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子どもの幸せ③(ポジティブ思考)運のよさ

ウサギ仙人(ウ仙)から子どもを幸せにする方法を学んでいた亀子であったが、

松下幸之助は運のいい人しかパナソニックに採用せず

ウ仙「そろそろ3つ目の『ポジティブ思考』を伝授しないとな」

亀子「お願いします」

ウ仙「ところでおぬしは『自分が運がいい』と思うか?」

亀子「唐突な質問ですね。私は運がいいか悪いかわからないですね」

ウ仙「いや実はな、パナソニックの創業者の松下幸之助がな、就職活動に来た志願者に対して、この質問をしていたんじゃ」

亀子「え?運がいいか悪いかで入社が決まるんですか?」

ウ仙「そうなんじゃ。『運がいいです』と答えた人のみを採用したんじゃ」

亀子「じゃクジ引きで『合格』を引いた人を採用すればいいんじゃないんですか?」

ウ仙「いや松下幸之助が『運がいいか』と聞いた理由はそうじゃないんじゃよ」

亀子「どういう理由なんですか?」

ウ仙「クジ引きの運の良さというのは、確率論的なものじゃろ。四葉のクローバーを見つけました、流れ星を見ましたみたいな話じゃな」

亀子「四葉のクローバーを見つけるのは運がいいじゃないですか」

ウ仙「松下幸之助の運の良さはちょっと意味が違ってな。松下幸之助自身は、自分は運がいい人間であると思っていたんじゃ。それは松下幸之助の人生の中で二つの体験から、『自分は運が良い人間だ』と思うようになったのじゃ」

亀子「どんな体験だったんですか?」

ウ仙「松下幸之助はな、和歌山で生まれた人じゃ。しかしお父さんが米相場で失敗したんで、松下幸之助は大阪へ丁稚奉公に行くことになった。その丁稚奉公を辞めてから、大阪電灯株式会社(関西電力の前身)に就職する前に、大阪港の建設現場で土方の仕事をしとった。港の建設現場じゃから、陸地からは離れておる。仕事場に行くには船に乗って行かないといかんし、帰ってくる時は船で帰ってこないといかんのじゃ。しかし港じゃからせいぜい行く時間は10分くらいで、小さい漁船で行っておった」

亀子「お父さんは運が悪い人だったんですね」

ウ仙「一つ目の体験はある暑い夏の日のことじゃ。松下幸之助は、仕事が終わったと思って、小さい漁船に乗って帰ってきていたんじゃ。漁船じゃから乗る場所が限られておってな、みな船の甲板に腰をかけ、船の外に足をかけて座っていたんじゃ。そうすると船べりを船員さんが歩いてきて、松下幸之助の横を通る時に船が波に揺られて船員さんが落ちそうになったんじゃ。
その時に松下幸之助が近くにいたもんじゃから船員さんに掴まれてしまって一緒にドボンと落ちてしまった」

亀子「巻き込まれて落ちるなんて運が悪くないですか?」

ウ仙「しかしな、松下幸之助が『やばいな』と思っておったら船が気づいて引き返してきてさっと引き揚げてくれたのじゃ。その瞬間、松下幸之助は、こう思ったそうじゃ。
『わー 助かった。今日は夏の海でよかった。もし冬の海やったら僕心臓麻痺で死んどった。僕は運がええな」とこういうふうに思ったそうじゃ。これが一回目の話じゃ」
 
亀子「助かったなら、運がいいですね」

ウ仙「二回目の体験は、今から105年前の1918年に松下幸之助はパナソニックの前身である松下電器を創業したんじゃ。当時社員は松下幸之助、そして奥さんのむめのさん、そして、むめのさんの弟、井植歳男のたった3人じゃ」

亀子「パナソニックも創業当時はたったの3人だったんですね」

ウ仙「ある日、松下幸之助は社長自らが製品を配達しなければいけないので、自転車に乗って、製作したソケットという電球を問屋に配達しようと自転車を漕いでいると、大阪の江之子島の入口で横からオ―ト三輪車がやってきまして、ドーンと轢かれたんじゃ
 当時の記録を見ると、自転車がバラバラになるくらいになる大きな衝撃であったと書いてあるから、飛んでいったんじゃろうな。そして飛ばされた先が電車の線路の上だったんじゃ。また間の悪いことに電車がやってくるんじゃな」

亀子「自転車で車に轢かれて、電車の線路の上に飛ばされるなんて、運が悪い気が・・・」

ウ仙「回りにいた人が『誰かが轢かれる』と思ったんじゃが、なんと電車が止まってくれたのじゃ。しかし事故は事故じゃから見ていた人たちが寄ってきて『大丈夫か大丈夫か!』と言いながら松下幸之助を起こしてくれたら、傷一つなかったんじゃ。『わあ! また助かった。僕は運がええな』と思ったのじゃ」

亀子「これまた大どんでん返しで、運がいいですね」

ウ仙「そこで松下幸之助は、『そうか僕は運がええ人間やから何やっても成功するな』ということで、松下幸之助105年前にたった三人の会社だったのが、今や全世界で三十六万人のパナソニックに成長させたんじゃ」

亀子「パナソニックの社史はそれが原点なんですね」

ウ仙「しかし考えてみてほしいのじゃ。一回目も二回目も結果としては運がいいと見えるが、運が悪い部分もあるじゃろ?」

亀子「そうですね」

ウ仙「しかし松下幸之助は起こった出来事のいい部分だけを見たんじゃ。一回目は『命が助かってよかった』、二回目は『無傷でよかった』と。実は

松下幸之助の運の良さというのは、ポジティブ思考ということ

なんじゃ。つまり

物事のいいところを見る力

なんじゃよ」

亀子「なるほど、そういうことだったんですね」

ウ仙「ですから冒頭の質問で

『あなた、運がいいですか』と聞いて『はい、私は運がいいです』という人間を採用した理由は、ポジティブ思考の人間を探していた

ということなんじゃな」

亀子「これが子育てと何の関係が?」

ウ仙「子どもを幸せにする3つ目の要素は『ポジティブ思考』だと言ったな。実は

親の『ポジティブ思考』が子どもの『ポジティブ思考』にもつながる

のじゃ」

亀子「カエルの子はカエルと言いますからね。『ポジティブ思考の子はポジティブ思考』ってことですかね?」

ウ仙「まぁ単純に言えば、そういうことじゃがな。実は親のポジティブ思考にはもっと深い意味があるのじゃ」

亀子「深い意味?」

ウ仙「そのことはまた次回伝授しよう。とりあえず今日は

子どもを幸せにしようと思えば、『自分は運がいい人間だ』と思うこと

じゃな」

亀子「かしこまりました」

こうして亀子はレベルが上がった。
運のよさとはポジティブ思考であることを学んだ。
親のポジティブ思考が子どものポジティブ思考にもつながることを知った。
子どもを幸せにしようと思えば、『自分は運がいい人間だ』と思うことだとわかった。

(つづく)



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