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日本語の中に生き続けた漢文 【読書感想文】

「漢文の素養 誰が日本文化をつくったのか?」(加藤徹著、光文社新書)を読みました。

書名になっているのは「漢文」ですが、サブタイトルにあるとおり、日本のことが述べられた本でした。

歴史を語るとき「文化史」「政治史」と大きく分けられることがありますが、この本は「漢文史」だと思いました。
漢文という断面から見た日本史です。学校の日本史で聞いた名前もたくさん出てきます。

自分に「漢字文化圏」のアイデンティティがありうることを初めて意識しました。

「おわりに」で紹介される、高杉晋作が上海に渡り、中国語は話せなかったが漢文で意見交換をしたという逸話を読んだとき、遠い昔、日本列島にいた人々と中国の大陸にいた人々の間で漢文の往還があり、それがそれぞれの社会の変遷のなかで生き続け、ひとりの人と人との間で通じたということに、涙腺が反応するほど感動しました。

言われるまで気づかなかったのですが、昔の人は書き言葉に漢文を使っていたのですから、中高の授業で目にする「漢詩」だけでなく、医学や天文学など様々な事柄が漢文で書き残されています。
わたしは朝ドラ「らんまん」のある場面を思い出しました。
主人公の槙野万太郎は、子供のうちに時代が明治に変わった世代の方ですが、植物の名前を知りたい万太郎少年が出会い、じっと見て「読めません」と言った植物学の本も、漢文で綴られていました。

京都芸術大学通信教育部の古典日本語の教科書になっているだけあって、語り口が易しく、読みやすかったです。
少し、小説を読むときのように感情が乗ります。
日本を持ち上げるような感覚を言葉の端に感じることがありましたが大過ありませんでした。


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