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(451字)ふしぎドライバー 




ランドセルを背負った男の子が泣きかながら家に帰っている。

文房具屋の前で和服を着た小綺麗な年配の女店主に手招きされ、文房具屋に入って行く。


嫌味なクラスメイトに今日もいびられて泣いて帰って来た。要約するとこんな具合だ。

出されたジュースを飲み干し、落ち着いてきたのか泣き止んでいた。

その子は勉強が苦手な為、文房具屋には滅多に来ない。
勉強道具以外の商品を見る目は、まるで博物館の恐竜の化石を見るが如く楽しそうだ。


おばあさんは、日用品の棚にあった掌サイズのプラスドライバーを買うように促し、短パンのポケットに入っていた24円ポッキリでその子に譲った。


そして出口で蝋燭片手に不思議なチカラを込めてあげよう、と言った。

「悲しい時、ココロのネジ山をプラスに回すんだよ。体育の時、筋肉のネジ山をプラスに回すんだよ。それから、授業の前は頭のネジ山にをプラスに回してやる気を出すんだよ。」

もう一言付け加えた

「私とミセの事は忘れてしまいなさい。フゥーー。」

白い煙がゆらりと立ち、出口で夕方の空気と混ざり記憶と共に消えた。


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