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「知りたい」という根源的なチカラ

「どうしても読んで欲しい810円(税込)がここにある──。」

先週、日曜日の夜。友達との待ちあわせの時間までに少し余裕があったときに立ち寄った本屋さんで、偶然「文庫X」が目にとまった。

昨年、岩手県の盛岡市の書店で、タイトルを隠して売られたことで話題になった「文庫X」。いつのまにか、その中身の正体を公表していた、らしい。

「文庫X」の存在をはじめて知ったとき、正直、そこまで惹かれはしなかった。タイトルを隠して書店員さんのオススメ文をつけて売る方法は、神楽坂にある「かもめブックス」でもされているやり方だったし、既視感があり、「へえ〜」という感じだった。

でも、あらためて、しっかりと、そのオススメ文を読んでみて、「これは読まなきゃいけないかもしれない」という気持ちになった。

申し訳ありません。僕はこの本をどう勧めたらいいか分かりませんでした。どうやったら「面白い」「魅力的だ」と思ってもらえるのか、思いつきませんでした。

だからこうして、タイトルを隠して売ることに決めました。この本を読んで心が動かされない人はいない、と固く信じています。

(中略)

この著者の生き様に、あなたは度肝を抜かれそして感動させられることでしょう。こんなことができる人間がいるのかと、心が熱くなることでしょう。僕らの生きるこの社会の不条理さに、あなたは憤るでしょう。知らないでは済まされない現実が、この作品では描かれます。あなたの常識は激しく揺さぶられることでしょう。

3000冊以上の本を読んだ書店員さんが「どう勧めていいか分からない」本って、どんな本なんだろう。そこに記されている、「こんなことができる人間がいるのか」と思ってしまうような、常識はずれのことをしている人って、どんな人なんだろう。そして、「僕らの生きるこの社会の不条理さ」とは、なんなんだろう。

「知りたい」という根源的なチカラは、人を動かすとてもおおきな原動力だ。

「文庫X」のオススメ文は、そのチカラを動かすための魅力が、十分すぎるほどにあった。そして、「文庫X」という本の内容は、そのオススメ文に見合うだけの魅力──いや、衝撃が、あった。だからこそ、これほどまでに爆発的にヒットになったのではないかなあ、とおもっている。


「文庫X」の正体は、すでに公表されているとおり、清水潔さんの「殺人犯はそこにいる」。現在もなお真犯人が捕まっていない「北関東連続幼女誘拐殺人事件」の真相について記されている。

読んだ感想は、もう、本当にオススメ文の通りだった。

こんなことができる人が日本にいるのか、と心が熱くなったこと。「面白いよ」とはまた違う、「良かったよ」でも「感動したよ」でもない、人にどう勧めていいのか分からないような気持ちになったこと。そして、ある種のふつふつとした「憤り」を感じたこと──。

「これがミステリー小説だったら、どれだけ良かったことか」。

読みながら、何度もそう思った。けど、この本に書いてあることはすべて、紛れもない「事実」だった。そのことで、心に込み上げてくるものがあったし、考えさせられることが、たくさんあった。

正義とはなにか、情報とはなにか、警察とはなにか、国民とはなにか、信じるとはどういうことか。

500Pを超える本だが、本当に一瞬で読めてしまう。そして、本編だけでなく、文庫版「あとがき」まで、最後の最後まで、ぜひ読んでいただきたいと思った。

なんか、日曜日の朝なのに、熱くなってしまいました。でも、この本についてはちゃんと記しておきたかったので。全国民がこの本を読まないと、「日本は動かない」。そう、おもいます。


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ありがとうございます。ちょっと疲れた日にちょっといいビールを買おうと思います。