kanda.jun

2003年建築基本法制定準備会会長 2012年東京大学名誉教授 2015年(株)唐丹小白浜まちづくりセンター代表取締役

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    最近の記事

    建築/かたちことば(鹿島出版会)を楽しむ

    著者の一人,元岡展久氏より6月に送っていただき、ようやく読み終えた。もっとも、急いで通読するよりは、写真と言葉を少しずつ味わうということが本書のねらいでもあろうから、建築を考えるときに、また引っ張りだすのがこの本の読み方かもしれない。 東京大学香山寿夫研究室門下の4人の建築家/大学教授による建築を語る書である。かたちが的確なことばに置き換えられて綴られている。時にはことばをかたちに戻すことが容易でないことに気づかされることもあったが、それは自分で見ていないからに違いない。建築

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      • 「これからの住まい」(川崎直宏著)の展望について

        市浦ハウジング&プランニング社長の川崎氏より贈られた本。これからの住まいのあり方を考えさせられる。 建築に関わっているものにとって、住まいの貧しさは大いに気になるところであり、戦後すぐの公営住宅、公団住宅の政策が、高度成長期を終えて、国の政策としても見えなくなっていることが根本にある。著者の提唱する「ハウジング・スモールネス」について、その展望を考えてみる。 序章において、問題点の指摘は具体的であり要点を撞いている。まずOECDの指摘は「日本では土地・建物の所有者の権利の至上

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        • 降伏の時(稲木誠+小暮聡子、2022年4月28日岩手日報社)を読む

          思いがけず、釜石のイオンモールの書店で朝10時に、平積みの「降伏の時―元釜石捕虜収容所長から孫への遺言」を見つけた買った。 潮見第で、ハンモックに揺られながら、結局、夕方6時に読み終わってしまった。昨年、やはり潮見第でNHKラジオ深夜便に小暮さんが出て話していたのだと思う。そんなことがあるのだと思いながら8月13日のフェースブックにも書いていたことも確認できた。 第1部「1945年 降伏の時」は、元所長稲木誠(1916-1988)が、1945年8月15日から9月15日までを書

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          • 津村節子著 紅色のあじさい(鳥影社刊)感想

            「海の壁 三陸沿岸大津波」や「戦艦武蔵」が印象に残っている吉村昭が気になって、「季刊文科」に載せた津村節子のエッセイ自薦集を手に取った。吉村昭没後16年経っての刊行で、エッセイの多くに吉村のことが記されている。さすがに読みやすい。 生活の中の一場面を取り出して、面白さを書き連ねるのだが、読者がだんだんに興味をそそられて、その後はどうなったかが気になったところで、ポツンと終わるという調子の作品がけっこう多い。本人がすでに94歳という高齢な訳であるが、やはり高齢でも矍鑠としていた

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            • 谷川俊太郎対談集の味わい

              標題に「人生相談」とあるけど、何か困って相談しているという内容ではけっしてない。人生の先輩たちとの対談(息子だけ例外)、谷川徹三(1895-1989)、外山滋比古(1923-2020)、鮎川信夫(1920-1986)、鶴見俊輔(1922-2015)、野上弥生子(1885-1985)、谷川賢作(1960-)、そして内田也哉子(樹木希林の娘)の解説が興味をそそるのだった。 本人も指摘している様に、いまさら何十年も前の対談にどれだけの人が興味を持つかとなると、特に、今の若い人にはど

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              • アセンブリ読後感メモ

                アントニオ・ネグリ&マイケル・ハートの近刊である。と言っても2017年刊行された英語版Assemblyの翻訳が今年2月に岩波書店から出た。 同じ著者による「Empire(帝国)」(2000年)により、現代社会の最大の国際市場資本主義の問題分析も、痛烈であった。そして、その後の世界の展開を踏まえてどうしたらよいかを説いているように読んだのではあるが、感覚的に納得できても、どうすればよいかは自分で考えるということになりそうだ。訳者あとがきによると、「マルチチュード」(2004年)

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                • 福井市至民中学の改築の物語に思う

                  今、地元の小学校の改築問題が地域で議論になっており、どうやって設計に参画できるものかと思っていたところ、構造設計でかかわった金田勝徳氏より「建築が教育を変える」(しみん教育研究会編、鹿島出版会、2009年)を紹介された。 中身は、公立の学校の計画でこんなことが出来るのだ、という驚きの連続である。まずは、異学年型教科センター方式を新しく採用するという教育委員会の判断。それを新しい教育システムとして、実現しようとする人たちの熱意と実行力。その中に、学校建築の設計があり、大きな力を

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                  • 「花散る里の病棟」(帚木蓬生著)に思う

                    九州で4世代の医者の物語である。現代の医療制度の問題や福祉制度の問題を問い直すところもあって、そして何よりも、現代社会における医者という専門職の意味を考えさせられた。 野北保造(1885-1936)、宏一(Ⅰ921-2002)、伸二(1946-)、健(1984-)のそれぞれが、主人公で書かれる10の短編からなる。小説ではあるが、ほとんどドキュメンタリーでもある。ご本人のことを書かれているとしても、よくぞ曾祖父や祖父の記憶までが鮮烈に書けるものだと驚く。 圧巻は、「兵站病院19

