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#5 大晦日に京都の観光メディアALKOTTOの2022年の人気記事をまとめてみた

どうも、編集長の松島です。
なんだかバタバタとしていたら気づけば大晦日。いやー、マイッタマイッタ。じつは11月以降というもの、このnoteでも記事を書いてくれている京都外国語大学グローバル観光学科の学生を中心に進めている英字フリーペーパーの取材で、京都各地の神社やお寺を合計12カ所も取材で飛び回って、記事執筆から取材先による原稿チェック&やりとり、英訳、英語ネイティブチェック、表紙デザインや中面の見せ方の検討などなど、学生たち主体でがんばってくれていて、ぼくもそのサポートで文字どおり目が回りそうな日々だったのだ。

そんなわけで、ほんとうだったらその誌面企画の取材の経過報告やら今後の活動の展望を書きたかったし、あと旅行記などを中心にぼくが個人的にお勧めする旅行や観光、街を書くことに関連する本の紹介なんかも考えていたんだけれども、それも叶わず。
さらに11月と12月はALKOTTOの活動に加えて、ぼく個人の仕事のほうでも取材仕事が数多く入っていて、妙心寺退蔵院の松山大耕さんや聖護院八つ橋の鈴鹿可奈子さん、着物研究家の柾木良子さん、まいまい京都の以倉敬之さん、台湾から帰ったばかりの京都橘高校吹奏楽部、東海大学バスケ部などなど、ふだんぜったいに使わない「てんてこまい」みたいな言葉がぴったりなくらいに、なかなか(というか相当に)たいへんだった。

またそうして多忙にかまけているうちにALKOTTO公式インスタグラムの更新も止まり、さらにはここnoteの更新も滞ってしまった(ぼくが勝手に粛々とnote記事のシェアをしているだけのTwitterアカウントも同様に)。これは来年の課題というか、もうちょっとちゃんと方針や更新頻度など、戦略を定めて同時進行で進めておくべきだったなと反省。でもまあ課題を見つけて反省して次のめざせるということ自体が、なかなかこの歳になるとないことなので、それはそれですごく楽しい。

それにこの活動の良いところは、ぼくが率先して何かを決めて何かを書いて何かを投稿してという性格のものではなく、学生たち自身でぼくは最初のアイデアのタネをちょっと撒いてみたり、逆にメンバーが美しい花を咲かせようとしている土壌にこっそり肥料を与えておくのが主たる仕事。ぼくはフリーランスのコピーライターで、ふだんはひとりで仕事をしているので、こうしてちょっと会社ごっこみたいに若い人のバックアップをしながらみんなで働くのは、ちょっとうれしくもあるのだ。じつはさっそく学生による新しいマガジン企画も進んでいて、年明けすぐには公開できそうなものがあるので、そちらもぜひともお楽しみに!

さて、来年の話が出たところで今回はまあ大晦日らしく、ALKOTTOの公式noteができた今年7月1日以降(つまりは2022年下半期)に多く読まれた人気BEST記事を振り返ってみたい。

5位「誰もが楽しめる観光 きぬかけの路散策でユニバーサルツーリズムを考える【前編】」

2回生で今年サブリーダーを務めてくれた剱物真桜さんの記事。この記事のポイントはユニバーサルツーリズムの観点で京都の有名観光地を歩いてみるという、とても学生らしい現代的で意欲的な取り組みであること。京都の観光地の魅力はなんといっても国宝や文化財指定された歴史的建造物や古くから残る街並みなのだけど、それはつまり障がいを持った人たちへの配慮がむずかしいということ同義でもあったりする。古い木造建築だとそもそもの設計時点で狭く作られてあり、かつ文化財指定されると新たにエレベーターやエスカレータを設置するなどの建て替えや新規設備の設置が法的に難しくなるという面もあるからだ。古い文化をそのまま保存してすることと、障がい者をはじめとした多様な人に見てもらうこと。その両立を観光という視点で考えるには京都はひとつのモデルケースをつくることができるかもしれない。そういう視点で読むと、プロの目から見てもとてもチャレンジングなエントリーだと思う。

