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本や映画やテレビや音楽。世の中の触れたコンテンツについて記すノートです。
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世界は、思った以上に「欠けている」ことに寛容だ

世界は、思った以上に「欠けている」ことに寛容だ

大学生のころ、個人経営のこじんまりとしたカフェでアルバイトをしていた。京都の裏路地にある、ゆみこさんという美人なオーナーが経営している、とてもいいカフェだった。

ゆみこさんは私の20歳の誕生日に、『ぼくを探しに』という絵本をプレゼントしてくれた。

パックマンのような可愛い球体の「ぼく」は、自分には何かが欠けていて、だから毎日が楽しくないと思っている。そこで完璧な球体を目指そうと、自分の欠けたカ

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優しい文章を書く人

優しい文章を書く人

文章は、書くよりも読む方が好きだ。
そして、いろんな人の、いろんな文章に感動を覚える。

ARuFaさんや菊池良さんのように、お腹がよじれるくらいおもしろい文章。鳥井弘文さんや日野瑛太郎さんのように、分かりやすくいつも気づきや視点を与えてくれる文章。穂村弘さんや岸本佐知子さんのように、爆笑ではないけれど思わずクスッと笑ってしまうようなユニークな文章。角田光代さんや山崎ナオコーラさんのように、共感や

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好奇心は愛よりも強い

好奇心は愛よりも強い

1ヶ月ほど前に、『オリガ・モリソヴナの反語法』という米原万里さんの有名な小説を読んだ。

ソ連で幼少期を過ごした日本人の主人公シーマチカが、そのときに出会ったあるロシア人女性の謎を、大人になってからひも解いていく……といった内容で、一見謎解き小説のようでありながらも、ペレストロイカの時代に生きたロシア(ソ連)の女性たちの運命を鮮明に描いている社会派な小説だ。

残酷な運命を描いているのにどこか喜劇

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「サヨナラ」に対して人が紡ぐことばについて。

「サヨナラ」に対して人が紡ぐことばについて。

お昼休みに中島らもさんのエッセイ『愛をひっかけるための釘』を読んでいたら、こんな文章が出てきた。

この世のものならぬ至福の中に自分があればあるほど、いつかそのめまいに似た幸福に終わりがくるであろう予感も確固たるものになってくる。

(中略)時代が変わり、人が変わるたびにさまざまな表現で言いあらわされるけれど、本質はすべて同じことである。「生者必滅(しょうじゃひつめつ)、会者定離(えしゃじょう

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強烈に残るワンシーンがあるということ。

強烈に残るワンシーンがあるということ。

小説や映画が好きなのだけれど、物覚えが悪くて、すぐに話の内容を忘れてしまう。どんなに感動した作品でも「どんな話なの?」と聞かれると、あれ……どんな話だったっけ?  とことばに詰まってしまうことがよくある。

そんな時に思うのは、「強烈なワンシーン」がある作品は強いなあということ。

たとえば私は『クレイマー、クレイマー』という映画がだいすきなのだけど、話の概要は「家事や育児を妻に任せっきりだった主

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「知りたい」という根源的なチカラ

「知りたい」という根源的なチカラ

「どうしても読んで欲しい810円(税込)がここにある──。」

先週、日曜日の夜。友達との待ちあわせの時間までに少し余裕があったときに立ち寄った本屋さんで、偶然「文庫X」が目にとまった。

昨年、岩手県の盛岡市の書店で、タイトルを隠して売られたことで話題になった「文庫X」。いつのまにか、その中身の正体を公表していた、らしい。

「文庫X」の存在をはじめて知ったとき、正直、そこまで惹かれはしなかった

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「未来」という名の過去との対峙

「未来」という名の過去との対峙

「マチネの終わりに」という、平野啓一郎さんの小説を読んだ。美しくて、聡明で、切なくて、儚い──そんな文章だなとおもった。先を知りたいのに、知るのがこわい。1ページ1ページ、大切に読み進めていきたい。久しぶりに、こんなに感情移入できる作品に出会った。

世界的に有名なギタリストの蒔野と、第一線で活躍するジャーナリストの洋子が、蒔野のコンサートを通じて出会うところから物語はスタートする。

「マチネ」

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「動機がいちばん大事」と言いきれる人になりたい

「動機がいちばん大事」と言いきれる人になりたい

「これだけあいつがやりたいと言うなら、ひょっとして、ひょっとするのかも」というか、みんなが反対したけどものすごくやりたい人が一人いた案件のほうが、成功する確率があるんじゃないかな。

"すごくやりたい一人"がいる企画が化ける──。これは、川村元気さんの書籍『仕事。』(集英社)にある、映画監督の山田洋次さんと川村元気さんの対談の中の一節だ。

そして、私が好きなほぼ日さんでも、「やりたい!」という「

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男友だちを作ろう。

男友だちを作ろう。

山崎ナオコーラさんの、「男友だちを作ろう」を読んだ。

男の人と仲良くなりたいと思ったときに、恋愛相手になるしかないなんて、嫌だ。(中略)男の人と友情を築きたいというのは、決して恋愛からの逃避ではないと思う。せっかくこの大きな世界の、長い時間の中で、人と出会えるのに、恋愛のことしか考えないなんて、つまらなさ過ぎる。

もう、ほんとに共感だった。よく「男女に友情はあり得ない」みたいなことを言う人

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年末年始に読んでおきたい本。

年末年始に読んでおきたい本。

年末だ。年末といったら、食っちゃ寝と読書だ。

本を読んでいると活字が心地よくてうとうとして、気づいたら朝になっていて、ああまたやっちゃったなあ、と思うのが幸せだったりする。

コルクのメンバーがおすすめする「年末年始にみたいもの」全43作品 | コルクのブログ

コルクさんが年末年始にみたいもの特集をやっていたので、私も年末年始に読んでおきたい本(一部はすでに読み終わった本)を備忘録してみること

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【東京図書館めぐり】北区立中央図書館

【東京図書館めぐり】北区立中央図書館

東京の図書館をめぐってみようとふと思い立ち、記念すべき第一回として、王子の近くにある『北区立中央図書館』へ行ってみました。

図書館はJR埼京線「十条」駅から徒歩15分ぐらいのところにあり、赤レンガ倉庫を改装して作られた建物はレトロで可愛かったです。近くには子供が遊べるような芝生があり、そんなに人も多くなく、休日にゆっくりと本を読みたい人にはもってこいな場所でした。

図書館に来ると、読みきれない

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