【詩】切り落とした爪のような三日月
祖母の家に泊まりに行った幼い頃
お腹が痛いと祖母に言うと
「おばあちゃんのお布団にお入り」
と言って、重いかいまきをめくり
私を布団の中に入れてくれた
お腹を下にして寝るといいと祖母に言われて
私はその通りにした
重い布団に守られながら
祖母の布団のシーツの匂いをかいでいた
お日さまの匂いがした
少しして重い布団を持ち上げようと寝返りを打ち
仰向けになった時
カーテンの閉まっていない窓の外に
細い三日月が見えた
切り落とした爪のような
細い細い三日月
隣の部屋から聞こえるテレビの笑い声
石油ストーブの匂い
私はいつしか眠りに落ちた
目が覚めたら部屋は真っ暗で
隣に祖父が寝て、
同じ布団に祖母が寝ていた
もうお腹は痛くなかった
カーテンももう閉まっていた
私は眠れなくなって
重い布団の中でまた寝返りを打った
かいまきの袖に手を通してみたら
祖母が起きてしまった
「手をしまって寝んねしなさい」
祖母が私の手を布団の中に入れた
「お月さまはどこに行ったの?」
私が聞くと
「お月さまもお家に帰って寝んねしたよ」
祖母は目を閉じたまま答えた
細い細い三日月も重い布団で寝たのかな
細いから重い布団で折れちゃわないかな
私は心配しながらまた眠りについた
©2023 alice hanasaki
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