ちなみに当時この記事をツイッターでシェアしたところ、とある京都のライターさんから内容にちょっとしたツッコミが入るという事件が起こった。ツッコミの内容は「あそこを歩く人っていないんじゃね?」的なものだった。たしかにきぬかけの路はうちの家のお墓があるお寺に続いている道なので、お墓参りに行く時に車で通る道ではあり、実際のところぼく自身あの道を歩いたことはない。しかし、である。きぬかけの路の公式ページには「金閣寺、龍安寺、仁和寺。世界遺産をめぐる散歩路。」と大きく書かれているし、約2.5kmの行程なので観光の人であれば(とくに秋などは)歩きたい人も多いはず。その旨でぼくがリプを返したところ理解してもらえたみたいだったし、ツイッター上のやりとりのおかげでアクセスが伸びたので、よかった。

4位「宇治田原町で出会ったもうひとつの京都」

この記事は1回生の田中萌々花さんの書いた記事で「もうひとつの京都」というマガジン企画の第一弾でもある。(第二弾がなかなか更新されないのだけれども)。ちなみに1回生ということは春まで高校生だったということなわけだけど、そのわりにずいぶん良くまとまっている(写真もプロっぽさがなくて、でもそれがいいんだよなあ)。彼女は最初にプロフィール記事を書いてもらった時点で「ああ書ける子だな」というのを感じていた。note以外の目に見えにくい活動にも意欲的に取り組んでくれたし、なにより質問をたくさんしてくるので、たぶん取材や記事執筆に向いているんだろう。そもそもインタビューは質問することだしね。

で、じつはぼく自身はこの正寿院に行ったことがない。なので逆にプロの視点でなにかおかしなところがないか?と目を皿にしてチェックする立場としてではなく、ごくニュートラルに読み進めることができたし、読み物として純粋に楽しむことができた。もちろんプロとして見ると気になるところがないわけではない。だけどじつは彼女の書いた原稿の情報だけで自分で書き直してみたのだ(実際にぼくは行ったことがないので、この情報だけでもし自分ならどう書くかという実験材料にうってつけだったからだ)。書き終えて読み比べてみると、圧倒的に萌々花さんの記事のほうが魅力的だったし、少なくともALKOTTOの世界観を体現しているのは彼女の記事のほうだった。

ほかの記事もそうだけど、エントリーが増えてきてマガジン企画も少しずつ立ち上がっていて、なんとなくALKOTTOらしさのようなもの、ブランドのオリジナリティがうっすらと滲み出てきているように個人的には感じている。もう少しエントリーが増えてきたら皆さんにも感じてもらえるのではないかと思う。そしてそれは意外とこれまでなかった種類のメディアとして育っていくのではないかなあと期待しているところでもある。

3位「剱物真桜と京都について」

これは5位の記事「誰もが楽しめる観光 きぬかけの路散策でユニバーサルツーリズムを考える【前編】」を書いてくれた剱物真桜さんのプロフィール記事。ALKOTTOのメンバープロフィール記事のなかでは圧倒的にアクセス数の多いエントリーで、これは本人に確かめたわけではないのだけど、おそらく彼女自身のSNSなどを使って友人にシェアしたりしてくれたのだろうと思う。そういう「書いて終わり」じゃないところも上級生らしいというかサブリーダーらしくてさすがである。彼女は歴史が大好き(自称:歴史オタク)で、こないだ天龍寺の取材に伺った際にも「鎌倉時代の後は何時代か?」と問われて「南北朝」と即答して宗務総長の方に「おっ!よう知ってるな。これみんな室町時代って答えるんやけど」と感心された、というエピソードなんかも持っていたりする強者である。

もともと彼女も文章が上手で、本人も書くのが好きだと話していたこともあり、このエントリーでもとくに教えたわけでも指定したわけでもないのに、「ここ、いま、じぶん」というテーマだしから導入をして、3つのテーマごとに書いていくというプロ顔負けの構成のもとに書かれている。ぼくはかつて広告の制作会社でコピーライターのチーフとして多くの新人ライターを指導してきたけど、彼女より書けない人はたくさんいた。彼女は書く視点を持っているというか、書くということの本質がわかっているというべきかな。こういうのって、なかなか教えても身につくまでに時間がかかるので、書くのが好きと言ってた彼女は、おそらく読むのも好きなんだろうなと思う。書くというアウトプットをコンスタントにすると読みかたが変わってくるからだ。ただ単に書かれた内容を理解することと、「読む」ということは実際には違うのだ。また彼女だけでなくほかのメンバーのプロフィール記事も、それぞれ個性があってすごくおもしろいので、これを機に読んでもらえたらうれしい。


