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SNSは何でも言える場所なのか(ネット社会における愛と正義について)


久しぶりにタイムラインをのぞくと、そこはカオスだった。

「SNSは、さまざまな価値観を持つ人が集う場所。発言内容は充分に考慮したい」


「SNSは皆が自由に発言する場所。誰にも遠慮せず、言いたいことを言えばいい」


某ミュージシャンのライブやイベントのたび、毎度火が付く議論だ。「ツイッターにおける言論の自由」と、SNSについて考えてみた。


多くの自我と思惑、優しさと思いやりが交錯するタイムライン


ファンはデビュー前より応援し続ける人から、メディアへの露出が始まって以降、加速度的に増えたファンまで千差万別。社会階層をはじめ、年齢国籍まで、まさに多種多様である。


SNSで観察を続けていると、ことあるごとに遭遇するフレーズがある。

「(ミュージシャンのためにも)ネガティヴ発言はやめましょう」


「発言は自由です。(ライブのネタバレなどを恐れず)どんどん発信しましょう」


などだ。

中には

「応援するファンは、こうあるべきです」

「(ミュージシャンのために)~しましょう」


といった主張も流れてくる。語気の強いものは注目を集めることも多いが、これらの発言は個人的に、とても気になった。


自我のコントロールは難しいのか


承認欲求は誰にでもある。

しかし、それをコントロールできず、声高に煽ったり、関心を引きたいがために媚びたりするタイプの人間に共通して見られるのは、世間に注目されたいという「欲」だ


彼らの言動からは、

満たされていない現状に起因する「過剰なまでの承認欲求」が垣間見えるのだ。


そして、そんな彼らが「認められたい」故の「痛々しい叫び」「傲慢な言動」に眉をひそめる人間は、少なからず存在する。
「動機は愛」を隠れ蓑にした「我こそが正義」なマウント合戦は、傍目から見ても美しくはない。

誰かを裁こうとするとき、私達は自分の中の罪──自分が不完全であること──を忘れているということなのです。別の言葉で言えば「罪」とは「至らなさ」のことです。

「あなた方のうち罪を犯したことのない人が、まずこの女に石を投げなさい」。

若松英輔「NHK100分de名著 言葉の奥にあるコトバ 新約聖書 福音書」ヨハネによる福音書


「正義の押しつけ」は、想像力と思いやりが原動力の「動機が愛」ではない。



実際にはSNSで「好き勝手につぶやける人」は、多くないだろう。

画面の向こうの相手が、どう感じるかを想像できない人間は、自らの内面と向き合ったことはあるのだろうか。きっと自分の心の叫びや痛みも、見て見ぬふりをしているに違いない
炎上する人の中には、SNS依存で既に心身に影響が及び、実生活での人間関係に支障をきたしているケースも多そうだ。

他人に投げた石は、必ず自分に跳ね返ってくる。


目に留まったツイート


「うっかりネタバレ見たくなきゃSNS見なきゃいい」と言うのは言い古された決まり文句ですが、まだ見ぬ人を思いやる気持ちは素敵だし、エンタメがもたらすワクワク感をなるべく平等に分かち合いたいと願うこともひとつの愛の形だなあと思う今日この頃です。

(ツイート主の許可を得て掲載)


ツイート主は何者も否定せず、だからといって誰かに媚びるわけでもない。強い口調で語りかけるように「煽る(あおる)」ことでもなく、ひっそりと「つぶやいて」いる。

誰も委縮させることのない優しさと思いやり、愛情と良識を感じる発言だ。


わからないから、想像するしかない


顔もわからないし、会ったこともない。そんな他人の気持ちは「わからない」のが当然。

「わからないこと」が大前提なのだから、不特定多数の相手に対しての発言こそ
「思いやり」

「想像力を働かせること」

が必要ではないだろうか。

そして、そういう思いやりの気持ちこそが「動機は愛」の原動力なのだ。


「そのフレーズに愛はあるか?」

「自分の言葉は美しいかどうか?」


何を「美しい」と思うかは、人それぞれ。でもSNSは何を言っても良い場所ではない、と筆者は思う。言葉の持つ力をあなどるなかれ。言論の自由をはき違えては危険だ。


「言葉は刃物なんだ。使い方を間違えるとやっかいな凶器になる…」

「名探偵コナン」


「言葉は刃物…使い方を誤ると質の悪い凶器に変化する…相手の心を察して慎重に使わねばなりません…たとえ相手がどんな相手であろうとね…」

「名探偵コナン」


様々な価値観の人が集うSNS。「誰も傷つけない」のは簡単ではないが、よく想像し、言葉を選んで発言する。このことをいつも肝に銘じておきたい。言葉を扱う者として「自戒を込めて」なんて、手垢のついたフレーズは使いたくないけれど……。



※初稿は2021年7月6日。
※2023年6月22日 一部を加筆修正し再掲。





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