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自転車旅:アジア

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#南アジア

辺境の谷底にひそむ美しき村、フンザ

辺境の谷底にひそむ美しき村、フンザ

パキスタン北部の山岳地帯は、以前ここにあった王国の名からフンザと呼ばれる。

次々に人が話しかけてくる。
小さな田舎街だが、皆英語を話せる。

パキスタンは1947年までイギリス領インドであった。
独立する際、インドの大部分を占めるヒンドゥー教に対してイスラム教国として分離独立したのがパキスタンとバングラデシュ。

ということで英語の通用度が非常に高い。
買い物をするにも道を尋ねるにも、英語が通じ

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フレンドリーすぎる男どもの国、パキスタン

フレンドリーすぎる男どもの国、パキスタン

毎年おこなわれるイスラムの断食月、ラマダン。
僕は西アフリカ、イラン+中央アジア、そしてパキスタンで計3度、ラマダンを経験した。
イスラム共通とはいえ、地域によって厳格さや盛り上がり方は異なり、パキスタンでのラマダンが最も印象的だった。

ルールは、
日の出から日没までは飲み食い禁止。
日没から日の出まではいくら飲み食いしてもいい。
日没後、一斉に食事が始まる。
家族や仲間で集って食卓を囲み、神に

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大熱狂の国境閉鎖式、因縁のインドvsパキスタン

大熱狂の国境閉鎖式、因縁のインドvsパキスタン

積年の敵対関係にあるインドとパキスタン。
その黒幕は他でもない、宗主国であったイギリス。
民族や宗派を敵対化させる支配構造を意図的につくりだし、本当の支配者に対する不満をカモフラージュする分割統治はイギリスのお家芸であった。

パレスチナにしても香港にしても、そもそもの火種をまいたのは、かの大英帝国。
いまだ解決しえない紛争の数々、張本人は知らぬ顔を決め込んでいる。

独立の際に勃発したカシミール

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イスラムとヒンドゥーが混じり合うシク教の世界

イスラムとヒンドゥーが混じり合うシク教の世界

国境を越えると、そこはインドだった。

アムリトサル。

インドといえばヒンドゥー教だが、ここはシク教の本拠地。
シク教はイスラムとヒンドゥーのハイブリッド。
一神教のイスラムと多神教のヒンドゥーを融合させてしまったトリッキーな宗教。
シク教は一神教で、反カースト、禁酒、禁煙。

シク教徒はインドの人口のわずか2%だが、商才に長け、海外に進出して各地で影響力を持っている。
僕も世界各地でシク教徒に

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インドのチベット、ラダック

インドのチベット、ラダック

標高3200m。
一変して、仏教圏。

中国と接するインド最北部のラダックは、チベット仏教。
仏教は、発祥地であるインドでは広まらず、アレンジされながら中国や東南アジアへと伝播していった。
チベット文化圏は主にヒマラヤ系の山岳や高原の閉ざされた土地で、原初的な仏教に近いものが継承されている。

中国のチベット自治区は漢族に侵されて存続の危機に瀕しているが、ラダックにはより純粋なチベット仏教が今もあ

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アジアの超絶僻地ラダック、標高4500mに浮かぶ天空の湖

アジアの超絶僻地ラダック、標高4500mに浮かぶ天空の湖

標高4800m。
まさかの雪。

まだ9月だよ!?

決断を迫られた。
ラダックが走行可能なのは夏季のみ。
冬季は道路閉鎖されて陸の孤島となり、アクセスは空路のみとなる。
これは一時的な雪なのか、それとも冬の到来なのか。
本格的に降って積もるのなら、今のうちに撤退するのが懸命だ。
退くべきか、進むべきか…

・・・特攻だ!

