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Photo by
tokiminami
棒アイドル(519文字)
終電近い時間帯は中々混んでいる。
いつもドア横の手摺りにもたれて夜景をなんとなく眺める。
ドアが開閉した時、ふと自分の向い側のドア上液晶広告が目に入った。
棒アイドルの産卵シーズン到来!
サンマにサイズも色味も似た魚が液晶に映る。
ヒレがチュールスカートのようで、水中で靡いているCMを見て綺麗だと思った。
CMの水族館へ来て驚いたのは、自分が水族館にもうずっと来ていなかった事ではなくて、生臭い所かアロマの香りとリラクゼーション音楽が居心地良い点だった。
特設コーナーに棒アイドルの卵の水槽と、赤ちゃんの水槽が並んでいる。
横の説明書きには学名や生態が書かれている。
棒アイドルの由来は諸説あるそうだ。
棒状の直線的なフォルムとヒレがアイドルの様だからと言う説、
漁師が船上で作った干物がビンゴの真ん中の様に男達の心を撃ち抜く旨い魚だったと言う説。
ビンゴの真ん中……
内面も外面も良く心を撃ち抜く魚。
こんな魚を嫉ましく思う自分が居る。
生態を鑑賞されているのは何の旨みも無い自分の方なのではないかと思えて来た。
帰りの電車内から眺めるビル群の夜景が今日は、無数の視線の様に感じる。
車内の空調や照明を整えられ、自分は、ゆらゆら揺れる水槽の中の魚と同じではないだろうか
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