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現役戦略コンサルタントが選出!使えるフレームワーク3選&使えないフレームワーク3選

戦略コンサルタントのアップルです。

ビジネスの世界ではフレームワークと呼ばれるものがたくさんあります。たくさんありすぎて、すべてを覚えて使うのは現実的ではありません。フレームワークを有効活用するには、使えるフレームワークを厳選し、それをビジネスの現場で積極的に使っていく姿勢が大事です。

つまり、使えるフレームワークと、使えないフレームワークとを仕分けることが大事になります。

そこで、今回の記事では、戦略コンサルタント歴約10年のアップルの経験を踏まえ、使えるものと使えないものを3つずつご紹介します。「なぜ使えるのか?(使えないのか?)」という理由とともに解説しますので、ぜひ参考にしてください!

<想定読者>
・フレームワークをビジネスの中で使いこなしていきたい方(経営者、事業企画、事業開発、マーケティングなどの担当者)
・単純な興味としてフレームワークの使える/使えないの理由を知りたい方

【使えないフレームワーク3選】

使えないフレームワークからご紹介していきます。いずれも少なくとも戦略策定においてはほとんど使えないものです(使ったことがない、もしくは使っているのを見たことがあるが使えなさそうだった)。”使えない理由”に着目してお読みください。

 ①SWOT

かなり有名なフレームワークなのでご存じの方も多いと思います。スウォット分析と呼びます。

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縦軸に内部環境と外部環境、横軸にプラスとなる要因とマイナスとなる要因、掛け合わせて4つのカテゴリに様々な要素を分類していくというフレームワークです。

このフレームワーク、アップルは戦略コンサルティングの仕事で一度も使ったことがありません。

たまに、クライアント側でSWOT分析をしているのを見かけることはありますが、その分析から何か示唆が得られたのを見たこともありません。結局、このフレームは、要素を洗い出すのには一定の意味があるのかもしれませんが、洗い出したところで「So What」になりがちなんですね。有名だからこそつい使ってしまいそうなフレームですが、これを起点に戦略が見えてくることはまずないので、使わない方がいいと思います。

 ②マーケティングの4P

これも非常に有名なフレームワークです。マーケティング施策を考えるときに、Product(製品)、Price(価格)、Promotion(広告宣伝)、Place(流通)の4つの観点に分解して考えるというフレームワークです。

アップルもマーケティングに関するプロジェクトはいくつもやりましたが、このフレームワークを使ったことは今のところないです。

この業界に入って間もない頃、あるプロジェクトでマーケティングの4Pを使ったスライドを1枚だけ作ったことがありますが、そのプロジェクトのパートナーから「バカっぽいから二度と使うな。こんなスライド客前に出せねえぞ」と一喝すらされました(笑)。

なぜ使えないのかと考えてみると、これも結局マーケティングのHowを分解しているだけで、これを使ったからといってマーケティング戦略(What+How)に対して示唆が出てこないからだと思います。マーケティングの戦略が出来て、それを戦術に落とすときに抜け漏れがないかのチェックくらいにしか使えないのではないかと思います。

 ③マッキンゼーの7S

天下のマッキンゼー様が作ったフレームワークです(こう書くとアップルがマッキンゼー所属ではないことは明らかになってしまいますが(笑))。これもビジネス本やフレームワーク本ではよく見かけます。ですがこれも使ったことはありません。

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まず、7つというのが多すぎると思います。コンサルタントは物事を3つや4つにまとめる癖がありますが、これは人間というのは3つか4つくらいのことしか一度に覚えられないからです。3Cも、マーケティングの4Pも、3~4つだからこそ一発で覚えられます(覚えられることと使えることは同義ではないですが)。

改めてこの7つをみても、「うーん、また確かに要素分解したらこの7つはあるだろうが、だから何なんだ?」という疑問がふつふつとわきますね。

【使えるフレームワーク3選】

さて、ここからは使えるフレームワークに入っていきましょう。使えるフレームワークはたくさんあります。アップルが実践的によく使うものでも10個くらいはあります。以前の記事で紹介したWill-Skillマトリックスも自分のキャリアを見つめなおすときや部下のマネジメントなどに使えます。こうした実際に使えるフレームワークは、その使い方とともに一つのシリーズとして定期的に紹介していこうと思っています。

ここでは経営戦略、事業戦略、競争戦略の策定にフォーカスしたときに使えるものを3つご紹介します。

 ①3C

最もよく知られたフレームワークです。Customer(市場)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つの観点で企業を取り巻く環境を分析し、経営戦略や事業戦略を導きだしていくものです。

孫子の言葉で「敵を知り己を知れば百戦危うからず」というのがありますが、敵を知りというのが市場分析と競合分析、己を知りというのが自社分析に対応します。このどれか1つでも欠けてしまうと、実効性ある戦略は描けないですし、その結果事業はうまくいきません。

