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#短編小説
雨の夜、夜の海とダダダ。
雨が降ると僕らは電気を消して風呂に入る。
いつもよりぬるめにお湯を張って、水着に着替えて風呂に入る。
風呂に入る前に家の電気を全て消す。
タイル張りの浴室でかわりばんこに体を洗って、夜の海、もとい、湯船に入る。
築50年のボロアパート。
天井はダダダ、と強く雨に打たれる。
僕の脚の間に彼女が座って、僕は手を自分の頭にやる。
「触ってもいいんだぞ」と彼女はニヒヒと笑う。多分、意地悪い顔をし
澄んだ夜空、しかし星は見えない。
実家に帰ってきた。
半年ぶりに。
こっちでやらないといけない用事があった。
10日ほど滞在した。
仕事道具を持って帰ってきた。
家には誰もいなかったので勝手に入った。
"勝手に"入ろうと思った自分がなんだかおかしかった。
かつての自分の部屋は殺風景。
換気のために開けられた小窓。
白いカーテンレースが風に揺られている。
隅には落書きだらけの学習机。
パソコンとノートを広げた。
メガネと
午前二時、キッチン、キミ。
あおはさー、とキミが言った。
午前二時だった。
つまらない意味で優しいんだよ。
そう言いながらキミはゴソゴソと冷蔵庫を物色していた。
キッチンのテーブルで文章を書いていた。仕事が忙しいのでこの時間にひっそり書くのだ。賞に応募するための小説だった。受賞できるとは思っていない。他に上手い人はごまんといるから。
どういうこと?と聞いた。気になったので。
キミは言った。
誰も傷つけない奴は誰
前髪が耳にかかる頃に。
前髪が耳にかかる頃に。
天井をダダダと銃撃されたような激しい雨音で目が覚めた。むくりと起き上がると泳ぐ雨粒でぼやけた窓にぼやけた自分がだらしなく映っていた。
雨。和室にベッド。
ミッともギッとも聞こえるどちらにせよ新しくはない足音を残しながら洗面所にいった。和室から板張りの廊下に出ると足の裏がヒヤリとした。年季の入った焦茶の狭い廊下は「フローリング物件」として売り出してはいけないと思った。立