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ガンジスから流れ出るヒンドゥーの世界

ラダック最後の街、マナリ。

あ、、、明るい!
夜なのに昼みたいだ。
二度ほど短い停電があったものの、まばゆいばかりの大都会。

宿で、12日ぶりに鏡で自分の顔を見た。
きったないヒゲヅラになってて愕然とした。
日焼けと乾燥で鼻の皮がボロボロにむけて、下唇はパッカリ割れていた。
服を脱ぐと、もうガリガリのヒョロヒョロ。
痩せすぎだ。

屋台とレストランを何軒も渡り歩き、バキュームのごとく喰らい尽くす。
エネルギーがダイレクトに体に吸収されていく。
こういう時の僕は、いつまでも無尽蔵に食べ続ける。

チャパティは、僕のもとを離れ、マナリの闇へと消えていった。
小さな街なので、歩いているとチャパティに出くわす。
ちゃんと僕のことを認識してくれるが、もう後をついてくることはない。
出発する前日にも会ったが、その時はもう、僕のことは半分おぼえているが半分忘れているような、そんな反応だった。
メリットのない主従関係なら、記憶から消されていくだろう。
マナリで自分の縄張りを確保し、この街の無数の野良犬たちとうまくやっていけることを願う。
それともまた、通りすがりの旅人についていって、別の街に移動していくのだろうか。

天国から下界へ。
交通量激増。
狂気のクラクションと排気ガスで満ち満ちた地獄。

クラクションは1日1万回ぐらい鳴る。
いや1万回というのは誇張だが、感覚的には1万回とでも百万回とでも言いたくなるぐらい、ほとんど鳴りっぱなしの状態。
誰に対して、何の目的で鳴らしているのかもわからない。
経済レベルが低い国ほどノイズが増大する。
今やインドはそこまで貧しくはないにもかかわらず、世界最悪のクラクション大国。

シク教→イスラム教→チベット仏教とめまぐるしく変わり、ついにヒンドゥー教の世界へ。

ガンジス川。

梵我一如。
わたしは宇宙。
宇宙はわたし。

ハリドワール。

「ガンジス」は英語名で、インドでは「ガンガ」と呼ばれる。
シヴァ神の住むヒマラヤからいくつもの支流が流れ落ちて平野部に集まり、ここハリドワールからガンジス川が始まる。
出会った人から、「インドのpolitical capitalはデリー、commercial capitalはムンバイ、そしてインド人にとってのspiritual capitalはハリドワールだ」と聞いた。

インダス文明終焉後、BC1500年頃に北方の中央アジアから遊牧民のアーリア人がインドに侵入し、もともとインドに住んでいたドラヴィダ人を征服しながら南下していった。
現在のインド人はアーリア人とドラヴィダ人の混血であるが、南に行くほどドラヴィダの血が濃くなっていく。

アーリア人がドラヴィダ人を征服していく過程で形成された身分制度がカースト。
ドラヴィダ人がすでに免疫を獲得している感染症に対してアーリア人は免疫がなかったため、感染症対策としての隔離がカーストの起源だといわれている。

ちなみに「カースト」という語はポルトガル語起源。
大航海時代にインドに到達したポルトガル人が名付けたもの、つまり西側からの呼称。

権力者が国をひとつにまとめるための手法の例。
・武力
・宗教
・王政
・仮想敵国
・身分制度

良かれ悪しかれ、インドの風土にはこの身分制度がフィットし、数千年にわたって均衡を保ってきた。

BC5世紀に発祥した仏教はカーストを否定したが、すでに定着した社会構造を崩すことはできず、インドでは仏教は廃れた。
現在、カーストは憲法上は撤廃されているが、社会の根幹にはまだ存在している。

外国人は上位カーストなのか、田舎の宿やレストランではVIP扱いされることがある。
英語を話せる上司がわざわざ出てきて丁重に歓迎してくれて、雑用の従業員はアゴでコキ使われてたりする。

ヒンドゥー教は、創始者がいない土着の民間宗教。
カーストを基盤とする生活様式、輪廻や因果の世界観を持つ多神教。
信者は11億人で、キリスト教、イスラム教に次ぐ世界3位の規模。
インドでは人口の8割がヒンドゥー教を信仰している。

ガンジスへの河川崇拝、聖牛崇拝、ヨガなどもヒンドゥーの特徴。

また、あらゆる生命をリスペクトする不殺生の考えから、ベジタリアンが多い。
都市部ではタンドリーチキンなどの肉メニューもあるが、田舎に行くほどベジタリアン度が高まり、タンパク質はオムレツが主流。
肉食の人も、食べるのはチキンとマトンぐらいで、牛と豚は食べない。
環境保護や健康を目的とした欧米のベジタリアンとは思想が異なる。


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