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第122回:「クリスマス」が繋いだとっておきの恋(宇山佳佑:君にささやかな奇蹟を)

こんにちは、あみのです。クリスマスにおすすめな1冊を読んだので紹介します。
今回の本は、宇山佳佑さんの『君にささやかな奇蹟を』(角川文庫)という作品です。

私が今作を読むのは2回目です。前回は、数年前に期間限定でやっていた電子書籍の角川文庫作品が無料で読めるキャンペーンの時に読みました。

この時はなんとなく読んだのですが、登場人物の恋が実っていく様子や「絵本」を使った心温まる演出に涙したことを覚えています。予想以上にいい作品だったので、いつか手元に置いてクリスマス時期に再読したいと思っていました。

今作は「カドフェス2021」(毎年恒例の角川文庫の夏のキャンペーン)の時にカバーがリニューアルしました。物語をイメージした写真を使用した新しいカバーに魅力を感じ、リニューアルを機に購入しました。
今の時期に読むとより物語の世界観に入り込むことができる作品です!

あらすじ(カバーより)

子供の頃信じていたサンタクロースが本当にいたら?しかも日本に。でも彼はイメージとは程遠く愚図で意気地なし。そんな彼も恋をします。彼女はどこにでもいる普通の女性。ですが夢を失い、今の自分に向き合えずにいました。サンタは彼女のために願いを叶えようとします。どんな辛いことでも笑顔で隠して。すると彼女の中で何かが変わり始め――。現代のおとぎ話は素敵な恋物語。大切なものをもう一度思い出させてくれます。

感想

「サンタクロース」の一族の108代目として生まれた自分に自信が持てず、これまでいろんなことから逃げてきた聖也。聖也は伊吹という女性と出会い、彼女を好きになります。伊吹のために自分を変えたい!と思うようになった聖也ですが、それを聞いた伊吹は「人は変われないんです」と彼を否定してしまいます。

私も聖也のように自分に自信が持てなくて、現実から逃げてしまった経験が何度もあります。憧れの人のために自分を変えたい!と思ったこともあります。また日々の努力が実らなくて、伊吹のように「私って本当に何も変われないな…」と落ち込んだこともあります。

前回はただ単に「恋愛小説」として読んだのですが、今回はこの楽しみだけでなく、聖也と伊吹がそれぞれの目標に向けて自分に自信をつけていく物語としても楽しむことができました。

伊吹は絵本作家を目指していましたが、何をしても報われなかったことから小さい頃からの夢を諦めてしまいました。

はじめは聖也に対して「変人」という認識だった伊吹ですが、一生懸命に彼女を愛してくれる聖也から目が離せなくなり、次第に惹かれていきます。
また聖也に惹かれると同時に、自分にとって絵本作家の夢とは何だったのか改めて考えるようにもなります。

サンタクロースは、みんなに「夢」や「気持ち」を届ける存在。聖也が教えてくれた大切なことが、伊吹の絵本作家への思いを蘇らせます。

物語の終盤、伊吹が描いた絵本が作中に登場します。この絵本では、伊吹自身である「女の子」と聖也をモデルにしたであろう「サンタさん」との交流が描かれていました。

聖也を傷つけてしまったことと「反省」の気持ち。
聖也に出会えたことで、自分も変われた「感謝」の気持ち。
そして、彼とこれからもずっと一緒にいたい「大好き」の気持ち。

伊吹と聖也のこれまでと重なる絵本のシーンは、今作ならではの感動の演出で、何度読んでも心に沁みました。この絵本は子どもたちに夢を与える物語なだけでなく、聖也に向けたラブレターでもあったのだと思います。

努力次第で自分を変えることは充分できるし、何歳になっても夢は追いかけることができる。
魔法のような温かい恋に感動できるだけでなく、伊吹と聖也の成長から希望を感じ、心も強くなれる作品でもあると2回目の今作では気付くことができました。またいつかクリスマス時期に3回目を読みたいと思います。

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