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サマルカンド(ウズベキスタン)2019


Samarkand サマルカンド

 サマルカンド、この言葉の響きには悠久たるシルクロード時代に栄えたオアシス都市で、昔にはラクダの行き交う中世の街並み、ヒジャブを被った女性が市場で野菜を声高に交渉し、ウズベク帽の男性がポロフやシャシリクといった料理の前でひっきりなしに客寄せ声を張り上げている、そんなイメージを受けるシルクロードの代表格として世界にその名を轟かせている。  

 現在の建物そのものは中世であるにもかかわらず、観光地化の波はここにも押し寄せ雰囲気は中世どころかテーマパークさながらになってしまったようだ。レギスタン広場は自撮り棒を構えた人であふれ、入場はチケット制になっている。こんな将来をもしウルグベクが知っていたらあまりにもの違いに卒倒するのではないだろうか。

 時代の流れとは無情にも昔ながら雰囲気は失われ、近代的観光地として大人気となっている。20年ほど前に来た時とはかなりの違いだ。現在ではインスタ映え的に美しい建物を自分と一緒に撮るだけでなく、コスプレの方も大盛況となっている。サマルカンドに訪れたのなら、レギスタン広場とシャーヒ・ズィンダ霊廟の2大歴史遺産はガイドブックや色んな人のブログで出てくるであろうから、そちらを参照していただくとして郊外のウルグットと春の風物詩であるスマラクを紹介してみたい。


Urgut ウルグット

 こちらは郊外の巨大市場。昔は青空市場だったような気もするが、今は超巨大な屋根もある近代的市場へ変貌していた。スザニで有名だったはずだが、現在は地元のスザニよりもタジキスタンから入ってくる安くていい布地の一大販売拠点となっているようだ。野菜や果物などの食料や日用品もあるが、なんといっても布地が半分以上を占めそうなほど布地無双状態となっている。一応飲食店もあるにはあるが、規模を考えるとやや小さい。ここで食事する人はそう多くないのかもしれない。


スマラク

 ウズベキスタンでは春のノウルーズの時期にスマラクという甘い麦芽ペーストを作る習慣がある。麦芽をフレーク状にして水を加えた麦芽汁を大窯で丸一日煮詰め茶色のペーストにしていく。ほとんど一日がかりの夜を徹しての作業となるので親類などが集まって交代しながら掻きまわして行うのだ。こうやって身内が集まることによって一族の団結も深まるのであろう。みんなが集まるので、踊ったりして楽しんだりもするという。

 サマルカンド近郊の家でスマラク作りを見学できた。見学している間にも親族が何人も遊びにやってきていた。ノウルーズ期間中はこうやって親族などが自然と集まり作業するという伝統が残っている。今の日本だと何かと挨拶回りだけで終了しそうな正月ではあるが、こうやってスマラク作りやノウルーズを見ていると正月というのは親族や村人とのコミュニケーションの上で成り立っているのだなと思い知らされる。現代化によってウズベキスタンでもそれなりに個が重要視される時代も来るだろう。タシュケントではこのスマラクが市場で売られている。タシュケントでは親族などが集まることが難しくスマラク作りが困難だからという。他のエリアでは市場ではなくほとんど自宅で作る。いつか段々とタシュケントだけでなくほとんどの街でスマラクというものは「家で作るもの」ではなく「市場で買うもの」と変遷していくのかもしれない。そのような時代はウズベキスタン全土ではまだまだ先と思うのだが、タシュケントだけという現象がいつまでも続かないだろう。なおタシュケントの市場のスマラクは結構甘い。しかしサマルカンドで食べたスマラクはそれほど甘くない。なぜこのような違いがあるのかというと大都会のタシュケントの場合は市場で売り出す関係上砂糖などを加えて甘みを付けて商業的に売れるようにしているからだという。その一方村の自宅などで作られているスマラクは麦芽のみなのでほのかな甘みでこちらの方が本物という。甘いスマラクは忙しくなった都会の人々のハートには甘いのかもしれないが、失われつつある人々の絆のためにはほのかに甘い程度の方がいいのかもしれない。

こちらはタシュケントの市場で売られているスマラク



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