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第180回:新しい「味」に出会えるのも旅の魅力(『おいしい旅 初めて編』*アンソロジー)

こんにちは、あみのです!
今回の本は、角川文庫のアンソロジー『おいしい旅 初めて編』です。旅と食という私の好きな要素しかないアンソロジー、絶対これは面白いな!と思って読んでみました。

住んでいる街ではなかなか食べられない旅先ならではの食べ物との出会いを描いたアンソロジーです。国内外の様々なスポットのリアルな描写には、実際に現地に行ったような気分が味わえます。旅好きの人なら読んで絶対後悔しない1冊です!

あらすじ

知らない景色とおいしい料理がここに。「初めて」に出会う旅×グルメ小説集
仕事に行き詰まり、勢いで列車に乗り終点まで……旅先では驚きの出会いが待っていた(「下田にいるか」)。福引きで旅行券を引き当て、台湾へひとり旅。現地で会った駐在員はどこか訳アリのようだが(「情熱のパイナップルケーキ」)。訪れたことのない場所、見たことのない景色、その土地ならではの絶品グルメ。さまざまな「初めて」の旅を描いた7編を収録。読めば必ず出かけたくなる、文庫オリジナルアンソロジー。

出版社サイトより

感想

旅行に行くとじっくり食事をとるよりは、ひたすら観光スポットを回りたいと思ってしまうタイプの私。せっかくの旅でその土地ならではの食に触れないのは非常にもったいないことに気付けたアンソロジーでした。

どの作品も「旅」と「旅先での食事」がテーマにはなっていましたが、作品によっては旅先の歴史にフォーカスした話やミステリー風味な話と作家さんごとで個性がよく出ていたところも面白かったです。

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収録作で特に好きだったのが、坂木司さんの『下田にいるか』という作品です。この作品はタイトルからもわかるように静岡県の下田が舞台となっていて、個人的には身近に感じる場所でした。作中には下田海中水族館やペリーロードなど行ったことのある場所もいくつか出てきて、主人公が見た風景をよりイメージしやすかったです。

私は家族と車で下田に行きましたが、作品の主人公は電車で下田へ向かっていました。同じ場所に行くとしても、誰かと一緒に行くか、それともひとりで行くか、またどんな交通手段を使うかによって見えてくる景色もまた変わってくるのかなと思いました。

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日本に限らず、海外旅行を描いた物語もいくつかありました。日本でおなじみの食材も国が違えば楽しみ方も変わってくる。
例えば近藤史恵さんの作品に登場したオランダのマヨネーズ。オランダを旅行中の主人公はフライドポテトを頼んだ際、店員さんからポテトにつける用のマヨネーズを勧められます。ポテトにマヨネーズは合うのか?と疑問を感じた主人公ですが、実際に食べてみると日本のマヨネーズとは味が別物で、予想以上にポテトに合うそう。

 唸ってしまった。マヨネーズは日本のマヨネーズと全然違う。酸味が少なく、少し甘くてクリーミーだ。たしかにフライドポテトによく合う。

p106 近藤史恵『遠くの縁側』より

オランダのマヨネーズのエピソードのように、普段食べている物の新しい味わい方に出会えるのも旅の面白さのひとつなのかなと思いました。特に海外旅行だと国によって文化が違うこともあるので、こういった出会いはよりありそうですよね。海外旅行への憧れが更に高まるエピソードでした。

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旅って気持ちを切り換えるためには欠かせないものであるとどの作品でも感じることができました。次の旅先の選択肢が更に広がるアンソロジーでした。同シリーズの「想い出編」も近いうちに読んでみます!

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