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書籍紹介『これが見納め』

こんにちは、天音です。

今日は久しぶりに書籍紹介。

みすず書房より
ダグラス・アダムス/マーク・カーワディン著
『これが見納め』。

絶版のようなのでみすず書房のホームページを貼りますね。

表紙はシルバーバックのマウンテンゴリラ。
わたしは「シルバーバック」という単語をこの本で初めて知りました。意味は直訳の通り銀色の背中です。
オスのゴリラは大人になると背中の毛が白髪になるんですって。

この本は、イギリスの作家であるダグラスと動物学者のマークが、絶滅危惧種を見るために世界中を訪れた旅を記したネイチャー・ルポ。
マダガスカルからインドネシア、中国、アフリカを飛び回ります。

とってもシニカルに旅は進みます。
そしてコミカル。
暗澹たる未来を生き生きとみせる。動物の現状、保護のために尽力する人々、保護団体と行政の認識齟齬と腐敗、種の保存に興味を持たない普通の人たち。
そんな地球の状況が、嫌味のない嫌味でスパンと描かれています。

あまりに嗜虐が満載で、笑っていいのか顔を顰めるべきなのか迷ってしまう場面もあるほど。

描かれている動物は、生々しくも力強く、人のせいで少なくなっているけれどそれぞれの生を全うしています。

動物園で見てわかった気になっていると、野生の状態で見たときにはあまりの違いに驚かされる。巨大なけものが無限と見える空間を駆け抜けていく。それはまさしく、自分の世界を支配する王者の姿だ。

本書131ページ

これはシロサイをみにいく章の引用です。
のしのし歩いているシロサイの姿が目に浮かぶようですね。

絶滅の危機に瀕している動物は、近い未来には人が介入しないと必ず消滅してしまうでしょう。

そんな現状を痛烈な悲劇として描き、無責任にも見過ごす人間を滑稽な喜劇として描く。

消えていく種を保存する意味はあるのか。
それに対する答えはたくさんあると思います。
生態系とか、多様性とか、真面目なのが。
しかしきっと、その意味は本書におけるマークの言葉が燦然と示しているでしょう。

――かれらがいなくなったら、世界はそれだけ貧しく、暗く、寂しい場所になってしまう……

本書316ページ

深刻なテーマのネイチャー・ルポにもかかわらず、本当に読んでいて面白かったです。
小気味いい会話、ダグラスの鋭い観察眼、読者を惹きつける表現。
カカポという大型のインコを見つけたところなんか、特に思い入れのないわたしですらカカポをめちゃくちゃ愛おしいと思ってしまいました。

少し古いのですが、ぜひともいろんな人に読んでほしい本です。

わたしは図書館で借りました。
でもあまりに手元に置いておきたくなってしまったのでブックオフオンラインで取り寄せちゃいました……。絶版で、どこにもなくて……。
一冊すでに買いましたが、もし復刊したら必ず新しく買うのでその可能性に期待したいと思います。絶版も読書好きにとっては世界を暗くするものです……。

興味をもった方は、お近くの図書館で探してみてくださいね🦍


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