2位「境内のカフェ編② 二条城 茶房前田」

この記事は今年の2月に発行した修学旅行生向け英字観光ガイドブック「KYOTO SCHOOL TRIP GUIDE」の記事を転載して日本語も併記したもので、記事を書いたのはまたしても剱物真桜さん。取材をしてくれたのは真桜さんと4回生でいまは活動を卒業された松波英里さんだった。取材したのは昨年末で朝から雪がチラつくとても寒い日だった。雪が積もると撮影ができなくなるのでハラハラしながら天候を気にしていたのをよく覚えている。

茶房前田は二条城のなかにある茶屋で、経営しているのは京都の老舗の喫茶店で個人的にも仲良くさせていただいている前田珈琲さん。二条城の美しい庭園のひとつ「清流園」を目の前に眺めながら抹茶や上菓子、コーヒーやケーキを楽しめるお店である。街の喫茶店として京都の常連さんに長年愛されてきた前田珈琲さんとしては、ふだんのお客さんとは異なる観光客に向けた茶店ということもあって、自分でお抹茶を点てて飲むことができるメニューなど、「一期一会」な観光体験が楽しめるサービスを提供していたりもする。また、お店の人もふだんから京都の観光情報を仕入れるようにされているという話が印象的だった。

当時はまだ1回生だった真桜ちゃんの原稿を初めて読んだのはこの記事だったけど、まあすでによく書けてる。技術的な部分ではじつはそこそこ手を入れたのだけれど、1時間ほどの取材した内容から限られた字数に合わせて記事として書くべきポイントを抽出して適切な順序に並び替え、導入の文章から記事の本題となる部分、そこから締めの文章へのつながりまで、大きくは最初の原稿がそのまま活かされているといっていい。いま思うと歴史オタクな彼女らしく導入の歴史部分がちょっと長くて割愛した。本来ならばそこは書き手の個性になるところなので、字数制限さえなければ活かすべきなんだよなあ。


1位「#4 京都嵐山芸術祭から始めるポストコロナのアート&ツーリズム」

そして1位は11月にぼくが書いた記事。この記事は「note編集部の注目記事」にもなり、またSmart Newsのピックアップ記事にもなった。それもあってビューの数とスキの数が、全エントリの中でもちょっと別格になっている。やっぱり多くの人に記事を届けるには、こうしたプラットフォームの仕組みを理解して、それに合わせた工夫をすることが大事だなと、いまさらあたりまえのことをいまさらあらためて考えるきっかけにもなった。ハッシュタグとかはもちろんだけどタイトルなんかもね。

この「京都嵐山芸術祭」は、ぼく自身が主催者の人たちとじっくりお話をさせていただき、文章でお手伝いしたこともあって、とても思い入れのあるイベントでもあった。だから多くの人に読まれたことは素直にうれしいし、なにしろ第一回の開催ということもあって、たくさんの人に認知してもらうことが必要だったので、そういう意味でも少しは貢献できたみたいなので、まずはよかったなと思う。
記事にも書いたけど、芸術祭の出演者である池内ヨシカツさんや松尾優さんはENJOY KYOTOでもお世話になった方々だし、塚本隆史さんといったビッグネームも参加されていて、来年以降も継続して開催され、京都の秋恒例の新しい芸術祭となってくれたらなと期待している。

ちなみに記事のなかで言及されているクラウドファンディングは目標額である500万円を超え、無事達成された。あの嵐山の景観が失われるかもしれないという危機感を、多くの人に共有いただけたことも含めて、ほんとうに意義あるイベントになったなあ。ぜひ来年も「京都嵐山芸術祭」のレポートをこの場で書きたいし、来年はこのALKOTTOチームで取材するのもいいかもしれない。


というわけで、今年はこれでおしまい。来年は中国からの観光客の入国も開始され、かなり多くの外国人観光客も京都に戻ってくるだろう。じつはこのALKOTTOにはサポートメンバーとして中国人留学生も参加してくれている。記事の中国語訳をやりたいと意欲も見せてくれているので、もしかしたら日本語、英語だけでなく中国語も含めた多言語化なんて展開もあるかもね。なにせ京都外国語大学のグローバル観光学科の学生が中心になったメディアなのだから、それはまったくの絵空事というわけではない。もしかしたらやってるぼくら自身がいちばんこのメディアの可能性を過小評価しているのかもしれないなあ。
来年はもう少し他のメディアやクリエイターとのコラボや、京都の著名人へのインタビュー、観光を基点とした社会課題への提案なども積極的にやってきたらなと思っている。そもそも「京都というローカルと、海外からの観光客というグローバルを、メディアという場を介してつなげていく」というコンセプトは、ENJOY KYOTO創刊時のコンセプトでもあったのだから。

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