甘辛いタレ

はじめまして甘辛いタレです! 文章の創作活動をしたのはこのnoteが初めてです。 毎…

甘辛いタレ

はじめまして甘辛いタレです! 文章の創作活動をしたのはこのnoteが初めてです。 毎週ショートショートの企画に参加しております。 大体、お題を見てから投稿するまでに1時間〜2時間くらい掛かります。 今後はオリジナルの物語りを書いてみたいです。

最近の記事

毎週ショートショート 音声燻製

テストの休み時間、隣席の中野君が暇つぶしに話しかけて来た。 「男はな、中学になったら国から手紙が来るんだよ。届いたら半年以内に声変わり施設に行って声を燻してもらうの」 「なにそれ!声変わりって人工的に行われてるの?」 中野君は風邪気味なのか少し枯れた声で週末に変声しに行く事、何で燻して貰おうか考えててテストに集中しきれない事をヘラヘラ話した。 私はメープルで燻製すれば少しは優しい言葉遣いになるとわざと真顔で答えた。 その後私も集中が逸れて、テスト中に睨んだ中野君とバッ

    • 棒アイドル(519文字)

      終電近い時間帯は中々混んでいる。 いつもドア横の手摺りにもたれて夜景をなんとなく眺める。 ドアが開閉した時、ふと自分の向い側のドア上液晶広告が目に入った。 棒アイドルの産卵シーズン到来! サンマにサイズも色味も似た魚が液晶に映る。 ヒレがチュールスカートのようで、水中で靡いているCMを見て綺麗だと思った。 CMの水族館へ来て驚いたのは、自分が水族館にもうずっと来ていなかった事ではなくて、生臭い所かアロマの香りとリラクゼーション音楽が居心地良い点だった。 特設コーナーに

      • 二重人格ごっこ(436字)

        ファーストフードのバーガーショップに面接に行った。 「では、簡単に履歴書の説明お願いできるかな。…と、言っても安田くんのクラスメイトなんですよね?採用しようと思ってますので、肩の力を抜いて話してみてくださいね」 子綺麗なユニフォームを正しく身につけ、笑顔ではあるが眼鏡の奥の光は失われている副店長を名乗った神経質そうな男性は、僕にバックヤードであることを忘れさせてそのままバーガーセットでも頼みたくなる程、強烈な明るさで面接を始めた。 一月が過ぎ研修バッジが取れた頃、副

        • 違法の健康(410字)

          「合法的に普通に太った」 と山田が言う。 その“普通”と言う単語は、形容詞なのか副詞なのか強調で使ったのか、と俺がツッコむ。(少し長ったらしいかな?) それを無視して 「感染予防で退会したスポーツジムと、駅から徒歩15分の通勤が無くなってテレワークになったのが蓄積されて来ている」と山田は続ける。 「それに比べてお前はこの3年で外見変わってないな、最近六本木に出回り始めてるって噂の違法の健康サプリでも飲んでるのか?」 「広島に住んでる俺らにそんな噂、入って来ねぇよ!広島なんて所

        毎週ショートショート 音声燻製

          株式会社の音

          残業で夜遅く帰宅する。 玄関を閉め靴を脱ぎ鞄をその辺に落として、俺はシャワーへと向かう。 浴室を出て部屋着になり、ソファに体を沈めて当てもなくチャンネルを回す。 –株式会社の音 探訪– なんとまあ深夜帯らしい尖った企画だなあと、思わず声に出して突っ込んでしまう。 “株式会社の音ソムリエ”と名乗るアーティストらしき細身の中年男性が、白く輝くジャケットとギラギラのバックルベルト、フレアズボンという胡散臭さ満載で目的地まで何かについて語りながら進んでいく。 「今回探訪する〜

          株式会社の音

          不妊治療に踏み出す!

          はじめまして甘辛いタレです! 短くまとめた私の平凡な人生をチラ見して行ってください。 私の母がそうだったように、私も生理不順でした。 そして、母も母(祖母)がそうだったように不順だと言っていました。 呑気な私はコレは家系なんだな、私も大人になって子供を産めば体質が変わるかと思っただけで何も考えずポケ〜っと過ごした小・中・高校時代。 確か20歳のお盆の時期に生理が半年来てなくて、近くの病院がお盆休みだからって理由でお茶の水の医科歯科大までチャリ漕いで行って診てもらったら、多

          不妊治療に踏み出す!

          タイムスリップコップ

          私はオールドファッションを好み、古に思いを馳せて、過去に浪漫を感じるタチである。 つい先日下鴨古本市にて、一目惚れした本があった。 店主の脹脛に頬擦りして、気色悪がられながらも何とかまけてもらって入手した【世界の遺物集】 その初版は80年以上前の物であるが、非常に状態が良く緩む表情筋を無視して早速中身を確認することにした……が、これがまた、なんとも不思議な内容だった。 真っ赤な背景に浮かぶ黄金色の文字列たち。 それと色付きの美しいイラスト。パラパラとページを進めていると

          タイムスリップコップ

          初めての鬼(少し怖い話)

