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短編集(2024)

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2024年3月の記事一覧

澄んだ夜空、しかし星は見えない。

澄んだ夜空、しかし星は見えない。

実家に帰ってきた。
半年ぶりに。

こっちでやらないといけない用事があった。
10日ほど滞在した。

仕事道具を持って帰ってきた。

家には誰もいなかったので勝手に入った。
"勝手に"入ろうと思った自分がなんだかおかしかった。

かつての自分の部屋は殺風景。
換気のために開けられた小窓。

白いカーテンレースが風に揺られている。
隅には落書きだらけの学習机。

パソコンとノートを広げた。
メガネと

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あああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!

あああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!

1個前で「実家がストレス!!!!」って書いたじゃないすか。

正直迷ったんすよ。

そういうのってよくないかなあって。

自分の中でどうしても「家族は仲良く」があって、
特に読んでくれている人のは家族を持っている方も多いですし。

でもまあ、そう感じている自分も事実なわけで。

別に殴られたり(ちょっとはあったけど)人格否定されたわけでも(ちょっとあったな)ないすけど、”なんとなく”嫌な場所。

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生活中心主義

生活中心主義

目が覚めるとキッチンで。

左腕がビーンと痺れていた。

キッチンの窓から陽はなく、
代わりに向かいの部屋の灯りがかすかに差し込んでいた。

50cm先に放り出されたスマホまで這う。

21時。

確か僕はお昼ご飯を食べるはずだった。
それが最新の記憶。

その証拠に鍋には米がぶくぶくと膨れていた。

ああ、やってしまった。

ぼやけた頭で情報を整理する。

・今は夜
・米はぶくぶく
・左腕がビー

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午前二時、キッチン、キミ。

午前二時、キッチン、キミ。

あおはさー、とキミが言った。

午前二時だった。

つまらない意味で優しいんだよ。

そう言いながらキミはゴソゴソと冷蔵庫を物色していた。

キッチンのテーブルで文章を書いていた。仕事が忙しいのでこの時間にひっそり書くのだ。賞に応募するための小説だった。受賞できるとは思っていない。他に上手い人はごまんといるから。

どういうこと?と聞いた。気になったので。

キミは言った。

誰も傷つけない奴は誰

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どこかへ。

どこかへ。

タクシーに乗った。

友人と飲んだのだ。彼とは3ヶ月に1度の頻度で会う。
互いの家の中間地点で会って、地元駅までは電車で帰った。

地元駅から家までは徒歩だと50分はかかる。田舎なのだ。

終バスはとっくに過ぎていたのでタクシーを使った。
彼には悪いが今日のメインはこっちだったりもする。

深夜のタクシーが好きだ。

現実とフィクションを彷徨う感じが好きだ。
酒でぼやけた意識がそれを加速させる。

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