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数値解析法の紹介 〜有限要素法について〜

以前に私の仕事紹介を書きました。数値解析技術を利用した物理現象のシミュレーションです。それを実現するソフトウェアのユーザーサポート(品質管理)が主な業務です。

この数値解析技術の核となるものが「有限要素法」になります。高度な数学の理論を駆使するため、なかなか内容を理解することが難しくて、初めて触れた時は色々と大変でした。

現在は業務に取り組んで10年目になるので、それなりに理解できていますが、初めて聞くような人に説明しようとすると、とても苦労します。

今回はそんな「有限要素法」をなるべく分かりやすく説明します。数学的背景が必須であるため、限界もあることをご承知頂けると幸いです。

有限要素法の概要

FEM(Finite Element Method)とも言います。CAEの核となる技術です。

先ほどシェアした記事でも簡単に説明しています。元々は数学的な背景(事情)からスタートした技術ということです。

有限要素法:微分方程式を近似的に解くための数値解析手法。解析対象を微小な構成要素で分割して、各要素の条件を連立方程式で近似します。連立方程式を解くことで各要素の数値解が求まり、最終的に全体の挙動を確認します。

工業分野で利用するにあたり、単位系を考慮した「物理量」として定量的に求めることに特化しています。製品設計における事前検討として、詳細に分析するのに利用されています。

まず、製品形状(モデル)を定義して、下図のように小さな「要素」に切り分けます。次に、強制荷重や固定端などの物理条件を「境界条件」として定義して、各要素の条件を連立方程式の形に落とし込みます。最後に連立方程式を解くことで、各要素の未知数を求めます。

有限要素法の用途

簡単なモデルの場合には手計算でも可能ですが、製品形状となるとコンピューターによる計算処理に任せた方が圧倒的に便利です。ワンステップの計算に限らず、時間経過で変化するような事象を追うこともできます。

また、ソフトウェアの性能を確認するために、あえて手計算も可能なモデルで計算を実施して、解が一致するか試すこともあります(私の仕事でこのような試行をする時があります)。

有限要素法は数値計算技術なので、現場では定性的な分析だけでなく定量的な分析が可能です。例えば、製品に特定の負荷がかけられた際に、製品が破損しないかどうかを確認することができます。

解析精度を担保するために

設計者の立場で有限要素法による数値解析(シミュレーション)を行う際に大事になるのが、シミュレーションが現実の挙動をきちんと再現できているかということです。計算精度が十分かということ。

十分に細かく要素分割ができているか、材料の変形過程を表す構成則の選択が適切か、境界条件の設定が適切かなど、解析の精度を担保するためのノウハウがいくつかあります。

要素分割については、細かくするほど計算処理が膨大になるので、一般的に計算時間とトレードオフの関係にあります。その辺のさじ加減も設計業務においては大事な判断基準になります。

私の仕事はソフトウェアをお客様に利用して頂く立場なので、こうした様々な観点からの利便性を追求しています。すなわち、短時間で正確な計算を行うこと。そのための新技術が今でも次々と開発されているのです。

おわりに

今回は有限要素法(数値解析技術)について説明しました。元は微分方程式を解くための手法でしたが、工業分野では自らが注目する物理事象を定量的に評価するためのツールとして利用されます。

近年では製品形状に留まらず、材料特性や境界条件に対する複雑さが増しているため、計算負荷(コスト)に強い技術が要求されています。トータルで見たときのコストパフォーマンスに優れたソフトウェアをユーザーは欲しています。

そういう意味では、有限要素法は古典的な手法ではあるものの、まだまだ解決の余地のある数値計算技術であると言えるかも知れません。

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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。なるべく毎日更新する気持ちで取り組んでいきます。あなたの人生の新たな1ページに添えたら嬉しいです。何卒よろしくお願いいたします。

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