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#現代詩

ボタンを押すだけ

ボタンを押すだけ

水平の世界である
私たちの世界は水平であった
突然の号令で
ある点から静寂の渦に収縮する
一分の内に筒上の混沌へ
灼熱の流動する炎は気休めにしかならない
水平の成果の扉は瞬く間に陽に晒され眠り
神殿の床のようにひんやりとしている
人魚も溺れる混沌は底無しの永遠
繰り返す繰り返す
明日もまた水平の世界が甦る

最果て

最果て

暗転した魂の行き場がないの

夜露と供に空へと還るか

朽ちた身体と土へ還るか

少しだけの痛みなら

すぐにでも歓迎します

少しだけなら

君を抱き締めてもいい

其処に感情はないけれど

義務で生かして同情で手にかける

空へ還るか土へ還るか

そんな妄想に付き合ってもいい

溝の中にね

君の手がある

今朝

今朝

波に触れると円上に揺れる

そんな仕様が瞼に現れ

外には猫の吐息

枕を占領して

君は何の夢を見る

ヒトは滅びました

ヒトは滅びました

不知火の星をゆたかに掠めて鳥の音

汎用性の身体と共に

記憶はブラックボックスへ

待とう 待とう

再び携える日々を

砂漠の支配者よ

或いは機械の生きる世界

ケシの花が落ちる

恋をするといい子になります

恋をするといい子になります

弱き者よ

魚のように散ってしまう

水路を歩いたね

あれは何時だったかな

冬の

冷たさなんて

たぶん冷たかった筈なんだけれど

思い出せない

じんわりと触れたところに痺れが走る

何も話さなくてもいい

君の一挙手一投足に身を任せている

舌も出せないくらい

僕はいい子になります

救いの手は

助けて欲しい

といつも思っていて

普通に過ごしていても

頭の中では助けて助けてとリフレインしている

気味が悪いけれど

そんな僕を誰が助けるだろう

願い下げだ

匂いで春だってわかるね

匂いで春だってわかるね

白い靄の中

桜色がちらちら映る

ぼんやりした温度

春の匂いってあるよね

あれが今でも大嫌い

粗野な子供たちの中にどうして居ないといけないの

彼らは別の生き物

何を叫んでいるのか分からない

彼らが飛び回り

金切り声で話し掛けてくるのが

全く理解ができなかった

ただただ煩いな

私とは違う

助けて欲しい

ここから連れ出してくれるなら

どんな人でも王子さま

実際には誰も来な

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うとうと

頬の横で寝ている

片目を瞑ると見える

質量が 柔らかい

そうこうしていたら電話できなかった

最適解

最適解

ボードレールと秋の空

錆びた観覧車の温度

エピルトクラウのように最果てに生きる

生きているのかはっきりしない

夕べはね猫アレルギーが出たんで目を休めていた

君に手紙が書けなかったんだ

サポサランを持ってきて欲しい

青色のルフラン

要はね忙しくしないで欲しいんだ

手でも握ってくれればそれでいい

それでいい

君はつまらないだろうけど

大体そんなことを望んでいる

斜陽

斜陽

モノクロームの中を散歩

黒く焦げた木々と空虚

かつて栄えていた建物が

悉く空き家になり売られていく

そんな光景を目にしたくはないのに

子供の頃の記憶の方がカラーで残っている

一番全てがいい時だった

あの頃輝かしかったもの

何でも廃れてしまう

何を成しても棄てられる

立派な旅館のおかみさんは売られてしまったこの旅館を見ないまま死ねて良かったと思う

今日は診察の帰り気付いたんだ

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水晶体の中の雪

死なないで

どうして

痣が薄くなったね

猫に噛まれたからね

何度もここを噛むんだ

噛まないとやってられないって風に

治らない傷なんてあるの?

そう冷やかに言った

明日は雪が積もってきみは初めての光景に戸惑うかもしれない

足跡は付けられないけれど

君の透き通った碧色の眼に映してあげたい

授業中の過ごし方

授業中の過ごし方

タナトスの手首を晒したって見ない

それはそれは完璧な

カラーコントラスト強めの晴天と白い校舎

いつか どうか あの屋上から誰か

飛んで落ちる瞬間を願って

窓の外ばかりを見ていた

手にはカッターナイフの刃先を隠して

なんてね 過剰な酷い演出

そう認識もしていた

タナトスの手首を晒したって見ない

珍しくもない 面白味もない

飽きられてるんだよ

それでも懲りずに窓の外を見ている

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火星の海

火星の海

ゆめゆめ夢にも思わない

シーラカンスの見る夢は

遥か火星の砂のいろ

ダイモスの行方とフォボスの角度

なぜ火星を知っているの?

これから行く未来

いいえ

そこから来たからね