやり方があると思うが、モデル作成時にあまりにも多くのシートを設けるのは見づらいしレビュアーにとって煩わしくなる。

LBOシートでは、各前提条件 (Operating modelの条件も含めるかは、その人次第)、Pro-forma FS のサマリー(財務3表)および、IRR/MOICのリターンのサマリーを作成することが望ましい。
参考までに前提条件は下記のようにまとめられる。

Transaction Summary

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Transaction assumtpion (本件の仮定)から説明すると、エントリーEBITDA:USD450m (日本円で585億円ほど)、エントリーのマルチプルはEV/EBITDA: 10x  としてエントリー時点のLTM BSの数値を使用してブリッジを計算しOffer value = Equity value(株式価値)を計算する。

会計処理はパーチェス法によりGoodwill (のれん)の計算を行う。

下3つの行はゼロになっているが、PPAの結果、取得差額を配分する際には別途計算をし繰延税金負債 (DTL: Deferred Tex Liability)を認識しないといけない点に注意したい。今回の例ではPPAにより追加で識別可能資産はないとしているので、純資産との差額がそのままのれんに計上される。

Sourcesの計算においてはCash bridgeとしてcash on hands - minimum cashを計算しており、取引費用含め一般的なLBOモデルで考慮すべき項目は埋めている。
Sourcesの計算に関して、本件特有の論点として、Management Rolloverを想定している点に留意されたい。数値はOffer value*5%で計算される。

Financing Summary and Checks

ファイナンスの想定はシニアローンと劣後債で仮定する。LeverageはエントリーLTM EBITDAに対する倍率である。Termは返済期間、Rateは利率を指しSOFRに対するスプレッドの加味をするか固定利率かどうかはFloat or Fixedで判断することができる。
なお、劣後債に関してはPIKの計算が必要になる点に注意したい。PIKの計算は別途記載していく。このようにすると、レバレッジの総額 (Amount)およびファイナンシング時のFeeの計算がなされる。
ファイナンスに関する前提条件が整理できれば、あとは各数値をSources and Uses のSourcesの該当する行に飛ばしていくだけである。

参考:過去のPLおよびBS

 本件の設例で使用している過去の財務数値(PLおよびBS)を参考に記載する。なお、数字はすべて筆者が任意に入れた数値であり、実際の企業のものではないことに留意されたい。

IS sample


BS sample

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