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夕方

年季の入ったガチャ

昨日は大変に天気が良くて、家にずっといるからいい加減にケツも痛くなってきたので、少し散歩をした。
おおかた1日の仕事に片がついてからだったので、もう陽もだいぶ傾いてきた頃だ。

秋の夕日はつるべ落とし。
あっという間に暗くなってしまう。
16時くらいにはじゅうぶんに夕方の雰囲気になる。
そんな中をぼんやりと歩いた。

この街に住むようになって8年くらいになるが、未だに近所のことをあまり知らない。
駅に向かう道すがらは、もう知った場所ばかりだが、それ以外の場所にはほとんど行くことがない。
まぁ当然かも知れない。
用事もないのだから。

自宅の近隣は住宅地なので、店に行くといってもコンビニか少し歩いてのスーパーくらい。
それ以外の場所をいい歳のおっさんがフラフラ歩いていたら不審者扱いだ。
なので昨日は割とスタスタと、ちゃんとした服を着て歩いた。

夕方になると空気が変わる。
それは子どもの頃からなんとなく感じることだ。
突然人や車が増え始めたりして街がざわめき始める。
ぼくはそんな感じが好きだった。
ぼくが生まれ育ったのは商店街の外れだったから、夕方になると隣にある酒屋の角うちに向かいの工場の人たちが集まり始め、おばちゃんたちは市場に向かう。
それまでは静かなものだったのに、急に活気が出てくる。
そうやって街が動くのを見るのが好きだったのだ。

ぼくは日曜日の夕方になると、父親と家の前に立って、通り過ぎる車の名前を言い当てていたそうだ。
コロナでしよ、セドリックでしょ、カローラでしょ、セリカでしょ、クラウンでしょ。
父親は免許を持たなかったから、たぶんよく分かってなかったと思うが、そんな遊びに付き合ってくれていた。
近所のおばちゃんが市場に行く途中で声をかける。

「◯◯ちゃん、いいねぇ。おとうさんに遊んでもらって」
「◯◯ちゃん、こんにちは」

ぼんやりとその光景が脳裏に浮かぶ。
決まって暖かい記憶は夕方だ。
ぼくは夕方が好きだ。

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