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「かわる!いけがみえき」(佐瀬健太朗著)に思う


大田区の消費者団体「住むコト」で、以前「まだ再開発ですか」というテーマを取り上げたことがあり、2021年に商業施設と一体で新装なった池上駅ビルの写真を載せて、再開発事例としてとりあげた。さまざまな関係者の意見調整がなされたと想像するが、まちとしてよくなったかの評価は難しい。残念ながら、とても十分な検証ができていない。
踏切をなくすことによる安全性向上、駅前広場の整備、区の図書館も入る建築物として、大田区や東急電鉄としては、環境を整えたことになっているのだと思う。全体としての規模も含めて、区民の声が事前にもっとあがって、建築としての議論ももっとあったら良かったかと思う。池上本門寺への鉄道駅ということももう少し感じられるような佇まいもありえただろうなとか、完成したビルを眺めると思ったりする。「まだ再開発ですか」の思いは、低層で緑地スペースも生まれるような計画が可能ではないかということから来ているが、完成後の建築についての議論をもっとすべきかもしれない。
そんなときに、市民・建築NETで知り合ったNさんがこの冊子を送って下さり、小学校1年生の目で見た池上駅再開発の評価が表現されており、すばらしい内容に驚いた。「まちづくり適正建築士」という資格を有するなら、新しくなった池上駅について、この冊子以上のしっかりした評価しなくてはと考えさせられた。
著者の動機は、池上駅がどのように変わるのか興味を持ったこと。安全・快適をねらいとする新しい駅も理解するが、「古い駅も素敵だ」といい、「改築は楽しみだけれど少し残念だとも思う」という。参考書として「東急電車物語」や「池上線 目蒲線」を調べ、さらには、「新しい駅は楽しみか?」と「改札内踏切が無くなるのは良いことと思うか?」についてのアンケートをまとめている。結果は、新しく変わることへの賛成が過半ではあるが、古いものに対しても、ただノスタルジーというだけでなく、建築の意味を考えさせてくれるものであり、興味深く拝見した。まちが変わることに対して、区民目線での声がもっともっと上がらないと、経済ベースでの再開発がまちを壊しかねない。これからの再開発について、もっともっと区民の声が反映するやり方はないものだろうか。
ネットでたどってみると、健太朗氏の母佐瀬優子氏は「ブックスタジオ」などを通して、「言葉の力で景色をつくっていく」地域コミュニティー活動をされている。ということで、このような冊子も、そのご指導があってのことかと、これまた想像するが、建築がまちを作っていることを、この冊子により、強く意識させられたし、「住むコト」の活動に対して力強いメッセージでもあった。著者がさらに建築や公共建造物への興味を深め調査し、次作が生まれることを期待する。


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