                    • 津波安全への取り組み考

                      東日本大震災から11年も経った今頃になって、津波防潮堤の議論などをさんざんしてきた自分が、こんなことも知らなかったのか、という記事を見つけた。 東大出版会の「UP」2022年5月号、泊次郎氏による「自律化のための生命知能と自動化のための人工知能」という標題の連載書評の中の一文である。少々長いが、引用する。 「私は2011年3月の東日本大震災に気象庁が出した津波警報を思い出した。地震直後に気象庁が予報した津波の高さは、岩手県で6メートル、宮城県と福島県では3メートル、実際に押し

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                      • 「金閣寺」を読んで

                        ウクライナ戦争がきっかけになって、高橋源一郎のオピニオンで知った太宰の「惜別」を読もうと買った文庫で「右大臣実朝」を読み、日本歴史で鎌倉時代を読み、蒙古来襲や、朝廷と幕府の関係、文化が興味深く、後醍醐天皇、足利幕府と来て、武士(武力)の役割、意味を改めて考えた。 それがきっかけということもないが、自分で買ったものではない「金閣寺」を書棚に見つけて、24日に釜石へ行くのに、持って行って、東北新幹線で読み始めた。5日で読み終えたのは、自分としては速い。三島由紀夫は、まさに全共闘運

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                        • 門井慶喜の「家康」で思う

                          鎌倉の武家政治をたどっているうちに、日本歴史を眺めると、頼朝に範を置いた尊氏から南北朝になり、政治も混沌としてくる。その後落ち着くと、改めて徳川260年の間、日本に戦争のない時代だったことがすごいことだと思っていたところに、門井慶喜が将軍について書いていることを知り、祥伝社文庫「家康、江戸を建てる」と祥伝社新書「日本史を変えた八人の将軍」(本郷和人と共著)を読んだ。 前者は、社会基盤の整備の話で、利根川の付け替え、流通のための金貨の発行、大量の上水道の整備、石垣工事(伊豆の石

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                          • 初夏の唐丹2022年

                            以前、震災復興ということで西一治と唐丹を訪れていたころは、調査報告の意味もあって、フェースブックのノートに書いていた。note.comになってからは、2年前の秋に書いたきりだ。それもそのはず、コロナ感染対応となると、潮見第に来ても、静かにしていることになってしまっていた面もある。 今回は、9泊10日で5月の連休をフルに使って礼子とやって来た。出かける前に、上村康志より電話で兄の征也(ゆっこさん)が26日に亡くなり、5月1日が葬儀と連絡が入った。征也氏が潮見第の土地を売ってくれ

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                            • 太宰治の「惜別」(新潮文庫)

                              もともとは高橋源一郎が、朝日新聞(4月1日)のオピニオンにウクライナ戦争に作家として何ができるかということで、「ロシアの作家が、ウクライナの作家の作品を読めと発信しているが、実は80年前に太宰治が魯迅のことを「惜別」に書いている」と紹介していて、同じ日にNHKの夜のラジオでも「これとアレだ」の例としても話していた。 ところが、文庫本を探したら、新潮文庫「惜別」には「惜別」の前に「右大臣実朝」が入っていた。吾妻鏡を解説するようにして、実朝に仕えたお女中が物語っているのを読むと

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                              • 浅田次郎の自然への思い

                                「蒼穹の昴」を読んで、司馬遼太郎以来の歴史小説としての感動をもらったのは、15年くらい前になるか。その後、「終わらざる夏」で学校で教わらなかった太平洋戦争の終末を知り、「流人道中記」は新聞連載を毎日楽しみにして読んだ。 久しぶりの浅田次郎の「母の待つ里」は、NHKラジオ深夜便で、「自然を書きたかった。東京生まれでふるさとのない自分のあこがれでもある」というような本人の声を聴き、読みたくなったのだ。テーマは自然で、書く前にストーリはできていないのだとも。 架空の母の待つふるさと

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                                • 「3.11から考える『この国のかたち』東北学を再建する」(赤坂憲雄著)に思う

                                  三陸復興のためにも赤坂憲雄の東北学を踏まえておく必要があると思って取り上げた。 実際に執筆されたのは、震災直後から1年経過したあたりということから、改めて震災そのもののインパクトの大きさを思い起こした。そして、福島の問題と三陸の問題が、基本的なところで繋がりながら、やはりかなり異質であることも感じてしまう。ただ、それまでの東北学の蓄積、柳田国男の遠野物語を始めとする民俗の流れが復興の根底にあることは十分に伝わった。そして、頻繁に語られる縄文文化における自然とのかかわりも。東大

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                                  • 「地域からつくる内発的発展論と東北学」赤坂憲雄・鶴見和子 に思う

                                    昨年6月に、鶴見和子と川勝平太の対談を読んでいろいろ触発されたが、今回は赤坂憲雄との対談である。きっかけは、NHKラジオ深夜便の「私の人生手帖」(2月26日)に赤坂憲雄が登場し、東北学について語っていたこと。 対談は3回行われている。最後の対談は2006年4月でその3か月後に鶴見は亡くなっており、赤坂が今も「東北学」として展開している3・11以後の課題は、鶴見との対談から何を引き出すかであるが、その意味で本書の中でも、赤坂は、自分が語りすぎた、鶴見にもっと語らせるべきだったと