はぐはぐ犬 1
はぐはぐ犬は一人暮らしです。
山田さん家の庭にある犬小屋に暮らしています。
犬が人間の住んでいる家の敷地内に住んでいたとしたら大半の犬はその家のペットとして生きますが、はぐはぐ犬は違います。
はぐはぐ犬は山田さんちの坊ちゃんが3歳の寒い寒い冬の日に拾ってきたのです。普通子供が子犬を拾ってきて、飼ってもよいとなったらそのお家のお父さんが張り切って犬小屋を作るものですが、はぐはぐ犬は違いました。
自立心がとても強かったはぐはぐ犬は自分で山に行き木を拾ってきて、山田さんちのパパさんに大工道具を借りてたった一日で自分の小屋を建てたのです。自分が今よりも大きくなることも分かっていましたから、少し大きめに建てて、そして春になったら小屋の周りにお花が咲くように山田さんちのママさんに訳を話して、お花の種をもらって蒔いたのです。
どうです?とってもしっかりした犬でしょう?
春になりはぐはぐ犬の家の周りに花の芽が出始めました。はぐはぐ犬ははじめて命が誕生するところをみました。
「うわぁ。なんてちっちゃくてかわいい芽だろう!ぼくが守ってあげるからね。」
はぐはぐ犬は毎日お花に話しかけました。そしてお花と一緒に芽吹いた雑草の可愛さにもときめいたのです。
「みーんな、生まれたてはちっちゃくってかわいいんだなぁ。」
はぐはぐ犬は自分もまだまだ赤ちゃんなのにもかかわらず雑草たちのこともたちまち好きになりました。
しかし、ある朝小屋の外でなにやらガサゴソと音がします。起きてみるとママさんが庭の草取りをしていました。
「あら、おはよう。わんちゃん。」
「おはようございます。ママさん朝から草取りですか?」
「そうなの、お昼ごろになってくるとまだ春だけどとってもあったかいから、涼しいうちにやっちゃおうと思って、わんちゃんの家の周りも草取りしといたわよ。」
ママさんの笑顔が輝いています。
はぐはぐ犬は自分ちの周りを見渡しました。
がーん。僕の大事な雑草がない!
「ママさん!ぼくの家の周りは触らないでください!」
思わずはぐはぐ犬はママさんに強い口調で言ってしまいました。目のはじに涙を光らせて。はぐはぐ犬は家を飛び出し、森へ行って大泣きしました。
「ぼっぼくの大事な雑草の子たちがっ。ううう。きっ昨日までいたのに。うわーん。」しくしく、ぽろぽろ、涙が出ます。
一通り泣いたら、はぐはぐ犬の頭は泣きすぎでぼーっとしていました。住宅街の方が夕焼けに染まっています
するとグーっとお腹が鳴りました。
「ごはん、 食べに帰ろう。」
けれどごはんは山田さんちのご好意でいただいていたので、ママさんに怒鳴るようなことをしといて、合わせる顔がありません。
「あぁ、ママさんにあんなに強く言っちゃた、、、。ママさんだって悪気があって僕んちの周りの雑草の子たちを抜いたんじゃないのに。」
しかし、そう呟いた時に、また昨日まで居た雑草の子たちの事を思い出して、涙がぽろり落ちました。
お腹もグーグーなっています。
するとどこからか、坊ちゃんの声が聞こえてきました。
つづく。
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