見出し画像

結婚では表せない愛の形もある。(笹沢左保:『結婚って何さ』)

笹沢左保著『結婚って何さ』(徳間文庫:トクマの特選!)を読了しました。同レーベルから出ている『招かざる客』を以前読んで面白かったので、同じ作者の本をもっと読んでみようと思い、手にしてみました。

今作の主要人物は、事務職として働いていた真弓と三枝子という2人の女性。職場でのハラスメントを理由に仕事を辞めた彼女たちは、偶然知り合った森川という男性に誘われ、旅館で一晩過ごすことになります。しかし翌朝、2人が目にしたのは、何者かに殺害された森川の姿でした…。

森川殺しの犯人だと疑われる真弓と三枝子の逃避行。序盤からまさかの三枝子の死が描かれるといった想定外のシーンもあり、この先の不安満載の展開から目が離せませんでした。

河口湖に向かう途中に出会った早苗という謎多き女性、森川ともつながりがあったとされる伴弁護士の死、そして姉の死の謎を探る隆二との出会い…。真弓が集めた数々のピースがだんだんと事件の真相へと辿り着いていく爽快感もたまらない作品でした。

また、今作は「結婚だけが本物の愛とは限らない」ということを感じられる物語でもありました。インパクトのあるタイトルにもそのようなメッセージが込められていたのではと思います。例えば、事件を紐解く重要人物として登場した早苗は、実の夫である伴弁護士とは別の男性を本当は愛していたんじゃないかと感じられた箇所がありました。

「結婚をしなくても幸せになれる関係だってあるかもしれない」という今作のメッセージは現代では受け入れられつつあるテーマではありますが、作品が発表された当時(1960年)はかなり刺激的に見られていたのではないかと思います。

小説に限らず、時代の変化で人々に受け入れ難くなったコンテンツって近年多いように感じています。
その一方で、今作のように昔は尖ったテーマだったとしても、現代なら評価が異なる作品も世の中にはたくさんあるのかもしれないと、読んでいた最中ふと思いました。昔の小説の面白さを再発見するだけでなく、昭和と令和の価値観を比べられるのも「トクマの特選!」シリーズならではの魅力ではないでしょうか。

濃厚なサスペンスはもちろん、女性のかっこいい生き様やエモみのある恋愛要素も充実した今作。『招かざる客』と同様、本当に面白い作品に「古さ」は関係ないと思ったし、これからも多くの読者から愛される作品となってほしいです。

この記事が参加している募集

#推薦図書

42,523件

#読書感想文

189,023件

いつも記事など読んで頂きありがとうございます。日々励みとなっています。もっと面白いネタを収穫したいので、良かったらサポートもお願いします(^^)