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むさしの写真帖

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「写真っていうのはねぇ。いい被写体が来たっ、て思ってからカメラ向けたらもう遅いんですよ。その場の空気に自分が溶け込めば、二、三秒前に来るのがわかるんですよ。その二、三秒のあいだに…
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2023年10月の記事一覧

四十にして惑わず〜ライカ

四十にして惑わず〜ライカ

承前。

「あんた、いくつだった?」

店主は修理中のカメラから目を離さずに言った。

このあいだ40になったわ

「ほうかァ、もっと若いかと思っとった」
そう見られることが多いんだよ

店主が修理していたカメラはペンタックスだった。
ここはこう言った古いカメラの修理を請け負う。
修理の看板をあげてるわけではないけど、いわゆる口コミというヤツなのだろう。(最近のは分かんないね)と言いながらなんとか

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レンズを作る

レンズを作る

もう10年近く前の話になるが、上限の金額を決めたカメラで撮った写真で写真展をやるという企画に参加したことがあった。
プロアマ混合の異種格闘技みたいな話で面白そうなので乗ったわけだ。
はじめはその金額でカメラを探してみたが、どうにもコレというのが見つからず困っていたときに、ちょっと前に知人に譲ってもらった(タダ)カメラがあるのを思い出した。
元手は0だから、これは金額的にノーカンだろうと主催者に確認

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これ以上なにが要る〜SONY NEX-6

これ以上なにが要る〜SONY NEX-6

昨日、昭和記念公園に行ったときには、久しぶりにNEX-6を持ち出した。
2012年のカメラなので、もう11年前のものになるオールドデジカメだが今のところ普通に使えている。
これはNEX-7とNEX-5の間を埋めるカメラで、飛び抜けた性能ではないにしてもバランスの取れた評価の高いカメラだった。

これが今のぼくの勝負カメラである。
あちこち寄り道もしたし、これからどう気持ちが変わるかは分からないけれ

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夕方

夕方

昨日は大変に天気が良くて、家にずっといるからいい加減にケツも痛くなってきたので、少し散歩をした。
おおかた1日の仕事に片がついてからだったので、もう陽もだいぶ傾いてきた頃だ。

秋の夕日はつるべ落とし。
あっという間に暗くなってしまう。
16時くらいにはじゅうぶんに夕方の雰囲気になる。
そんな中をぼんやりと歩いた。

この街に住むようになって8年くらいになるが、未だに近所のことをあまり知らない。

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黄が爆ぜる

黄が爆ぜる

「青」に続いて。

もう細かいデータはいいかな、と。
いろんなカメラで、それこそスマホのカメラも。
いろんな場所、時間に。

早いか遅いか、遅いか早いか〜ライカ

早いか遅いか、遅いか早いか〜ライカ

その店は一見するとカメラ店だとは分からないような出で立ちで、店内は暗く店頭のショーウィンドウにたくさんのカメラは展示してあるのだけど、お世辞にも整理されているとは思えない、有り体に言えば「小汚い」印象の店だ。
ぼくがそこに入るきっかけは、どうしても欲しいカメラがあって、それはもう中古でしか手に入らないから自宅近辺の中古カメラ店を手当たり次第当たっていて、たまたま電話をしたら「あるよ」と言われたから

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遡る〜ミノルタ (4)

遡る〜ミノルタ (4)

しつこくて長い記事を垂れ流してしまった。
これでミノルタはお終い。
もっと昔に中古のα-7を使ったことがあったけれど、写真が残ってないからノーカン。

このカメラはおもちゃみたいなカメラで撮った写真で写真展をやろうという企画があって、そのために買ったものだと記憶している。
シャッターが怪しくてレンズも曇ってるということでジャンク扱いのだいたい1000円くらい。
シャッターは油を差しレンズもひと通り

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遡る〜ミノルタ (3)

遡る〜ミノルタ (3)

Minolta XE

このカメラの写真も借り物。
クルマにせよカメラにせよ所有したいものの記録を残してないのは残念である。
モノがないのは仕方ないにしても、せめて写真くらい...ねェ?...

ミノルタXEは文句のつけようがないカメラだった。
もう元も子もないというか、身も蓋もないというか、でもそのひと言に集約されてしまう。
今でも右手の親指は巻き上げレバーの感触を覚えているし、人差し指はシャッ

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遡る〜ミノルタ (2)

遡る〜ミノルタ (2)

ミノルタの話をしてるのにソニーのリンク。
まぁ、カメラがお好きな方にはご承知のとおり、ご承知おきでない方にはざっとご説明しておかないと...。

ミノルタは大阪に本社を置いていた光学機器のメーカーだったが、2003年にコニカと合併しコニカミノルタとなりカメラ事業も継続していたが、2006年をもって同事業から撤退している。
伴いミノルタが持っていたαマウントを含めたカメラ事業は提携を発表していたソニ

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遡る〜ミノルタ (1)

遡る〜ミノルタ (1)

ミノルタのカメラに関しては、ぼくが知っている(使っていたことのある)機種は少ない。
初めて手に入れたのはα-Sweet II、次にα7000、XE、ミノルタフレックスの順になる。

入門機

最初に手に入れたα-Sweet IIはエントリーモデルだ。
フィルム一眼レフ、エントリー機の先鞭をつけたのはやはりキヤノンのEOS Kissだっただろう。
これがパパママ層にヒットしたのだ。
これを見て他社も

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Primitive〜Pentax SV,SP

Primitive〜Pentax SV,SP

2010年ごろの話だけど、どこの中古カメラ店に行っても見つかるカメラがPENTAX SPだった。
言い方に語弊があるかもだけど、それだけ玉数があると言うのは、それだけ売れたということだ。

上のビートルズの面々が手にしているのもPENTAX SPだ。こういった写真もSPがバカ売れした要因だっただろう。
おもしろいのはジョージが付けているレンズがペンタックスのものではないところ。
シュナイダーとかだ

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十二葉の日記〜Rolleiflex Standerd

十二葉の日記〜Rolleiflex Standerd

古い写真を見ている。
2013年には前年からの京都での仕事が続いていて、週に何度も通っていたのが写真から分かる。
3月11日には時間を作りカメラを下げて歩いたようだ。
カメラはローライフレックス・スタンダード。
120mmフィルムなので枚数は12枚。
12枚だけの散歩だ。

スタンダードは実に古いカメラだ。
1932年というから、ぼくの母親よりも年上だ。
写真は2013年だから、ぼくのは後期と思わ

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夜明け前

夜明け前

木曽路はすべて山の中である

五街道のひとつである中山道は江戸と京都を結ぶ主要な街道であって、全長は135里32丁というからおおよそ534kmにも及んでいて、天候によって大井川で足留めを食う可能性のある東海道よりも、参勤交代などでは好まれたという話もある。

69の宿場が置かれたのだが、うち17宿が岐阜の美濃地方に集中する。
そのひとつである馬籠宿は名古屋からも割合行きやすい観光地でもある事から遠

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凡庸とはなにか

凡庸とはなにか

撮った時には同じ場所での著名な写真家の写真があるとは知らなかったのだけど、こうして並べてみると世界的に有名な彼らと自分とはなにが違うのか、というのが如実に見えてくる気がする。

ぼくが如何に「見てないか」がよく分かる。
ぼんやり風景をながめているだけだ。
技術的なことは置き去りでもいいから(これが今撮りたい)という衝動が感じられない。
その衝動を伝える反射神経が養われていないからシャッターは遅くな

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