          初めての鬼。 さよならの猫。 明け方のパスタ。 お肉のキモチ……。 段々と食欲に負けていく私の脳みそ。 近所の隅田川を散歩してたら小鬼を拾ったの。 5〜6センチ程で可愛い。 赤鬼のエサって何だと思う? 動物全般なんだって。フフッ。 最初は小蝿や蝉、秋頃には鼠も食べ始めていたかな。 冬の間は私の作ってあげた毛布や毛糸を敷き詰めた手作りベッドで冬眠してた。 春になると鬼は良く食べ、15センチ程に成長した。 近所では、ペット探してます の張り紙を目にする機会が増えてい

          初めての鬼(少し怖い話)

          (451字)ふしぎドライバー 

          ランドセルを背負った男の子が泣きかながら家に帰っている。 文房具屋の前で和服を着た小綺麗な年配の女店主に手招きされ、文房具屋に入って行く。 嫌味なクラスメイトに今日もいびられて泣いて帰って来た。要約するとこんな具合だ。 出されたジュースを飲み干し、落ち着いてきたのか泣き止んでいた。 その子は勉強が苦手な為、文房具屋には滅多に来ない。 勉強道具以外の商品を見る目は、まるで博物館の恐竜の化石を見るが如く楽しそうだ。 おばあさんは、日用品の棚にあった掌サイズのプラスドライ

          (451字)ふしぎドライバー 

          (422字)チャリンチャリン太郎

          家路へ向かう人、目的地に向かう人、この時間の駅は吸い込む量と吐き出す人の量が同じだけある。 みな向かうべき場所に足を進めている。 広島駅の改札を出ると、側に海に続く川が流れている。 空の色が青とピンクと雲の混ざり具合で濃い紫に見える部分や淡い紫に見える部分があり、まさに息を飲むほど美しく影になった低いビル郡と空と、空色が反射されている川とが一枚の絵画として充分に成立している。 17時56分。 干潮になると、漸く小石が浸る程の水位を保った川を自転車立ち乗りでハアハアと鼻息を荒

          (422字)チャリンチャリン太郎

          (417字)ビール傘 毎週ショートショートnote

          家電屋の入り口で見かけたカプセルトイに懐かしい1台があった。 100円玉3枚を入れガチャガチャと回すと出てきたのは、僕が小学校の頃にCMや日曜夕方のアニメで大流行した【日用品ヨウカイ】シリーズの紅一点、左足1本で立つ真っ赤なハイヒールと傘の様な赤いワンピース姿にビールを持つ酔いどれお姉さんキャラのビール傘娘のキーホルダーだった。 カプセル内に同封されている小さな説明書に目を通し1輪車の輪入道や涙鉛筆といったキャラ6種だったんだ、と思いながら背負ってたリュックの目立たない端の

          (417字)ビール傘 毎週ショートショートnote

          (555字) #たいらとショートショート

          「先にお飲み物お伺いしましょうか?」と言う機械声に、ほんの5年前まででは考えられないやり取りだよなぁ…と、タブレットの画面をスライドさせて550円均一のドリンクのページを眺めながら思った。 「じゃあ今日は、ヴーヴクリコのグラスを注文っと。」 意味は無い。ペリエでもりんごジュースでもビールでも同じ550円だ。 自分は案外このサービスが気に入っている。 タブレット画面にバーカウンターの背景が映し出される。 そしてシャンパンボトルとシャンパングラスが現れて、ボトルからポンと小気

          (555字) #たいらとショートショート

          (419字)ふりかえるとよみがえる #毎週ショートショートnote

          今年度の土曜日曜日が国民の休日にかぶる祝日を全て2023年度(つまり来年)に振替る。 今後の祝日移動については政策を講じている。 政府のTwitterアカウントがそう発表して1時間も経たない内にTwitterでは祝日甦り祭が始まろうとしていた。 祝日は年間何日か・祝日の名前・何政策?なんて関連ワードが軒並みトレンド入りし特に拡散された振替休日甦りの略語フリヨミと言うワードが神輿となってTwitterの各界隈を練り歩く振甦巡行なるものが行われ …………かけた。 そう。かけ

          (419字)ふりかえるとよみがえる #毎週ショートショートnote

          (424字)サラダバス #毎週ショートショートnote

          父の仏壇の1番下の棚から出てきたトミカのバス。 とっくの昔にどこかに落として無くしたと思ってた。 母は、1人で私と弟を育ててくれました。 私は良く食べ良く走り回り、人見知りをしないので母は私のことを怪獣のお姫さまと呼んでいました。 弟はぬいぐるみや絵本でずっと遊んでいられる性格でした。それに、とっても少食でした。 今でも覚えているのですがある夏の間、小さなバスはサラダのトッピングとして器の中で存在感をパワフルに放っていました。これは母なりの努力だそうで弟が少しでも野菜を食

          (424字)サラダバス #毎週ショートショートnote

          (482字)カミングアウトコンビニ #毎週ショートショート

          「部活帰りにカムコンして帰ろうぜ」とリョータが言った。 「あぁ、」 と、四谷 「おっ!待ってましたッ」と相川が続けた。 梅雨が7月1週目にして明けたのだ。 太陽の真白い光が体育館の下窓からカッと差し込み格子柄の陰をコートラインまで伸ばしている。 午前中で既に気温31℃の締め切ったコート内は部員の汗と熱気で湿度を増しており、メッシュのバスパンから汗が垂れている。 カムコンとはバスケの練習後にリョータが思い付いたゲームで、近況報告した後アイス食ってスッキリするという遊びだ。

          (482字)カミングアウトコンビニ #毎週ショートショート