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株式会社の音

残業で夜遅く帰宅する。
玄関を閉め靴を脱ぎ鞄をその辺に落として、俺はシャワーへと向かう。

浴室を出て部屋着になり、ソファに体を沈めて当てもなくチャンネルを回す。

–株式会社の音 探訪–
なんとまあ深夜帯らしい尖った企画だなあと、思わず声に出して突っ込んでしまう。

“株式会社の音ソムリエ”と名乗るアーティストらしき細身の中年男性が、白く輝くジャケットとギラギラのバックルベルト、フレアズボンという胡散臭さ満載で目的地まで何かについて語りながら進んでいく。

「今回探訪する〜のは、深夜の丸の内エリアでアール!」

キャラ詰め込みすぎだろ。

そいつはある大きなビルに入り、大手設計事務所のあるフロアに着いた。
0時を過ぎているというのに、何人もの社員がCADでカチカチと図面を書いている。


「まさに、マウスが奏でるワルツ・エチュード!!素晴らしい。」
目をつぶって音に浸るガリガリなおっさん。

深夜には明る過ぎる蛍光灯とマウスの機械音が5分程流れた。

下らんな……寝るか


#毎週ショートショートnote

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