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第66回:努力は必ず「喜び」に変わることを実感した作品

こんにちは!あみのです。今回の本は、本葉かのこさんのライト文芸作品『やおよろず百貨店の祝福』(富士見L文庫)です。

主人公の笑顔が印象的なカバーに惹かれて手にした作品。神様と人とのつながりを感じられる「お仕事小説」です。ファンタジー要素が入った作品ではありますが、作中で取り扱っていた課題はなかなかに現実味があるものだと思います。

あらすじ(カバーより)

「福本福子、福を呼び込みそうな、ええ名前や」——そんな理由で、㊙︎部署の神様専用の外商部『七福神ご奉仕部』に配属された福子。
 初めてのお客様は、福子と馴染み深い神社の祭神である福禄寿様。しかし希望された”灯り”を持参した福子はけんもほろろに扱われ、ケンカになって泣かせてしまう。
 さらに落ち込む暇もなく、恵比寿神から「夏を涼しく感じる器」の注文が来る。見繕ってお持ちするもダメだしの嵐!三度目の正直に勝負をかけるが……?
「お客様は神様です!」神と人との絆が結ぶ、お仕事コメディ!

感想

神様を身近に感じられるかつ、自分の仕事が誰かに影響する喜びを存分に味わうことができた物語でした。

作中にて福子が担当した神様たちも人間のお客様と同様に、厳しい注文をすることがあります。物語の序盤、福子は福禄寿様と恵比寿様を担当することになりますが、上手く商品を選ぶことができず、失敗が連続してしまいます。

数々の失敗に福子は落ち込み、仕事を辞めることを一瞬考えてしまいます。しかし、何かのヒントを得ようと昔から彼女の身近にある神社へお参りに行ったところ、福子は福禄寿様からあるアドバイスを頂きます。

それはこれまでの福子は「先輩の意見にばかり頼っていたこと」、そして「福子自身が本当に「良い」と思える商品を相手に薦めていなかったこと」です。

福禄寿様の的確なアドバイスを機に福子はこれまでの自分の接客を見直し、神様たちも満足するサービスを提供できるようになります。物語が進むにつれて神様たちはもちろん、厳しかった先輩も福子の良き味方になってくれたところが読んでいて凄く嬉しかったですね。

また、物語のところどころで「昔から街に馴染んできたもの」が失われていく話題が飛び交っていました。福子の実家の豆腐屋をはじめ、彼女が大好きなお店が次々に街から消えていきます。さらにその影響は、福子にとって最も身近な神様である福禄寿様にも影響していることも判明します。

大好きな街のため、そしてピンチの時に何度も支えとなった福禄寿様を救うために福子が、彼女なりのアイデアで街全体を盛り上げようとする姿には今作最大の成長を感じました。

福子が街の未来のために提案した「七福神巡り」のイベント。途中、開催が厳しいとの意見もありましたが、彼女の熱い思いによってイベントは実現しました。実際、「七福神巡り」は幅広い世代の人が楽しめるイベントとして成功し、福子は少しでも地域の活性化に貢献できたのではないかと思います。

また、このイベントが成功したのは福子の存在だけでなく、これまでの仕事で関わった神様の存在や人々の情報発信も大いに活躍しており、「仕事」というものが1人だけでは達成できないことを改めて実感しました。人の縁って凄く大事。

主人公が自分の苦手なところに気付いて、成長するといったストーリーの流れが非常にポイント高い1冊でした。まだ作中に登場していない神様もいるので、続編に期待したいですね!

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今回の感想を読んで頂き、ありがとうございます。公式の作品紹介漫画やPOPでも今作の良さを感じられるので、興味を持った方は下記のリンクもチェックしてみてください。


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