そういう意味で、この3Cというフレームは戦略策定において必須であり、常に戦略コンサルティングのプロジェクトの中でも使っているフレームになります。

ちなみに、アップルの経験上、3C分析を同時に走らせるのではなく、順番に進めるのがポイントです。

フレームワークというのは「並列」に見えるので、初心者の方は特に例えば3Cだったら市場・競合・自社の分析を同時に走らせようとしてしまいますが、これは効率的ではありません。なぜなら、3つの分析は独立ではなく、相互に絡み合っているからです。独立に分析をして後でがっちゃんこしようとしても、一つの戦略ストーリーにならず、やった分析のうち大部分が無駄になるということが発生します。

分析の順番のセオリーは次のイメージです。

市場分析→自社分析→競合分析

まずはどの顧客のどういうニーズを狙いに行くのか。つまりどの市場がおいしそうなのか。ここを決めないと戦略はぼやけるので、ここを市場分析で固めます。その上で、自社分析を通じてそこを攻略する上で自分たちに武器はあるのか?を明らかにし、最後にその武器は競合との比較でも強いといえるのかを競合分析の中で明らかにしていくのです。

この順番で分析を重ねていくと、勝てそうな戦略の骨子が浮かびあがってきます。

・3C分析は戦略策定の必須フレームである
・分析の”順番”がミソである

この2点をぜひ覚えておいていただければと思います!

 ②アドバンテージマトリックス

ちょっとマイナーなフレームワークですが、これはかなり示唆に富む(=使える)フレームワークです。ボストンコンサルティンググループが開発したフレームワークです。

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競争要因の数という軸と、優位性構築の可能性という軸(規模の経済が働くかどうかとほぼ同義)で、業界や事業を4つのタイプに分類するフレームワークです。

これがなぜ使えるかというと、事業のタイプに応じて競争戦略のセオリーが決まってくるからです。

例えば、左上の分散型事業だと、「差別化したニッチ戦略」がセオリーになります。ラーメン屋や地域密着型の商店などがこのタイプに該当します。

また、右下の規模型事業だと、価格競争が基本なので、如何に資本を大規模に投下して規模の経済を働かせるかという「パワーゲーム」がセオリーになります。

このように事業戦略や競争戦略に示唆が得られるからこそ、ものすごく使えるフレームワークなのです。

ちなみに、このアドバンテージマトリックスはポーターの基本戦略とも密接に関係しています。ポーターの基本戦略については以下の記事で丁寧にまとめておりますので併せてご覧ください。

ポーターの基本戦略はかなり使える ~戦略コンサル流の使い方とレシピ~

 ③イノベーター理論(市場のライフサイクル)

これはフレームといってよいのかちょっとわかりませんが、非常に実践で使えるものとしてご紹介しておきます。市場を「時間軸」で捉えたフレームワークです。

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どんな市場でも盛衰があります。イノベーションをきっかけに市場が立ち上がり、いろんなプレーヤーが参入することで拡大し、やがて成熟期を迎え、衰退していく。こうしたいわば「ライフサイクル」があります。

このライフサイクルに着目したフレームがイノベーター理論です。

イノベーター理論は市場に入ってくる顧客に着目しているため、市場のライフサイクルに応じて顧客の嗜好性や属性がどのように変わっていくかを分類しています。

市場の立ち上がり期に入ってくる「新しいもの好きのイノベーター」、市場が成熟したタイミングで参入してくる「保守的なレイトマジョリティー」、などといった感じです。

このように、市場のライフサイクルに応じた顧客の属性の変化という観点も有効ですが、もっと大事なのは市場のフェーズによって戦略のセオリーが変わってくるということです。つまりこのフレームも戦略への示唆がある点が使えるポイントになります。

市場の拡大期には差別化戦略が有効になります。なぜなら市場が拡大しているのでうまく差別化すれば先行プレーヤーに勝てるからです。一方で成熟期になると差別化の余地がほぼなくなるので、価格競争力、つまりコスト優位性をどう確立するかが戦略のポイントになります。

まとめ

さて、使えるフレームワーク・使えないフレームワークを、アップルの長年の戦略コンサルティングの経験をもとにご紹介してきました。

【使えないフレームワーク3選】
①SWOT
②マーケティングの4P
③マッキンゼーの7S

【使えるフレームワーク3選】
①3C
②アドバンテージマトリックス
③イノベーター理論

こうやって並べてみると、使えるフレームワークは何等かの理論に基づいているものが多い傾向があるのかもしれません。アドバンテージマトリックスにしても、イノベーター理論にしても、経営学の理論がベースとなっています。理論から導き出されたフレームワークです。

一方でマーケティングの4Pなどは、単なる”分類”のフレームでしかありません。抜け漏れがないかをチェックするチェックリストとしては使えますが、それ以上の価値はなさそうです。

いずれにせよ、フレームワークはあくまで「道具」です。使う側に目的があり、その目的の達成に役立ってはじめて使えるフレームワークと言えます。

・常に目的を持ちながら使う(無目的にフレームワークをこねくり回すのは危険)
・フレームワークを使って整理や分析をしたときに、そこから何か示唆が得られるものを使う

この2点がとても大事だと思います。

今回はここまでです。

「ここに出てこないこのフレームワークはどうなのか?」
「いやいや、マーケティングの4Pだってこう使えば使えるぞ!」

といった質問、異論などがあれば、ぜひコメント欄にお寄せください。アップルなりの見解を回答させていただきます。

最後までご覧いただきありがとうございました!

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