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詩/短歌

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ふわふわ綿菓子

ふわふわ綿菓子

ふわふわ綿菓子
もしかしてマシュマロ
食べようと手をのばしたら雲だった
ベトベトするから綿菓子かも
あのひとが水たまりに落としたマシュマロかも
食べたらわかるだろうけど落としたのなら
お腹を壊すからやめておこう
だったら火であぶって食べたらいいよ
木の枝ひろって刺して食べよう
だめだめ あぶってしまったら綿菓子だったらとけちゃうよ
ましてや雲なら枝にさせない
ふわふわ飛んで散ってしまう
ふわふわ綿

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恋することについて

恋することについて

恋をしなさい
と父は言った。
君はますます輝いて
傷ついた心の痛みも
君を輝かせる。

恋なんて
しなくていいよ
と母は言った。
恋をしたらお前はお前でなくなる
お前はどんどん傷ついて
そして誰かを
どんどん傷つける。

西向きの埃っぽい部屋で
冬の陽に当たりながら
コーヒーを煎れる父を見る
震える白い指から香りが立ち登る。
けたたましい声
鵯が窓ガラスの母の影を横切る
庭に向けられた母の鋭い目は

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コロナ禍のいつもの私 10

コロナ禍のいつもの私 10

蒸せるほど暑く湿気て
オイルドジャケット苔むして自分だけの一枚に育つ

夏の草嵐
熱風と連れ立って迫り来
クーローゼットのジャケットさえも
軒のつりしのぶ

熱風と連れ立って来
夏の草嵐
軒のつりしのぶのごとくに
苔しげきオイルドジャケット

時を経て味わい深くなるはずの
オイルジャケット苔むして死す

コロナ禍のいつもの私 3

コロナ禍のいつもの私 3

夏空に
涼を求めて歩けども
稲穂の道に
木の陰はなし

 夏の散歩は暑くて過酷です。
早朝でも夕暮れでも恐ろしいほどの熱気。
犬も人間も熱中症になりそうです。

コロナ禍のいつもの私 2

コロナ禍のいつもの私 2

わが犬が
草に入りて
さわさわと
火照りを冷ます
梅雨の道
飛ぶ露もらい
しばし涼む

 午前8時。
今朝は蒸し暑いが、梅雨が明けたらこの時間だってもう散歩できない。
暑さで消耗して痩せそうだけど、夏は犬も人も運動不足で太りやすくなる。

見たことのないもの

見たことのないもの

見たことがあるものはなんだか落ち着く
ああ、それ知っている。
見たことのないものは落ち着かない
身の置きどころに困って
どこに座ったらいいですか?ってなる。
そのうち誰かが
ここですよ
と教えてくれる。
そうなると落ち着くけれども
馴染みのものになるけれども
あっという間に古くなる
誰かに教えてもらっただけなのに知っている気になる
ほんとうは私なにも知らないけれど。
ハラハラドキドキ時にイライラ

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コロナ禍のいつもの私13 日記

コロナ禍のいつもの私13 日記

9月4日(土)
夏の暑さを冷ます涼しい雨が降っている。
一瞬 
カーッと晴れ蝉が一斉に鳴き出した。
行ってしまう夏に必死にしがみついているみたいだ

9月5日(日)
小刻みに揺れながら
猫がまばたき信号を送って来た
ゴハン ゴハン ゴハン
私はちょっと意地悪して
解読出来ないふりをした
ゴハン ゴハン ゴハン
このあと私の左足に傷三つ出来ました
猫をじらしてはいけません。

9月6日(月)
茶色に

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鳥

きょう
大きな鳥が私の頭をかすめて飛んで行った。
羽の付け根がとてもよく見えた。
子どものころ飼っていた鳥の羽の付け根は柔らかで
温かいひなたの匂いがした。
そのことを思い出して
私は幸福な気持ちになった。
ほんの些細なことだけど
「自分はまだ大丈夫だ」
と思った。

きょう
小鳥たちが楽しそうにはしゃぐ声を聞いた。
冬の金色の光が
小鳥たちの木に眩しく注いでいた。
私は幸福な気持ちになって
涙が

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