Don't ever sell your soul, kid!
今日はいろんな意味でものすごく寂しくなってしまった一日だった。
知り合いの15歳になったばかりのLちゃんと午後ゴルフのラウンドに行ったのだが、突然大泣きをされて困ってしまったのだった。
頑張り屋の彼女は今年、ハンデを8から5に下げたツワモノ。
それでも納得がいかず、毎日練習ばかりしているそうだ。今年中に「ハンデゼロ」を目指すとも公言した。
もちろん、まわりはドン引き。
中には彼女からキョリを置く人もいる。
才能はもちろんあるし、背丈も高くて恵まれている。手足もメチャ長くて、小鹿のようだ。
大きなアークを活かしたきれいなスイングが彼女の持ち味で、ドライバーでは楽に200m以上の飛距離を出してくる。
それでもあまりの彼女のストイックさに、大人まで白い目で見る始末。
性格まできつくて怖い。
周りの大人たちにも手厳しい。
子供なので、彼女には誰にも逆らえない。
独りぼっちの彼女が寂しさを感じていないか心配で、私は彼女をラウンドに誘ってみたのだった。
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単純な私は彼女のスーパープレーを見て「すごいね、すごいね!」って楽しく回っていた。
でも途中難しいグリーンの上で、彼女は3パットを叩いた。表情はみるみる険しくなり、大粒の涙をポロポロとこぼして下を向いてしまった。
自分の中の悔しさに対峙できないところは、まだ若い証拠。やっぱり中身はまだ子供なのだろう。
ちなみにこれは、ただのプライベートなラウンドだ。大事な試合ではない。
「人間は機械じゃないんだよ。顔をあげようよ。大丈夫だよ」って私は言った。
涙を流しながらも、「そうだね」ってつぶやく彼女。
次のホールではまた気合を取り戻し、パーを取って来た。
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彼女の両親はものすごく厳しい。
高校に行く彼女は、勉強の合間を縫ってはテニスとハンドボールも習っている。
遊ぶ暇がない。
遊ぶ時には必ず両親が車で送り迎えする。相手は親が選ぶ。
ゴルフが上手な同い年のコが周りにいないのもたぶん、彼女がきつくなってしまった理由なのだろう。
年上とばっかりラウンドしている。
お泊りはもちろん厳禁。
夏に私たちと一緒にゴルフ合宿をする予定だったが、彼女は許してもらえなかった。スポーツの他に勉強もしなくてはならず「時間がない」と15歳の子供が言う。
スポーツは精神を鍛えると言うけれど、人間の性格をも怖いくらい厳しくしてしまう。
それに輪をかけて、両親も厳しい。
それって健康なの?普通と言えるの?
今日私が一緒にラウンドしたLちゃんは、数か月前の彼女とはまるで別人だった。
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今ドイツ全土で大きなニュースになっている事件がある。
14歳の女の子がSNSで知り合った29歳の男に誘拐され、強姦されたのち、とある湖に3日間放置された。
犯人は捕まったのだが、自白はまだしていないらしい。
開放的だった彼女の実家。
周りが田舎だというのもある。
彼女は友達も多く、よく出かけた。いろんなフェスに行ったり、夜に友達と会うこともあったという。
親は何も言わなかった。
別に放任主義とかでなく、ドイツの家庭では当たり前。両親は子供を子ども扱いすることがめったにないし、子供の意思と自由を何より尊重する。
彼女の親が決して彼女に興味がなかったわけではない。
愛情を持って、自由に育てられていたんだ。
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どのぐらい厳しく、どのくらい開放的に子供と向き合えばいいのかわからなくなってきた。
子育ては厳しすぎてもいけないし、かといって「緩すぎ」ても何が起きるかわからなくて怖くなる。
子育てに王道はないし正解は一つだけじゃない。
もちろん子供一人ひとりの性格によって育て方は違うし、生まれた環境や育った環境にも依る。
でもこういう悲惨なニュースを聞くたびに、やっぱり厳しい方がいいのかなって思っちゃう。
自分の「日本人流」子育てもあながち間違ってはいなかったのだと、ホッとしてしまった。
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ただLちゃんがもう少し大きくなった時、自分の意思で何かをする自由が訪れるだろうか?
親が彼女をずっとがんじがらめに縛っておくことはできない。
とことん自由にしてあげるのも愛情だし、
全てにおいてコントロールすることも愛情。
愛情の形はさまざまだ。
ただ本来のかわいらしい彼女を取り戻すかといえば、たぶんそれはもうない。
きっと今日と言う日が、私が彼女とラウンドして「もらえる」最後の日だったのだろう。
そう思うと、まるで自分の子供がどこかに行ってしまうような変な感情が湧いてきた。
ああ、他人の子供とはいえ、切ないもんである。
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