書籍紹介『魚にも自分がわかる』
こんにちは、天音です。
今回紹介する書籍は幸田正典『魚にも自分がわかる』(ちくま新書)。
タイトル通り「魚の認知」に関する新書です。
今まで反射・本能でしか行動できないアホな生物だと思われていた魚類。
そんな魚が、なんと鏡に映った自分が自分だとわかると言うのです。
類人猿(人類)、その他の哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、そして最後に魚類と脳の構造は異なっていて、これまで知性の獲得はヒトを頂点とした序列となっていると考えられていました。
この考えでは後にあげたものほど原始的でおバカなんです。
しかしそんな従来の考えがこの本を読むとひっくり返ります。
人と魚の脳は大きさこそ異なりますが、回路は似ているらしいのです。
進化の過程で複雑になっていくのではなく、肺を持つ魚が陸に上がった時すでに出来上がっていて、哺乳類も鳥類も魚類もそれを継承していると。
さらに幸田先生の実験では、ワケベラという魚も鏡に映った魚を自分だと理解し、他の魚を顔で見分けているという結果が出ました。
魚社会も顔認証なのです。
この本を読んで、本当に粘り強く根気のいる実験を続けてくださったなと、どこ目線かわからない感謝を抱きました。
魚は手も足もないし、鳴き声もあげません。
そんな相手を対象に有意な結果を出すのは想像も及ばないような試行錯誤があったはずです。
そんな大変な結果をこんなに簡単に読んでいいのかとすら思いました。
ありがたい時代です。
本書の中では度々「ガリレオ」が出てきます。
地動説を唱えた際に協会から異端とされ、裁判まで開かれたガリレオがつぶやいた「それでも地球は動いている」。
人間だけが賢い。
魚にはそんな知性はない。
機械のように本能という法則に従って生きているだけ。
それが主流だった学者の間では、幸田先生の説は俄には受け入れられるものではなく、学会ではもちろん強い批判も出てきます。
そんな反論を一つずつ検証して自説を世間へ発表し、相手の考えをひっくり返していく様にはもはや爽快感すら覚えました。
七章で今後の課題など展望を述べています。
動物認知の更なる研究がとても楽しみです。
どんな新発見があるんだろう。
この記事を読んで、「ええ、本当に?魚にそんな知能あるわけないやろ」と懐疑的な考えを持った人間中心主義の方は、ぜひ『魚にも自分がわかる』を読んでみてください。
ひっくり返ること間違いなしです。
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