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ショートショート「サブスク彼女」(読了時間3分)
サブスクリプション、略して「サブスク」と呼ばれるサービスがずいぶんと増えてきた。
元々は音楽や動画の配信サービスなどで使われ始めた言葉で、定額で継続的に課金すればサービスが使い放題になる。
サブスクは今では様々なジャンルに広がっている。車や飲食店、オモチャのサブスクなんかも存在する。
そんな中で、僕が今ハマっているのが…
「お待たせ!」
弾むような声で、彼女が僕に話しかける。
「
ショートショート「時間診療所」(読了時間3分)
「こんにちは、初診なのだが…」
診療所のドアをくぐり、サラリーマン風のスーツの男が顔を出す。
「噂を聞いて来たのだが…ここでは時間の治療ができるとか」
そう、ここは時間診療所。時間が狂ってしまった人を治療する診療所だ。
白衣を着た医者の男が答える。
「ええ、現代は何かと時間がおかしくなる方が多いので。多いのは「短時」。時間が短くなってしまう症状です」
「時間が短くなるなんて…」
「視
ショートショート「結婚式ゾンビ」(読了時間1分)
私たちは彼の家で映画を見ていた。色気も何もない、ゾンビ映画。奥手な彼とのデートはいつもこんな感じだ。
「ゾンビって言っても色々いるよね」
突然、彼がそんなことを言い出す。
「まあ、そうね」
「この映画だとゾンビに噛まれたら感染して、ゾンビになる」
「うん」
「でも他の映画だと、触れただけで感染する接触式のゾンビもいる」
「そうね」
「それ以外にもさ、呪われてゾンビになるとか、墓に埋葬され
ショートショート「笑顔のクリスマス」(読了時間3分)
赤い服、白いヒゲ、大きな白い袋。サンタクロースが聖夜の空を駆けていた。もちろん、赤いお鼻のトナカイが引く、ソリに乗って。
サンタクロースにとっても、この寒空の下、世界中の子供達にプレゼントを配るのは簡単な作業じゃない。でも彼は、風邪を引いていても、持病の腰痛が酷くても、毎年必ずプレゼントを配る。理由はたった一つ。子供の笑顔が好きだからだ。
サンタクロースは、今年もプレゼントを配り始めた。ま
ショートショート「コンビニ里帰り」(読了時間3分)
最近のコンビニは何でも売っている。昔は色々な「形あるモノ」が売られていたが、最近では「形のないサービス」も多く売られている。
チケットの購入から宅配便の手配、それからこんなものも。
「これとこれと、肉まん1つと、あと里帰り5,000円分」
レジの店員が他の商品のバーコードを読み取った後、面倒くさそうにiTunesカードの隣にある「里帰りカード」のバーコードを読み取る。ピッと音がして、レジ
ショートショート「違法の冷蔵庫」(読了時間1分)
目の前の怪しい男の傍には、古めかしい冷蔵庫がある。噂を聞いて以来、俺が探し続けていたものだ。
「これが例の冷蔵庫か? 普通の冷蔵庫にしか見えないが」
「そうだ。ここに来たってことは、アンタ、何か違法なことをやっちまったんだろ? この冷蔵庫は、アンタの『違法』を冷蔵してくれる」
「冷蔵するとどうなる」
「冷蔵している間、アンタは警察に追われる心配も無ければ、捕まることも無い」
そんなことがあ
ショートショート「数学ギョウザ」(読了時間1分)
彼女は数式でしか会話をしない。
『(ひき肉+キャベツ+ニラ+皮)×蒸し焼き≠ギョウザ』
紙に書かれていたのは不等式。台所にはギョウザっぽい残骸がある。
「作るの失敗したの?」
彼女は頷く。そして数式に『+あなた』と書き加え、≠を=にして等式に変えた。
「俺が作れ、ってことね。分かった」
この不思議な彼女に魅力を感じて付き合い始めたけど、正直、限界だ。数式での会話もだが、そもそも
ショートショート「空飛ぶストレート」(読了時間1分)
「ううむ、この状況は…どのストレートが空を飛ぶのだ、そして何がオチになるのだ!」
ここはショートショート大学。創作と現実の狭間にある大学だ。そこで教授は頭を悩ませていた。
ショートショートnote杯の読者にはお馴染み…このお題は、どんな「ストレート」が空を飛ぶかが見所の一つだ。しかし教授のいるこの大学ではストレートが渋滞していた。
何せ、野球部のピッチャーは直球で攻めているし、サラサラロ
ショートショート「アナログバイリンガル」(読了時間1分)
「そうか、俺は死んだのか」
棺桶の中の老人は確かに俺だ。空中からそれを見ている。
周りに妻と娘がいる。涙はない。妻は1枚のアナログレコードを持っていた。それは俺が墓場まで持ってきた、秘密のアナログレコードだ。
「お父さん大往生よね。人生ロックだなんて言いながら」
「そうねぇ」
「プロポーズ、指輪もなしでしょ。自分の作ったアナログレコード1枚渡しただけ。しかも曲名が『愛なんて知らねぇ』」
「