初めての標高5000m。

気圧は550hPa。
体力の消耗がハンパない

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ガンジスから流れ出るヒンドゥーの世界

ガンジスから流れ出るヒンドゥーの世界

ラダック最後の街、マナリ。

あ、、、明るい!
夜なのに昼みたいだ。
二度ほど短い停電があったものの、まばゆいばかりの大都会。

宿で、12日ぶりに鏡で自分の顔を見た。
きったないヒゲヅラになってて愕然とした。
日焼けと乾燥で鼻の皮がボロボロにむけて、下唇はパッカリ割れていた。
服を脱ぐと、もうガリガリのヒョロヒョロ。
痩せすぎだ。

屋台とレストランを何軒も渡り歩き、バキュームのごとく喰らい尽く

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デリーで感じたインドのクリーンさと健全さとポテンシャル

デリーで感じたインドのクリーンさと健全さとポテンシャル

首都デリー。

長きにわたって宗主国イギリスの食い物にされてきたインド。
今やそのGDPはイギリスを抜いて世界5位。
2030年までに人口は中国を抜いて世界一の人口大国に、GDPは日本を抜いて世界3位の経済大国になるとの予測。
ポテンシャルしか感じない。

この国にはビーフカレーもビーフバーガーもありませんよ。

自由の国、インディア。

むき出しのインドで死ぬほど見つめられ続ける日々

むき出しのインドで死ぬほど見つめられ続ける日々

旅行者皆無、観光要素皆無、完全ローカル仕様のインドの田舎へ。
大都会でもなく大自然でもない、むき出しのインド感。

踏切。

誰も守ってねー。

しかし、待てど暮らせど列車など来ないし踏切も開かないので、結局僕もくぐった。
車はどうするんだろうな。

人々は、生まれて初めて外国人を見るかのような目で僕を見る。
終始、無言無表情、ただジッーと僕を凝視する。

踏切待機中も、かれらは1秒たりとも僕から

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ネパールの美しき農村と美しき人々

ネパールの美しき農村と美しき人々

ネパールといえば世界の屋根ヒマラヤだが、まだインドに近い南部の平野部は、民族言語宗教ともにインドとほぼ同じヒンドゥー文化。

しかし明らかに雰囲気が違う。

僕を見ていたずらっぽく笑う少女。

年少の子が僕の自転車に触ろうとしたら、年長の子がやめるように注意した。

なんだかインドと全然違うぞ。

とある家に招かれて、ごちそうになった。
近所、家族、親族が続々と集まってくる。

イギリス領インドは

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サイクリング・ヒマラヤ、自転車で登ってみる標高5416m

サイクリング・ヒマラヤ、自転車で登ってみる標高5416m

標高800m、ネパール第2の都市ポカラ。

ヒマラヤのアンナプルナ山系を一望。

マチャプチャレ(6993m)。

神聖な場所とされて登頂は禁じられており、未踏峰。

ポカラを基点としてアンナプルナの山々をぐるっと周る「アンナプルナサーキット」をサイクリングする。
ヒマラヤを間近に見ながら走れる稀有なルート。
一周425km、その一部がトレッキングコースとなっているが自転車での通行も可。

草が歩

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世界最大の物体エベレストを見に行く、そして直後に襲ってきた恐怖の高山病

世界最大の物体エベレストを見に行く、そして直後に襲ってきた恐怖の高山病

エベレストを見たい!

首都カトマンズを拠点として、サガルマータ国立公園内を歩く「エベレスト街道」と呼ばれるルートがある。
しかし残念ながら、自転車での通行はムリがあるようで、トレッキングすることにした。
たまには歩くのもいい。

いつもの如く、標高が上がるとそこはチベット。

アンナプルナ・サーキットと同様、このルートも地元民の生活道路となっている。

シェルパの日常。

高価な装備をそろえて身

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スリランカ、受難の最中でも平穏さを失わない人々の気質

スリランカ、受難の最中でも平穏さを失わない人々の気質

スリランカ民主社会主義共和国。

最大の都市コロンボ。

モワッと熱帯の湿気に包まれる。
風景は、インドまたは東南アジア的。
もちろんキチガイクラクション文化圏だが、人々からは尖ったものが感じられない。
穏和な国民性であることがすぐにわかる。

偶然にも、独立記念日。

1948年、イギリスより独立。
当時の国名はセイロン。
スリランカという国名は1972年から。

長らくイギリスの植民地だったた

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スリランカの動物たち

スリランカの動物たち

路上で野生と出くわす、この瞬間がたまらない。

アジアで野生のゾウを見るのは初めて。
この道路はミンネリア国立公園に接しており、巨大なフンがそこら中にあり、出くわす予感はあった。

人間とゾウの共生はそううまくいかない。
スリランカでは毎年多くのゾウが人間によって殺され、多くの人間がゾウによって殺されており、その件数は年々増加している。

「elephant attack in sri lanka

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