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【ショートストーリー】短期決戦型の人生

小学生の頃から走るのが早く,
いつもリレーの選手に選ばれて,
運動会ではスターだった。
でもそれは短距離走に限ってだった。
長距離のマラソンなどは,
いつも真ん中より少し後ろの方を
うろうろしていた。

小学生の頃から卓球が苦手だった。
いつも力一杯ラケットを振り,
軽く小さい球は台の遥か彼方に飛んで行き,
私と組んだ相手の子は,
嫌な顔をして球拾いばかりしていた。

遠いゴールまでの力の配分を考えて
長い計画を立てるとか,
台から外れないように力を調節するとか,
そういうことができない。
いくら努力しても無理なので,
私はそういう力を持ち合わせていないらしい。

いつもありったけの力をぶつけて,
後先考えず突っ走る。
そうして私はいつも
短期決戦型の人生を送ってきた。

こんな私が「続けていく」ということの
難しさを考える。
人間関係も同じだ。
誰かを愛したら例によって全力疾走し,
長く付き合うなんて不可能になる。
いつもいつもその時が100%。
どうしようもない。

そんな私を”飽きっぽい”と友達は言った。
”わがまま”と言われることもある。
しかし私は精一杯なのだ。
全身全霊で恋をして,一生懸命愛して,
そして強すぎる愛は長くは続かない。

自分のやりたいことも同じだ。
その時はそればかりになって,
他の何よりも優先させて,
食事も忘れ,徹夜さえ厭わないのに,
壁にぶつかると,他の方法を考えて
アプローチすることができなくなる。
そしてその夢への道は絶たれる。

こんな私だから「過ぎたるは猶及ばざるが如し」
ということを考える。
私が一生懸命していることは何にも及んでいない。
その愛や夢についての思いが強ければ強いほど,
途中で,そして早く終焉を迎える。

開き直ってその時その時を楽しんで生きるか,
自分を丸ごと否定して,自分自身を変えていくか。
私は今,どちらかを選ばないと,
このままずっとどっちつかずの
中途半端な人生を送り続けることになる。

でも学生時代に既に悟っていた。
「いくら努力しても無理」だってこと。
夢中になり過ぎなければ続けていけることも。

私の人生は流されていくだけ。
完全燃焼したら次に行くだけ。
別にそれでもいいんじゃないか,
って薄々気づき始めている。
短期決戦を挑まないことだけ,
穏やかに続けていければ…。

©2023 alice hanasaki

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