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記事一覧
【地中海ひとり旅】彷徨いカプチーノ
「暑い、暑い・・・」と呟きながら通りを彷徨っていたら、ひとつのカフェに行き着きました。相変わらずの、白と青。狭い入口の奥からは日が差し込んでいて、開けた奥行きを感じます。特に喉が渇いているわけでもなかったし、疲れているわけでもなかったのですが、導かれたように、わたしはそのカフェに入りました。
残りひとつだった日陰の席に腰掛けて、カプチーノと、甘いお菓子を注文しました。左耳から聞こえてくるフラ
【地中海ひとり旅】フロリアナにあるホテル
バレッタから少し外れたところにあるフロリアナという地区には、昔ながらの集合住宅がいまでもたくさん残っていて、目を瞑って通りで深呼吸をしてみると、建物に反響する微かな声や朝ご飯の匂い、地中海の潮の香りなんかが全身に入ってくるように感じます。
昨日の深夜に船で入国したわたしは、船着場からなるべく近い宿をと思い、このフロリアナにあるホテルを選びました。結果として、それはそれは良い選択だったのでしょう
【地中海ひとり旅】赤い服を着た少年
「ねえ、どこから来たの?」
赤い服を着た少年は、少し訛りのあるフランス語で、わたしに話しかけてきました。首を傾げるわたしを見て、「ああ、このアジア人はフランス語をそれほど理解できないのだろう」と悟ったのか、これまた訛りのある英語で、「どこから来たのってば?」と再度わたしに尋ねます。
「日本、日本っていう、東アジアにある国だよ。」
少年がわたしの言ったことを理解したのかはわかりませんが、い
【地中海ひとり旅】商売上手の店主
ビーチの入口付近にある、オレンジュース屋さん。陽気な店主がひとり、ひたすらオレンジを搾っています。
「あんたも一杯どうだい。美味しいぞ」露店をのぞき込むわたしに店主はそう言いましたが、少しでも節約をしたかったわたしは、我慢することにしました。実際、少し高かったですし。
「まあいいさ、あと10分後くらいにはきっと飲みたくなるぞ」店主の言葉を背中で聞いて、わたしは目的のビーチへ向かいました。
【地中海ひとり旅】セント・ポールズ・ベイの常連さん
「このホテルの常連なんだよ、わたしは。」
そう言って食パンにチョコクリームを塗る赤ジャージのおじさんの横顔は、ドヤ顔というよりは、どちらかというと、退屈そう。セント・ポールズ・ベイの海岸沿いにあるこのホテルは、2月というオフシーズンもあってか、ちょっぴり閑散としています。いまのところ、朝食会場にはわたしと赤ジャージのおじさんだけ。
「あなたはどこから?」「そっちはどこから来たんだい?」旅人
【地中海ひとり旅】ドアというものはとても不思議なもので、
旅先でドアを見かけると、「このドアの向こうにはいったい何があるのだろう、気になるなあ、気になるなあ」って、無性にドアに取り憑かれてしまうことがたびたびあります。
ドアというものはとても不思議なもので、たった数センチの厚さで、お星さまから見ればおよそ同じ場所であるはずなのに、こちら側とドアの向こう側ではまるで別世界なのではないかと、そう錯覚してしまうことがあります。
ここチュニスには、ドア
【地中海ひとり旅】チュニジアのとあるビーチで
「わたしはいま旅をしている。」そう最初に自覚した旅は、おそらく小学3年生の時の旅だったと思います。その頃よく、放課後おじいちゃんちに寄っては、おじいちゃんが若かりしころにしたという旅々の話を、日が暮れるまで聞いていました。でもおじいちゃん、「旅はいいぞお」って言ってみたり、一方で「旅なんてするもんじゃあない」なんて言ってみたり。「おじいちゃん、結局のところ旅が好きなの?嫌いなの?」って、子どもな
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