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第109回:かっこいい「俳優」は、どのように作られるのか?

こんにちは、あみのです!
今回の本は、辻村七子さんの『僕たちの幕が上がる』(ポプラ文庫ピュアフル)という作品です。カバーのタイプが違う2人の男子が作中でどう活躍するのか見てみたくて、今作を手にしました!

魅力的な男子たちの「演劇」に対する熱意と成長を感じることができる物語。演劇に興味がある人はもちろん、好きな俳優さんがいる人にもきっと刺さる1冊だと思います!

あらすじ(カバーより)

若手アクション俳優として活躍していた二藤勝は、ある事件をきっかけにほとんど活躍ができなくなっていた。そんなとき、今をときめく天才演出家・鏡谷カイトから新たな劇の主役に抜擢される。なぜ自分が選ばれたのか分からぬまま、勝は俳優生命をかけて、初めての舞台に挑むことに――!
舞台にかける夢と友情を描いた熱い感動の青春演劇バディ・ストーリー!

感想

俳優の勝と演出家のカイト。高校以来の「再会」によって仕事での成長はもちろん、それぞれが背負っていた心の傷も癒していく物語に勇気を貰いました。

誰かを傷つけたり、誰かに傷つけられたり。目立つ仕事というのもあって、世間は勝とカイトの過去を面白おかしく報じ、2人の努力を苦しめる場面も作中には多くありました。

勝の共演者とのトラブルのこと、カイトの高校時代のことは読み手としてもあまりいい気持ちになる出来事ではありませんでした。2人の傷の「原因」は一生思い出したくないことではあったと思うけど、舞台に携わるすべての人の「優しさ」によって少しずつ救われていく過程が素晴らしい作品でした。

また、高校時代のカイトの心を勝の何気ない「優しさ」が救っていたというエピソードにも心が震えました。
勝も充分優しい人ですが、彼の優しさを受け入れたことによって「演出家」としての今の自分を作り上げたカイトもとても強い心の持ち主なんだなと思いました。勝を慕うカイト、めちゃくちゃ可愛くて好き。

今作は「演劇」がテーマというのもあり、俳優たちが演技をしている時の感情や舞台当日までの様子がリアルに感じられたのも魅力でした。

中でも勝が困難に立ち向かう際に「自分が演じる人物だったら、今の状況をどう思うか」を考えて行動する場面がよく描かれ、演じる「役」を「キャラクター」ではなく、「実在するひとりの人間」として捉えていた俳優のプロ意識に何度も圧倒されました。

今作を読んでいて私は、中2の時に好きな俳優さんの舞台に初めて行ったことを思い出しました。生で推しが見れたことはもちろん、テレビドラマとは違った俳優さんたちの熱演に大感動した時のことは今でもよく覚えています。

あの時の感動の裏で俳優さんたちは、どのような気持ちで作品と向き合っていたのだろうか?そのようなことを考えながら今作を読むと、違った角度からの「感動」や「興奮」を味わうことができました。勝たちの努力や舞台本番の様子を見ていたら、何年かぶりに俳優さんたちの「熱」を生で浴びたくなりました。

「俳優」と聞くと「かっこいい」とか「人々に夢を与える仕事」というイメージが私にはありました。でも今作を読んで、そのイメージがどのようにして作られていくのかをよく感じることができました。

お互いの気持ちを知り、辛い過去を乗り越えて少しずつ成長していく勝とカイト。2人はこの物語の先でどのような仕事に挑んでいくのでしょうか?最高のコンビの物語を私はもっと見てみたいですね!

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