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発達障害(ASD)と“いじめ被害”

 自分は、小中学時代や社会に出てから、やたら“いじめ”に遭うなと思っていましたが、どうやら自閉スペクトラム症の特性を持つと“いじめ被害”との親和性が高いことが、何冊かの文献を読んで分かってきました。

 前回紹介した「あたし研究」に出てくる当事者もいじめの被害に遭っていたことを話しています。

 ASDの子どもたちと付き合ってきて、悲しいけど本当によく遭遇するのが、このいじめ問題です。特に、知的な遅れがなく、通常学級で過ごしている子どもたちは、ほとんど全員が何らかの形でいじめに遭っていると思います。そして、その当事者の子どもたちがいじめと気づいていないかもしれない、ということもよく感じることです。ASDの人たちの特性のひとつとして、相手の後ろに隠れている(“後ろに隠れている”ので見えません)考えや意図を読むこと(認知心理学で「心の理論」といわれるものです)が苦手である。ということがあります。ASDの子どもたちは、いじめている側の意図が見えないので、からかわれたりいじめられたとしても、それを「遊んでくれている」と理解してしまう場合もあるくらいです。
 でも、ASDの子どもたちの「心の理論」も彼らなりに発達をします。そしてある日、「あれはいじめられていたんだ」と気がつくこともあります。そうなると、記憶が具体的で鮮明であるだけに(これもASDの人の特性のひとつです)、とても辛いことになります。頭に突然そのことが浮かんでどうしようも無くなって、感情の恐慌状態になってしまう場合もあります。こうなると、PTSD(外傷後ストレス障害)と変わることがありません。

※引用文献「あたし研究」


■発達障害特性といじめ被害の親和性

 いじめとは、慢性的に虐げられ、自己の存在を否定され続ける、苦痛に満ちた体験である。 
 発達特性、特に自閉スペクトラム症の特性を持つ子どもは、特有のぎこちなさや特異な反応、いじめをいじめと認識できない認知特性、受け身の性格、アサーションの乏しさなどのために、いじめの標的になりやすいとされる。

※引用文献「219-227.2021 精神医学(第63巻 第2号)医学書院」


■発達障害と傷つき体験

・いじめのターゲットになりやすい傾向

■過去1ヶ月でいじめを経験したと報告した児童生徒

 定型発達児童…2〜17%
 ASD児童    …44〜77% (van Roekel et al,2010)
  ASDにおけるコミュニケーションの難しさは、同級生との人間関係に影響を及ぼしやすい。話したいことを一方的に話したり、相手の反応や意図のくみ取りにくさから会話が噛み合わなかったり、意図せず相手の気分を害する言動を取ってしまうことで、結果的にクラスで孤立したり、いじめのターゲットになるケースも少なくはない。 

※引用資料:令和2年度 兵庫県こころのケアセンター第3研究室短期研究報告
      兵庫県教育委員会事務局特別支援教育課からの委託研究

■“いじめ”に遭うことが多かった自分への納得感

 文献を読んで、自分がASDであることも、いじめを受けやすい大きな要因だったと改めて思いました。

 自分がいじめに遭っていた当時の状況は、残念ながら発達障害であるという自覚もなく、診断名もありませんでした。かつて所属していた共同体では「障害者として分別」されていなかったためか、文脈上「叩かれることが承認されている弱者」という悲しい文脈、立ち位置だったのかもしれません。

 現在は、障害を開示し、かつ障害者手帳も取得しているので、支援を受けることができる立場になりました。そのおかげか、明確に叩いてくる人はお陰様でいないです。むしろ、叩いてくる人とは疎遠になりましたし、居心地が悪い人と距離をとる術を学ぶことができたのも大きいです。
 安心と安全が保障される、心理的安全性が保たれることの大切さを噛み締めています。

 自分はクローズに戻ることはできないでしょう。共同体から受けた“いじめ”という制裁の経験は、残念ながらもはや「PTSD」と遜色がないと思います。

 現在は、障害名という盾🛡のおかげか、以前より責められる機会が明らかになくなり、障害名と理解のある方々に感謝している日々です。

【参考文献】


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