子どもの幸せ②(共生意識)誕生祝いと家族行事
ウサギ仙人(ウ仙)から幸せの4要素の1つ目「成長意欲」について教えてもらった亀子であったが、
ウ仙「では幸せの4要素の2つ目の『共生意識』の話を始めるとするかのぅ」
亀子「よろしくお願いします」
ウ仙「ところで亀子は少年院に行ったことがあるかのぅ?」
亀子「私は未成年の頃に犯罪をおかしたりしてませんよ!」
ウ仙「そうじゃないんじゃ。少年院の見学に行ったことはあるか?という意味じゃ」
亀子「ああ!そういうことですか。それはないです」
ウ仙「ちなみに刑務所はどうじゃ?」
亀子「私はありませんけど、ウサギ仙人様は行ったことがあるのですか?」
ウ仙「あるぞ。というより、受刑者に講演の仕事を頼まれてのぅ。その時に刑務所の中に入れてもらったんじゃ」
亀子(この人というかこのウサギ、何者??)
ウ仙「ちなみに少年院は外部見学者を受け入れている日に行ったんじゃ」
亀子「今日も前置きから始まりましたけど、少年院と共生意識は何の関係があるのですか」
ウ仙「まぁそう焦るでない。少年院はおぬしもご存知の通り、未成年で犯罪をおかした少年少女が入所するところじゃ。軽犯罪を繰り返した者から殺人や強盗などの重大犯罪をおかした者もおる」
亀子「昔の『特攻の拓』に出てくるようなヤンキーばかりがいるイメージです」
ウ仙「それが意外とそうでもないんじゃ。確かにわしらが子どもの頃は『特攻の拓』だけでなく『ろくでなしブルース』『湘南純愛組』『今日から俺は』『カメレオン』のようにヤンキー漫画がたくさん流行っており、その時に少年院にいた子どもの中には、刑務官をだましたり、買収したり、誘惑したりする大人顔負けの狡猾な少年少女がたくさんいたそうじゃ」
亀子「むしろ『無頼伝 涯』の世界ですね」
ウ仙「それが2000年以降は、刑務官と会話が成立しないような未熟な少年少女が多いらしい」
亀子「犯罪者にも時代性があるんですね」
ウ仙「しかし入所者の様子は変わったといえど、昔も今も退所した後に再犯するかしないかの違いは変わらないらしい」
亀子「再犯する子としない子は何が違うんですか?」
ウ仙「少年院は刑務所と違って、矯正施設じゃな。つまり社会に出るための教育を行う場なのじゃ」
亀子「それはわかります」
ウ仙「少年院の中でも毎日食事が出るんじゃが、本人の誕生日にはお祝いのためのケーキが付いたり、クリスマスには全員の食事にケーキが付いたり、お正月には全員の食事が餅の入ったお雑煮になったりするんじゃ」
亀子「それが何の教育に?」
ウ仙「実は未成年で犯罪をおかすような子どもたちは親から虐待を受けたり親が死んで引き取られた先の家庭で邪険に扱われたりして育っていて、『俺(私)が罪をおかしても悲しむ人は誰もいないんだよ』という孤独感の強い子が多いんじゃ」
亀子「へぇー、そうなんですね」
ウ仙「そもそも入所するまでに家族みんなで食事を食べたという経験や思い出がない子も多いし、お誕生日を祝ってもらったり、家族で行事をおこなったりした経験なんて皆無なんじゃ」
亀子「世の中にはそんな子たちもいるんですね」
ウ仙「少年院の中でお誕生日を祝ってもらった後の日記や感想文に『自分が生まれてきたことに意味があったと初めてわかりました』と書いたり、行事ごとを一緒に行ったりした後に『自分は独りで生きているんじゃないことがわかりました』と書いたりした子は、人生に意味を見出し、少年院から退所した後は二度と犯罪をおかさないようなんじゃ。逆にそれらを経験しても『自分は孤独だ』という思いから抜けられない子は出所した後に再犯をして、今度は刑務所に行ってしまうようじゃ」
亀子「なるほど」
ウ仙「『共生意識』は共に生きる意識ということじゃから、自分は独りで生きているんじゃないという実感が、まさにこれに当たるわけじゃ」
亀子「ここにつながってきたんですね」
ウ仙「少年院に入っている子どもたちは、矯正プログラムで初めて誕生日を祝ってもらったり、行事をおこなったりすることを経験するのじゃが、そもそも自分の子どもの共生意識を高めようと思えば、家庭でお誕生日の祝いや行事をおこなえばよいのじゃ」
亀子「お誕生日は祝ってますが、行事って何をすればいいんですか?」
ウ仙「実はお誕生日も子どもに関するお祝いごとの一つでな。生まれて七日のお七夜、一か月のお宮参り、百日後の百日祝い、お食い初め、そして1年後のお誕生日祝いとなる。その後も男の子であれば、5月5日の端午の節句や数え年3歳・5歳の七五三、女の子であれば3月3日の桃の節句や数え年3歳・7歳の七五三に祝うのが伝統と言われておるな。もちろん全部やらなければならないわけじゃないが、子どものお祝いは『自分が生まれてきたことを喜んでくれている』という実感につながるので、共生意識は高まりやすくなるのじゃ」
亀子「なるほど。で行事というのは」
ウ仙「行事は、一年の年始から言えば、1月1日から3日のお正月、1月7日の七草の節句、さっきも出てきた3月3日の桃の節句や5月5日の端午の節句、7月7日(地方によって異なるが)の七夕、9月9日の菊の節句じゃな。クリスマスもそうじゃし、最近はハロウィンも何かするのぅ」
亀子「お正月はお雑煮食べて、初詣行って、桃の節句はひな壇を出して雛あられ食べて、端午の節句は鯉のぼり揚げてと兜を飾ってちまきか柏餅を食べて、七夕は笹の飾りに願いごとを書いて、クリスマスはケーキとチキン食べてと想像がつくんですが、他は何をするんですか?」
ウ仙「七草の節句は七草がゆを食べるのと、桃の節句は三色の菱餅、とくに草餅が重要じゃ。七夕はソーメンを食べて、菊の節句は菊の花びら入りのお酒を飲んだりするんじゃが、すべて行わなければいけないわけではない。これらは無病息災を願って、健康のために行うことじゃ」
亀子「へぇ~。伝統的な家庭行事っていろいろあるんですね」
ウ仙「あとお盆と春分の日、秋分の日には家族でお墓参りにいくのも家族みんなで共生意識を高めるにはいいぞ。ただこの時期も地方によるがな。」
亀子「お墓参りは大事ですね」
ウ仙「こうやってお祝いごとや行事を通して、家族での絆を深めることが、子どもの共生意識につながることをよく覚えておくといいんじゃぞ」
亀子「家族の絆ですか・・・」
ウ仙「家族の絆に何か引っかかるのか?」
亀子「ええ」
ウ仙「じゃ、次回は共生意識に関連した家族の絆について話をしよう」
亀子「楽しみにしてます」
こうして亀子はレベルが上がり、共生意識を高める家族行事のことは身についたが、家族の絆に対する謎が残ってしまった。(つづく)
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