シェア
奏多
2019年4月12日 01:38
【写真で掌編小説】「幸せを頬張る」もったいないことをした。今日の昼食はオムライスを食べてしまった。ダイエットをしているのに、帰り道でこんなに美味しそうなパンケーキを見つけてしまうとは。隣を歩く友人がパンケーキの看板に反応した。「ちょっと寄ってみる?」その言葉に頷く。お店の中は甘い香りに溢れていた。鼻先をくすぐる香りに絆される。友人はパンケーキを頼み、私はアイ
2019年4月11日 01:48
【写真で掌編小説】「吹き抜ける風のように」夜から朝へ、朝から夜へ。移ろいを繰り返しながら進んでいく。ある人は新しい足跡を未来と呼び、振り返った足跡が過去だと言う。けれども、これまでの足跡に、もう一度足跡を重ねてみる。すると、先ほどまであった綺麗な一つの足跡が、不恰好で大きな足跡へと変わった。そうか……。未来は新しい足跡を刻む事ではない。時間を刻む事なのだ。朝
2019年4月8日 18:30
【写真で掌編小説】「黒猫のざわめき商店」「いらっしゃい」振り返ると、ざわめきがあった。道を歩くのは黒猫と僕。「君が言ったのかい?」黒猫は「にゃあ」と応え、ざわめきの中へ向かう。後ろを付いていく。迷いそうなほどの緑に囲まれると、黒い野良猫は木陰に寝転んだ。隣に座りなよ、と言われた気がした。僕は黒猫の横に腰掛け、時間を過ごす。黒猫は自由に毛づくろいをする。
2019年4月7日 02:11
【写真で掌編小説】「思い出の味」 初めて食べたキャンディクッキーはとても甘かった。 これまで、クッキーは少ししょっぱいものだと思っていた。けれど、ステンドグラスのような透き通ったキャンディは甘く、クッキーのしょっぱさよりも勝っていた。 君が必死になって作ってくれたのは、今でも覚えている。 台所を占拠し、何人も立ち入らせないようにしていた。初恋の相手に渡すのだとい
2019年4月6日 14:46
【写真で掌編小説】「三月は待ち遠しく、四月は切ない」 三月の半ばを迎えると、外の桜並木に蕾はついていないかと心待ちにしてしまう。 校舎の窓越しに見る桜は、まだまだ咲く気配がない。 この桜に会える時間は、もうあと少ししかない。 待ち遠しい桜と、幾ばくもない時間に心は惑う。 そして、芽吹きを覚える時間を過ぎ、蕾を開くと、私たちは別れを迎えた。「もうこの季節に出会えることは
2019年4月7日 00:47
【写真で掌編小説】「魔法よ、とどけ」 いつもと同じ。ほとんど変わらない。 君との距離も何も変わらない。 隣を歩いていても、宙を泳ぐ手を掴むことも出来ない。 でも、今日は友達に魔法をかけてもらった。 私はいつもとほとんど変わらない。 左手にそっと添えてもらったネイルは勇気の印。 今日こそ、君に言わなきゃ。 左手を見つめて自分におまじないをかける。 す