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吾、猫になる(児童小説)

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#児童小説

《児童小説》 吾、猫になる 1 ようこそ、キャットストリー島10

夢話ノ拾(10) おふくろの味

 お元気三ネズミは気づくといつの間にか何処かへ消えていて、そらと花は二匹の背丈に合わせて置かれたカウンターのイスに座った。
 目の前の海鮮丼に目をキラキラさせながらよだれがたれそうなゆるんだ顔で小さな前足をちょこんと合わす。

 「「いただきます」」

 同時に言った二匹は、海鮮丼を食べ始める。ただ、そらはお盆に乗っていた木のスプーンで器用にすくって食べるのに、花

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《児童小説》 吾、猫になる 1 ようこそ、キャットストリー島11

夢話ノ拾壱(11) おふくろさん

 そらがお茶漬けを待ってる間、食堂もピークが過ぎて落ち着きを見せ、オリはいつの間にか洗い物を済ませ、エプロンで手を拭きながらそらの隣へちょこんと座る。そして、一息つくようにキッチンからメガがテコテコ歩いてきて花の隣の席に座り、そらと花は夫婦に囲まれた。

 お腹が空いて何も考えずここまで来たので、そらはその時急に肩身が狭く感じて縮こまる。花は猫そのもので、食べ終

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《児童小説》 吾、猫になる 1 ようこそ、キャットストリー島9

夢話ノ玖(9) レッサーパンダとペンギン夫婦

 お元気三ネズミと一緒に、そらと花は食堂の中へと入った。中もガヤガヤとにぎわって活気があって、みんな美味しそうにご飯を食べて嬉しそうで楽しそう。
 一番奥のオープンキッチンからぷんぷんとただよってきた美味しそうな匂いで、我慢できないとそらのお腹の虫がぐーぐー鳴り出して、クークー合唱する様に誰かのお腹の虫も鳴き出した。
 そらは恥ずかしそうに両前足でく

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《児童小説》 吾、猫になる 1 ようこそ、キャットストリー島8

夢話ノ捌 ぱんだ屋食堂

 お元気三ネズミの自己紹介が終わり、そらは前足で拍手をして目をキラキラさせている。その隣の花は、物珍しそうに見ていた割にはおすまししている。

 「おもしろいにゃね!お元気三ネズミ!これから一緒に、よろしくにゃよ!」

 そらはそう言って、片方の前足をお元気三ネズミの方へ出した。お元気三ネズミはぐっと親指を立てた後、一列になってタタタっと軽快に走ると、そらへ飛び乗って、そ

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《児童小説》 吾、猫になる 1 ようこそ、キャットストリー島6

夢話ノ陸 お元気三ネズミで頭スッキリ?

 「で?ネコが、ネコ飼ってたにゃんか?」

 そらの決めセリフなど全く興味なく、オットは大きななあくびをする。そらはフゥーーっと、怒ったように毛を立たせている。

 「ネコがネコ飼えるわけにゃいにゃ!!吾は、人間で、大切な人と暮らしてて、花を飼ってたんにゃ!!!」

 「ん?大切な人、人間のご主人と暮らしてた、飼いネコだったにゃか?」

 「ちがーーう!!

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《児童小説》 吾、猫になる 1 ようこそ、キャットストリー島5

夢話ノ伍 吾?は吾

 「そうにゃんねぇ〜、そら、にゃんね...」

 よっこいにゃっとそこにはイスはないのに、オットは宙に座った。そこには見えないソファーチェアでも、あるかのように。カウンターテーブルに片肘つけて頬杖を付くと、くはぁとあくびをする。

 「で、にゃ?他には覚えてにゃいにゃ〜か?」

 そらは問われて、オットの方へ顔を向けた。オットの目は黄金に輝いて、魔法にかかったように目が離せな

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《児童小説》 吾、猫になる 1 ようこそ、キャットストリー島4

夢話ノ肆 吾、猫である?

 オットは、ぼんやりしている黒ネコをジィ〜と見つけてどんどん近づき、鼻先が触れるか触れないかギリギリまで迫る。

 「大丈夫だかにぁ〜?目ぇ〜開いて、寝ちゃったんかにゃ?お〜い?」

 オットが呼びかけて、自分の両頬の横で両手を左右に振っている。やっと、気づいた黒ネコは、あまりにも近すぎてびっくりして目を大きく見開いた。

 「にゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 黒ネ

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《児童小説》 吾、猫になる 1 ようこそ、キャットストリー島3

夢話ノ参 獅子舞舞の魔法の館

 笛の音が響いて、続いて、太鼓の音がする。

 どこだ、どこだと、ソワソワ、キョロキョロ、黒ネコ。
 竜の空の遊戯のように、獅子舞が、ゆったり、大きく舞っている。

 ピーーーと通る音色、ドンと重く響く音、優雅な獅子舞の舞につられて、トコトコトコと、黒ネコは、尻尾をブンブン振って引き寄せられた。

 獅子舞に、興奮気味に、一緒に舞って、右に左に。

 ドンと、太鼓が

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《児童小説》 吾、猫になる 1 ようこそ、キャットストリー島2

夢話ノ弐 双竜の鏡トンネル

 朱い月夜の晩は、不思議なことが起こる。

 月明かり、薄ら雲に隠れて、二頭の竜が、夜空をゆうゆうと、泳いでる。

 一頭の竜が、くるりと輪を描いて、お月様。
 もう一頭の竜も真似して、くるりと輪を描いて、お月様。

 二頭の竜は、仲良しこよし。

 一頭がくるりと回れば、もう一頭もくるりと回る。

 二頭の竜は、仲良しこよし。

 一頭がゆうゆうと空を泳げば、もう一

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《児童小説》 吾、猫になる 1 ようこそ、キャットストリー島1

《児童小説》 吾、猫になる 1 ようこそ、キャットストリー島1

夢話ノ壱 黒猫見参!

 暗い暗い森の中、黒猫一匹、迷い込んだ。

 「にあぁ〜!!どこぉー、こーこー、ひぃーぃ!!」

 道の両脇の大杉がぐーんと、アーチみたいに、ずずーんと上に伸びて、黒猫には薄気味悪くて、びくびく。
 少し行った先、ナラの木、チラホラ、秋から冬のちょうど真ん中、落ち葉が、獣道、いっぱい落ちて、黄色い葉っぱの絨毯が、真っ直ぐ伸びて、そこだけ、きらきら光ってる。

 黒猫は、落ち

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