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6月に読んだ本

つい先日、5月に読んだ本をまとめたばかりだというのに、もう6月の本をまとめている。6月に読んだのは4冊。以前と比べて本を買いに行く時間も少ななければ、読む時間もあまり取れず、涙。仕事と時間に振り回されるような毎日だったと記憶している。

わたしたちが光の速さで進めないなら

いま盛り上がっている韓国SF本のなかの1冊。長さの異なる話が7編集められた短編小説集だ。本書の難しいところは、読後に心に残される余韻を言葉ではうまく説明できないところである。例えば、本書のタイトルにもなっている短編『わたしたちが光の速さで進めないなら』は、かつて科学者として素晴らしい成果を残してきた老人が、家族が住む星に飛ぶスペースシャトルを待ち続けている場面から話がスタートする。ところが待っているはずのスペースシャトルは、もう随分前に廃止され、もう老人が行きたいと願う星への手段はなくなってしまっている。それでも老人は、光の速さで進めなくても、星に辿り着くまでに命が絶えることをわかっていても、自分のオンボロスペースシャトルに乗り、家族が生きるであろう星を目指して飛んでいく。わたしたち読者がこの話から得られる感情や考えとはなんだろうか。科学の発展により手に入れたモノよりも、失うモノの方が多いということかもしれない。けれど、多分それだけじゃない。心の隙間から薄い靄がスーッと入り込み、心の中の見通しが悪くなったと感じる。普段、気付きながらも無視してきたあらゆる事柄が、こちらをじっと見ているような、身動きの取れない心情に追いやられる。

暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて: ル=グウィンのエッセイ

多くの人が簡単にエッセイを出せるようになって忘れていたが、本書こそエッセイと呼ぶにふさわしい。最近読まれているようなエッセイ本は、多分ただの日記だったのだ。途中、頭に入ってこない部分は飛ばしつつも最後まで完走。読む側のことを想定しない独白のような文章が心地良く、非常に思考を刺激される1冊だった。ル=グウィンは、日常の中に疑問を見つけ、明確な回答があるかどうかわからなくても考え続けてしまうような人たちのことを愛しているし、尊敬してもいる。わたしも自由に考え続け、自身のスタンスを明確にしながら生き続けた彼女のことが好きだ。

東京ディストピア日記

桜庭さんが書く文章や考え方が好きすぎるので、この本のことを想うと胸が苦しくなる。本書は、日常をコロナに支配された2020年1月〜最近までのことを、日々変わり続ける状況とともに綴った日記だ。全体的に仄暗い雰囲気が漂いつつも、どうにか灯りを見つけようと目を凝らす作家の姿勢が窺える。本の中で最も怖く、印象的だったのは、場面がワンテンポで進んでいく日の日記だ。いつものカフェにいたかと思えば、瞬きの間に自宅の玄関にいて、次の瞬間にはまた別の場所にいる。つまり、毎日を生きているはずなのに、時間の線のうえに記憶が点で置かれているということ。立体的で、一日一日が別の形状をしていたはずだったのに、日常がいつの間にか平面になり、四季もわからなくなるくらいにのっぺりとしてしまっているのが今だ。自分でもこのことを体感していたはずなのに、改めて文章で読むとあまりに怖くて、この場面で一度本を閉じてしまった。私たちの日常、一体どこに行ってしまったんだろうか。そしてだんだんと、人間的ではなくなっていく自分にも気付いていく。いつまで経っても余裕がなく、自分さえよければそれでいいという考えばかりが肥大し、今の自分はかなり動物的だ。誰かに差し伸べる手を失ってしまってきている。以前のように、人が人でいる世界に全員が戻っていけるだろうかと、この本を読み終わってから考え続けている。

さよなら、男社会

男性目線で書かれた男社会について。男性性は男性だけでなく、女性のなかにも存在するということを改めて知るのに良い1冊。

ここでちょっぴり自分語りをすると、6月は本当に自分のために使える時間が限られていた。平日は7時〜眠る直前までPCの前にいたし、土日もやるべきことは山積みで、かなり落ち着かなかった。それでも本だけは読まんとななんかだめだ!ということで、毎日本を片手に寝落ちし、朝起きて読書灯を消すのを繰り返していた。ちなみに就寝前読書をするときにおすすめなのが、耳栓をすること。非常に静かで、読書に集中できる。(ただ眠ってしまう可能性も高い)わたしの場合、自宅前に住んでいる家族の娘さんが夕方〜夜にかけて毎日のように大発狂し、一本道を挟んだ側にあるわたしの家の中にまで叫び声が聞こえる(虐待ではない)ので、耳栓はかなり重宝した。なかなか眠れないわという人にも耳栓は超おすすめ。さて7月はなにを読むかな。

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